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みんなエバンジェリスト

あんたの言うことなら私は何でも聞くよ
あんたはいつも一生懸命で、まちのことが大好きで
いつも私たちの話をよく聞いてくれるからね
#ジブリで学ぶ自治体財政

自治体職員の皆さんにお尋ねです。
例えば自分が勤めている自治体の取り組むある施策について、親しい友人からその評価について尋ねられた場合、あなたはどうしますか。
言葉を発しようとしてもその施策そのものについて知らなければどうしようもありませんが、知っていたとしてもそのことを自分の言葉で評価することを躊躇する方、結構おられるのではないでしょうか。
個人同士の閉ざされた関係であれば、秘密を守ることを前提に話すこともあるでしょうが、不特定多数の人が混ざったセミオープンな場だとどうでしょうか。
「管理職でもないのに意見を述べてそれが自治体の見解ととられてはまずい」
「所管外なのに意見を述べれば所管課に迷惑がかかる」
「個人で意見を述べていると組織の中で浮いてしまう」
「首長や議員、人事課などから変なやつだと目をつけられる」
「一般市民から個人的に意見されたり誹謗中傷されたりするのは御免だ」
などなど、自分が意見を言うことのリスクが頭の中を駆け巡り、結局何も言わないのが無難と口をつぐんでしまう経験、自治体職員なら誰でもあると思います。

もちろん、間違った情報を与えることやよく知りもしないことでいたずらに施策を論評することは適切ではありませんが、まったく口を閉ざすとなると逆に質問をした友人の立場であればどう思うでしょうか。
もし自分が尋ねたことについて自治体職員の友人が知らないと答えたら、きっと自治体内での情報共有が進んでいない縦割りの組織だと思うでしょう。
もし、その案件については知っていてもそのことを評価することをためらったら、きっと、自治体組織内では既定方針に対して何か言葉を発すること自体が憚られる風通しの悪い雰囲気があるのだと思うかもしれません。
もし、その案件について公式見解や首長のコメントとは違う否定的な見解を示されたら、それはトップのビジョンが職員に浸透していないと受け止めざるを得ないのではないでしょうか。

最近では、SNSの普及で個人が情報を発信することが大変容易くなりました。
私も、私の友人の多くの自治体職員仲間も、この環境を最大限活用して自分の取り組んでいる施策事業や、自分の所管でなくても自治体が取り組んでいること、首長が発信している情報をシェアしたりして個人として発信しています。
組織の殻に閉じこもり、自分の言葉を発することが少ないというのが公務員のこれまでのイメージでしたが、こういった投稿を見るにつけ、私がいつも感じているのは、こういうことを職員が自発的、積極的にやれているということと、トップと職員の関係性がよく自治体運営がうまくいっているということと絶対に相関関係があるということです。
トップのビジョンを職員がきちんと理解できている自負があるから、「自分の言葉で発信していいのか?」「こんなことを言ってトップから目を付けられないか」といった不安を持つことなく安心して情報発信できる。
組織全体の風通しがいいと信じているから「所管外のお前がどうして情報発信するんだ」「管理職でないのに自治体を代表するような振る舞いはけしからん」と組織内で非難されることも心配しなくていい。
そんな組織風土だから、そんな組織風土を大事にするマネジメントがあるから、自治体職員個人からそういう情報発信が行われているのだと思うのです。

「トップの示すビジョンを組織末端の構成員まで理解し共感しているか」
「末端の構成員でも組織の風通しのよさを感じることができるか」
前回「続・その道のプロとして」で掲げた組織マネジメント2つの鉄則。
これができているかどうかを判断するために私は「職員がどれだけ自分の自治体のことを自分の言葉で語っているか」に着目してはどうかと思っています。
職場ででも職場でない場ででも、職務の話題でも職務外の話題でも結構です。
職員が自分の言葉で語ることができる、この心理的安全性が職員の内心に備わっているかどうかがポイントになります。
公式に発信されている情報、首長のコメントなどから、自治体としても意気込み、施策の位置づけなどを知り、その施策を通じて自治体がどこに向かおうとしているのかがわからなければ、また、そのことを個人として発信してもお咎めがないということがわからなければ、うかつに今の自治体運営、施策、事業について自分の言葉で論評することなど危なっかしくてできませんよね。
どれだけ自治体全体の動き、所管外の事案、首長の発言などを知っているか。
知ったうえで、それを自分ごととして咀嚼して理解し、その理解をベースにいろんな事案を自分の言葉で語れるようになっているか。
自治体の職員が自分の勤めるまちのことを評価するのは、実はとても抵抗感のあることですが、それができているかどうかが、私の挙げた2つの鉄則の浸透を測るバロメーターだと思っています。

この投稿をお読みの皆さん、あなたの住んでいるまちにそういう自治体職員がいるのであれば、その方々をぜひ応援してください。
そういった方々も少なからず世間の逆風に耐えながら、それでも自分のまちのことをもっと知ってほしいと情報を発信する“まちのエバンジェリスト(伝道師)”です。
政策のこと、財政のこと、組織のことなど自治体運営のことを市民に知ってもらい、理解してもらい、共感してもらうことからしか自治体と市民との対話なんてありえない。
その最初の橋を架ける伝道師たちが増え、市民との間で対話の輪が広がっていくことで、自治体運営はもっともっとよくなりますので、ぜひ応援をよろしくお願いします。

「その道のプロとして」ではこう書きました。

まずは自治体運営の「中の人」としてそのイロハを理解しているはずの職員自らが、自治体運営のプロとして自分たちの自治体の財政について、あるいは政策について、市民がわかる言葉で語ることができるようになることが必要なのだと私は思うのですが自治体職員の皆さん、いかがでしょうか。
もし皆さんが、自分の住むまち,勤める自治体でよりよい自治体運営をしていこうと思うなら、市民の行政運営リテラシーの向上は必須です。(以下略)
この「行政運営リテラシー」の向上を図るために、市民に対して情報を提供し、市民との対話の架け橋になる存在が“まちのエバンジェリスト(伝道師)”です。
それは選ばれた者のみが担う役割ではなく、すべての自治体職員が負うべき責務であり、そのための努力を怠るべきではないと私は思っています。
自分のまちを愛し、そのまちに奉職することに喜びを感じる自治体職員が増えることは必ずそのまちに住む人の幸せにつながります。
そういう自治体職員が増えていくために、首長が、人事課がどうすべきという前に私たち自治体職員がどうすべきか、あるいは市民の側からどうアプローチすべきか、それぞれが考え、行動していってほしい。私はそう思います。

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2018年12月に本を出版しました。ご興味のある方はどうぞ

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