菊川道生

日常に起きた事や、詩、短歌、作文などを投稿していきます。宜しくお願い致します。

菊川道生

日常に起きた事や、詩、短歌、作文などを投稿していきます。宜しくお願い致します。

最近の記事

「ババァって言うな」

帰るなり、見上げた息子が私の顔を見て言った。 「何、その顔。ババァじゃん。」 確かに自転車を漕いできて、髪はボサボサだったし、スーパーのレジはマスクをしているから、顔半分隠れているようなものなので、眉毛くらいしか描いていなかった。 だからといって、46歳、息子にババァ呼ばわりされる覚えはなかった。 「あんた、何やってんの?宿題やったの?」 と顔を洗いながら言うと、背後でうるせぇなぁという言葉と声がして、バタン!と扉の閉まる音がした。 ババァ…。そうだろうか。まだいけると鏡を見

    • 「当たり前じゃない、父の手料理」

      私の父は料理上手だった。記憶にあるのは、毎日台所に立つ父の後ろ姿だ。サザエの壺焼き、白子の吸い物など料亭のような料理から、唐揚げに餃子と家庭的な料理まで、父にかかれば、なんでもござれだった。夏は冷やし中華、冬は鍋など、 勿論季節もおさえていた。 今にして思うとなんて贅沢な食事だったことだろう。父が亡くなって、6年。勿論今はそんな食事はしていない。父からは、絵を描く才能は授かっても、金にはなるところまではいかず、そして更に残念ながら、料理が得意な遺伝子は私には受け継がれなかった

      • 創作漫画「仙女が飲み込む極上の味」

        • 短歌「ピアス」

          右耳が たとえ膿んでも外さない 彼氏がくれた最後のピアス

        「ババァって言うな」

          作文「意外な素顔」当事者編

          その人のことは覚えてた。 サンダルにスウェットという、目立たない服装が昼間には逆に目立っていた。 年は私より上だろうけど、こんな昼間から、若い女の人がジャージ着てフラフラしているのだ。よく見かけるから、この近所に住んでいるのだろうけど、一体何で生計を立てているんだろう。すれ違いざまチラッと見たけど、清々しいほどノーメイクなその顔はこちらが化粧をしてやりたくなるほどだ。 悩みとか無さそう。 昼間から、すっぴんでジャージでフラフラ…。苦労とか、無縁そうでムカつく。追い越し

          作文「意外な素顔」当事者編

          作文「意外な素顔」局外者編

          よく見かけるから、覚えてた。 目立つ子だから覚えてた。 彼女は私の家の近所で良く見かける、若い子だった。毛先だけをピンクに染めた、変わった髪色をしており、いつもメイクはバッチリで、色白の肌にはピンクのアイシャドウとチークが踊っていた。 何処に行くのかというくらい、高いかかとの靴を履いて、サンダルとスウェット姿の私をすれ違いざまチラッと見下して追い越して行った。 だから、初めは見間違いかと思った。彼女が夕刊を配る姿を見た時は。 だけど、あの毛先だけピンクの髪色は見間違

          作文「意外な素顔」局外者編

          作文「現実逃避」

          夢生は基本的に自ら進んで何かをするタイプではなかった。クラスで何かをやる時もかたく沈黙を守り、話しかけられ、割り振られた役割を渋々引き受ける、そんな感じだった。夢生はクラスの男子達に使いっ走りをさせられており、惣菜パンを買ってこいと言われれば、たとえそのコロッケパンがまだ温かくても遅いと蹴られていた。 そんな夢生は家では全く何もしなかった。掃除、家事、洗濯に至るまで全く何もしなかった。話をすることすらなかった。だから、家事や炊事は必然的に居候の僕に回ってきた。夢生が何もやら

          作文「現実逃避」

          外国からの転校生

          彼女はいつも国語辞典で調べ物をしていた。横にはいつも分厚い本が置かれており、恐らく分からない単語が出てくるたび調べているのだろう。 「ねぇ、その辞書かしてくれない?」 放課後、調べ物をしている彼女に私は言った。 顔を上げた彼女は私をみるとみるみる顔を赤くして、辞書に何か書いたかと思うと、 「付箋の貼ってある場所、読んで下さい!」 と言った。帰り道、私は電車を待つホームで辞典を開いて付箋のページをひろげてみた。そこには蛍光ペンで好き、の言葉が黄色く光っていた。驚いた私

          外国からの転校生

          短歌「かくれんぼ3」

          かくれんぼ 2人騒いで 逃げ回る 口を押さえて 瞳合わせる

          短歌「かくれんぼ3」

          短歌「かくれんぼ2」

          かくれんぼ 2人かくれる 草陰に 息をひそめて 瞳合わせる

          短歌「かくれんぼ2」

          短歌「かくれんぼ」

          かくれんぼ あの子と2人 逃げ回る 息をころして 瞳合わせる

          短歌「かくれんぼ」

          詩「喧嘩」

          胸がチクチクなんでかな 胸がズキズキなんでかな 汚い言葉をあやつって、 綺麗なあの子を傷つけた。 あの子の方が傷ついて、お胸が痛い筈なのに、あの子の涙を見たせいで、私のお胸も痛いのは。 もう仲直りが出来ないとハッキリ分かってしまったからだ。

          詩「喧嘩」

          短歌「狂い咲き」

          早起きの 桜に一つ 問いかける 寒さを越える 覚悟はあるか

          短歌「狂い咲き」

          会話「独占欲」

          「君は服を沢山持っているのに、どうしてわざわざ僕の服を着るんだい?」 「それが私の本心だから。」

          会話「独占欲」

          作文「サチの手紙」

          「あとソレ、食用じゃないから。」私の言葉に、 「なんだ、コレ食べられないのか」 とサチは紫と蛍光の緑がまだらになった、とても気持ち悪い痩せた蟹をつついて、ペロリとその指を舐めた。その蟹は簡素な透明ケースに単体で入れられ、私達の好奇の目にさらされていた。 「サチはホラ、食べ物しか興味ないから。」と誰かが言った。 サチは殆ど眉毛がなく、その肌は驚くほど白かった。ベリーショート にされた髪は脱色され、上はプリンになりかけていたが、色素の薄いサチにはよく似合っていた。大きな目

          作文「サチの手紙」

          詩「病院食」

          詩「病院食」