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コトバにできない「好きなもの」

私には”言葉にできにくいけど好き”なものがたくさんある。その代表が「未完成の建物」だ。

その種類の”好き”を一番最初に自覚したのは、完成前のスカイツリーを見に行ったときだった。当時住んでいた香川県の田舎町から、スカイツリー建設中の映像をテレビで見て「行かなくちゃ!」と思った。そして行った。

建設中のスカイツリーは既に完成間近だったのだけど、ものすごく高いスカイツリーの頂上(まだ634 mには達していなかったけど、500くらいあったんじゃないかな)でクレーンが左右に動き、仕事をしていた。

思わず作業服を着ているおじさんに「あのクレーン、どうやってあんな高いところに乗せたんですか?」と聞いた。するとおじさんは「バラバラの状態で上まで持ち上げて、上でクレーンを組み立てたんだよ」と教えてくれた。全身の血液とか水分とかが体中をめぐるような、しびれるような興奮を感じたのを覚えている。

まさかあの場所で組み立てたなんて!!!怖かっただろうな、組み立てた人。凄いな、建物をつくる人って。もっと高くなったら、もっと高いところでクレーンが組み立てられるんだろうな。私には絶対無理な仕事だ。この世には、私には絶対に無理な仕事がたくさんある。

そんなことをたくさん考えて、夜まで興奮が続いて、そのテンションのまま朝まで酒を飲んだ。

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さて、そんな興奮モノとはまた種類が違うのだけれど、最近ちょっとだけマイブームの「完成しかけの建物」がある。

南城市に2021年末プレオープンし、2022年春に本オープンを予定する「南城美術館」だ。

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広大な庭と、公民館のような一見素朴な建物で構成されていて、知らずに通りかかったら間違いなく素通りしそうな外観(写真奥が入り口)。だけど中に入ると、しっかり美術館なのだ。

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まず最初に好きレーダーが反応したのが、まるで協会のような壁面アート。実はこちら、入り口から1番見えにくい場所にある。入り口から見た景色は公民館みたいな素朴な空間なのに、ちょっと裏を覗けば超南国・超ポップな壁面アートがあるっていうのが最高だ。シンプルな服のポケットの裏側だけめっちゃデザインされてる!みたいな感じがいい。

ちなみに前回、2021年のプレオープン展に行った際はまだ完成しておらず、アーティストの方がずっと色を塗っていたのだけど、黙々と色を塗り続ける人と、それを眺めている人がいて、かなり好きな「未完成」空間だった。(なぜ写真がないかというと、その日私が持参したカメラにバッテリーが入っていなかったから...!涙)

ちなみに壁面アートが完成していた時点で、もう美術館完成してるじゃん。とも思ったけれど、もしかしたら本オープンで全然また雰囲気が変わるかもしれないので、オープンまで地道に通おうと思っている。

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中に入ると、南城市の太陽がたっぷりと注ぐ気持ちいい空間。ひかりと影は、そこにある美術品たちに表情を与えてくれる。

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床にたくさん落ちているひかりと影だって、きっとアートだ。

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あー気持ちいい!そうなんだよなぁ、私、南城市の太陽すっごい好きなんだよなぁ。だからこうやって、南城市の太陽をたっぷり取り込んだ空間でアート鑑賞できるのはすごく嬉しい。

ちなみに現在、松本莉央個展「私が見た沖縄」を開催中。2月13日まで。

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ひとつ、とても惹かれた作品があった。「影を落とす言葉たち」というタイトルで展示されていた、言葉たちだ。

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「私は沖縄を知らない」「まだ、旅人」という呟くような言葉たちが、浮かぶようにそこに在り、それぞれが影を落としている。

移住して約8年。私も沖縄を知らないし、まだ旅人のようだ。落ちた影は言葉がもつ別の意味なのか、それともその言葉を評価する人たちの存在なのか。わからない、が心地よかった。

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ちなみに同じ空間で、去年は別の展示がされていた。同じ空間でもそれぞれの作品が出す味わいがまったく違っていて不思議。

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ちなみに南城美術館の面白いところは「泊まれる美術館」だということ。アーティストが寝泊まりしながら作品作りに没頭できるらしい。めちゃくちゃ洗練された宿泊空間だったので、ぜひ一般宿泊も可能にして欲しい。

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お庭にもぽつりぽつりと作品があるのだけれど、基本的には広大な芝生スペースなので、イベントなども開催できそう。

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この日は16時半頃に行ったのだけど、入り口にそびえ立つシーサーに西日があたってカッコよかった。燃えるような、シーサー。

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ちなみに夫と行ったのだけど、彼はシーサーよりも毛がモジャモジャだった。

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帰り道、南城市の西日に向かって車を走らせると、車が結構汚いことに気付く。年始だ。洗車しよう。

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南城市の太陽と、未完成の建物。書いてみると「南城美術館」という場所は、言葉にできない好きなものが2つ詰まった場所だった。

南城美術館公式Instagram




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