外国からの転校生

彼女はいつも国語辞典で調べ物をしていた。横にはいつも分厚い本が置かれており、恐らく分からない単語が出てくるたび調べているのだろう。

「ねぇ、その辞書かしてくれない?」

放課後、調べ物をしている彼女に私は言った。

顔を上げた彼女は私をみるとみるみる顔を赤くして、辞書に何か書いたかと思うと、

「付箋の貼ってある場所、読んで下さい!」

と言った。帰り道、私は電車を待つホームで辞典を開いて付箋のページをひろげてみた。そこには蛍光ペンで好き、の言葉が黄色く光っていた。驚いた私は危うく辞典をホームに落としそうになった。何だこれ、何だこれ…。彼女の真っ赤な顔を思い出しながらもう一度付箋のページを開く。

好き…心惹かれること。気にいる事。またそのさま

こんな時、なんて答えればいいのだろう。ありがとう?ごめんなさい?嫌い?いや、嫌いではない。では好き?それも違う。私は必死になって辞典をめくった。これだけ分厚いのだ。何かしら私の気持ちを示す言葉があるだろう。

結果、貴方を知りたい。に落ち着いた。

かなりありきたりだが、私は付箋にこう書いて、1番始めのページに貼った。まずはここからだろう。いつも何を読んでいるの?私の何処が一体好きなの?彼女について知らない事が沢山あり、又知りたい事も沢山あった。私はもう一度、彼女の真っ赤な顔を思い出した。

結構可愛かったな。

私はほてった頬を冷たい手の平で冷ましながら、やって来た電車に飛び乗った。


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