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エルドレッドの広島在籍7年を印象的な本塁打とともに振り返る

昨季限りで広島を自由契約となり、ファンからもその行く末を注目されていたエルドレッドでしたが、8月に現役引退を決断したことが報じられ、昨日(9/15)助っ人外国人では異例の引退セレモニーを実施する運びとなりました。

196㎝/126㎏という大柄な体格と同様の大らかな人柄や一発長打を放り込む豪快な打撃から、非常にファンからも愛され、かく言う私も好きな選手の一人でした。

そんな多くのファンから愛されたエルドレッドの広島在籍7年間は、ちょうどチームが長い低迷から抜け出す時期と丸っきり被っており、その打棒はチームの浮上を少なからず支えたことは間違いありません。

そこでチームの躍進を支えた功労者の引退記念ということで、エルドレッドの広島在籍7年の中で、個人的に印象に残っている本塁打を持ち出しながら、その活躍ぶりを振り返っていこうと思います。

※本塁打動画については、章ごとの一番最初に貼り付けてあるツイート中にて該当年の動画が見られます。

1.2012年

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2012年、3打席連続本塁打を放つなど印象的な活躍を見せていたニック・スタビノアが、走塁中に膝を負傷し長期離脱となったことで求められたのが、ニックの代わりとなる一塁手/左翼手をこなせる長距離砲でした。

そこで白羽の矢が立ったのが、当時デトロイトタイガースに所属し、3Aで63試合で24本塁打を放ちながらも、プリンス・フィルダーやミゲル・カブレラといったMLB屈指の打者が同ポジションに在籍していたことから、MLBでは出番のなかったエルドレッドでした。

7月に一軍に合流すると、65試合の出場ながらチーム2位の11本塁打、OPS.780を記録し、チームを初のCSに導くことは叶わなかったものの、見事にニックの穴を埋めるどころかそれ以上の活躍を見せました。

そんな2012年シーズンのエルドレッドの印象的な本塁打はこの2本です。

①8/11阪神戦

広沢克己氏の解説でお馴染みの逆転2ラン。腕が長いためインハイのボールを苦手とするエルドレッド、かつホップ質のストレートを持つ福原忍が投手ということで、インハイのストレートは理にかなった攻め方であるため、広沢氏の解説は最もなのですが‥

腕の伸びるポイントの速球には強いことを思い知らされる本塁打でした。

②9/11巨人戦

9月に大失速を迎え、この試合も敗色濃厚の中飛び出した驚異的な本塁打です。インローの距離を取れるコースに来たストレートを一閃すると、打球は推定150mとなる照明設備直撃弾で、余裕のある試合展開からか笑顔だった巨人の選手たちをあんぐりさせる強烈な一撃でした。

2.2013年

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前年途中加入ながら及第点の働きを見せ、シーズン当初から4番としての活躍を期待された2013年シーズンでしたが、故障や不振に見舞われるシーズンとなります。

4/20に菅野智之から死球を受け右手首を骨折すると、交流戦に復帰後にはバットにまともにボールが当たらないレベルの不振に陥り、7月に登録抹消されました。

同じ一塁手のキラ・カアイフエが途中加入から印象的な活躍を見せ、バリントンやミコライオなどその他の外国人もチームの屋台骨として活躍を見せる中、外国人枠的に苦しい状況に追い込まれます。しかし、8/31に打線に厚みを持たせるために一軍再昇格を果たすと、ここから運命を変えるような活躍を見せます。

キラとの共存のため、慣れない左翼手として出場することとなりますが、9月に一挙7本塁打を稼ぎ、15勝7敗と勢いに乗るチームを牽引する働きを見せ、見事チームを前年は導けなかった初のCSに導きました。

しかし、通年では活躍出来ていないことや波の大きさ等をフロントからは疑問視され、契約延長オファーは微妙なラインでしたが、当時の野村謙二郎監督の強い要望にてチーム残留を果たすこととなります。

圧倒的な長打力という実力面もそうですが、二軍に落ちても腐らず、試合前の守備練習を怠らないような実直な姿勢も残留へと結びついたようです。

そんな山あり谷ありの2013年シーズンでしたが、多くの印象に残る本塁打を放ちました。

①6/8西武戦

1-0で逃げ切りを果たしたこの試合で、虎の子の1点を叩き出したのがこの本塁打でしたが、記憶深いのはそれが中崎翔太と岸孝之というマッチアップで生まれた一発だったからでしょう。

試合前には、1勝3敗で防御率6.63と、当時は一介の若手投手に過ぎなかった中崎が相手先発ということで、広島戦未勝利であった岸の初勝利が期待された一戦でしたが、中崎の7回無失点の予想外の好投によって、この本塁打による失点が仇となり、敗戦投手となってしまいます。

その後も広島戦だけは勝てず、2019年現在でも未勝利と完全に呪いの域へと入りつつあります‥

そのような要素を抜いても、インハイのストレートを綺麗に捌くエルドレッドは非常に貴重という点からも、印象深い一撃です。

②6/12楽天戦

この年日本一を勝ち取る楽天との接戦にケリを付けた一発です。延長戦に突入した試合に飛び出した決勝本塁打という点で、印象深さもあるのですが、中々お目に掛かれない打球の軌道が更にその印象を深いものにしています。

レフトポール際への打球で、普通はポールを巻くような軌道を描いてスタンドインしていくのが、この打球は逆にポールから避けるようにしてスタンドインしています。

風の影響などもあるのでしょうが、それでも理解に難いこの摩訶不思議な本塁打はいまだに私の脳裏に鮮明に焼き付いています。

③9/25中日戦

広島を初のCS進出に導き、エルドレッド自身も印象深い一発に挙げている本塁打です。0-0という膠着状態で進む試合の中、重苦しい雰囲気を吹き飛ばし、歓喜へ導くファンなら誰もが忘れられない一発でしょう。

3.2014年

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何とか延長契約にこぎ着け迎えた2014年シーズン。そのフロントの判断を自らの打棒で大正解にしてみせました。

前年終盤の勢いそのままに、3/4月に.373 8本塁打 23打点を稼ぎ出す活躍を見せ、月間MVPに輝くとともに、チームの開幕ダッシュに大きく貢献します。

その後も多少の停滞はありながらも快調に本塁打を積み重ね、7月末には既に33本塁打を記録するなど、本塁打王はおろか球団記録のシーズン44本塁打を更新できるペースで推移していましたが、ここから大不振に陥ります。

前年に見られたような、バットにボールがまともに当たらない状態に陥り、2度の登録抹消や28試合連続三振を喫するなど、前半戦の勢いは雲散霧消してしまいました。

そのためか、チームも8月終了時には首位と1ゲーム差の位置に付けていましたが、9月に失速し結局3位に終わります。また、上記のような大不振で一時はバレンティンに本塁打王の座を脅かされながらも、9月中旬からは復調し、最終的には37本塁打で何とか本塁打王を確保するに至りました。

この年も山あり谷ありでしたが、トータルでは一定の成果を収めることが出来た2014年シーズンの印象に残る本塁打は以下の通りです。

①4/27巨人戦

前年まで苦手としていた巨人戦で、散々抑え込まれていた山口鉄也から放ったサヨナラ弾です。

3/4月の月間MVPを確実なものにするとともに、前田健太と内海哲也の両エースによる緊迫した投手戦を制し、散々やられ続けていた巨人相手に溜飲を下げる一発であったのがいまだに印象深く残っています。

②6/15ロッテ戦

もはや多くを語る必要はない、エルドレッドと言えばこの本塁打というくらいの象徴的な本塁打でしょう。

開幕ダッシュを決め、首位を快走していたチームですが、鬼門の交流戦に入りまさかの9連敗と大失速し、首位を明け渡すこととなります。

そんな苦しい状況で迎えたこの試合、2-5と3点ビハインドで迎えた7回表、1死満塁の好機でロッテ・益田のスライダーを一閃した打球は重苦しい空気を一掃するバックスクリーンへの逆転満塁弾となり、連敗のストップへと繋がりました。

大型連敗中でビハインドの展開という苦しい中、このような劇的な満塁弾でしたから、脳裏に焼き付くのはある意味必然と言えましょう。

③9/21横浜戦

あまり覚えてらっしゃる方はいないかもしれませんが、夏場に絶不調に陥ったエルドレッドの復活を確信した本塁打という点で非常に個人的に印象深い一発です。

不振時は空振りを連発するフォークに対して、多少甘めに来ながらも距離を取りながらそれをキッチリ捕まえて、逆転の2ランをスタンドまで運んでみせました。

この一発で感覚を取り戻したのか、閉幕までさらに本塁打を積み重ね、自身唯一の打撃タイトルとなった本塁打王を獲得することとなりました。

4.2015年

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タイトルホルダーとして迎えた2015年、右膝半月板の手術の影響で一軍初出場が5月と出遅れてしまいます。

それまでのチームは、菊池涼介や丸佳浩の不振等もあり中々波に乗れず、加えて得点源として期待されたヘスス・グスマンやネイト・シアーホルツといった新外国人の不振の影響も大きくマイナス面に作用しました。

阪神から復帰してきた新井貴浩が得点源とならざるを得ないような苦しい状況で、前年本塁打王のエルドレッドにかかる期待は非常に大きかったのですが、コンディションが上手く整わなかったのか、79試合の出場に留まり、打率は.227と低迷することとなってしまいます。

しかしそんな中でも、チーム1位の19本塁打を放ち、勝負所の9月以降にはその内の8本塁打を放つなど、全体的に打撃不振に陥り、優勝を期待されながらCS進出すら逃すチームの中で一定の働きを見せました。

チームとしても、自身としても、停滞のシーズンとなってしまった2015年シーズンの印象に残る本塁打は以下の通りです。

①8/22巨人戦

不振に苦しみ代打待機となったこの試合。福井が8回1失点の好投を見せるも打線の援護なく迎えた8回裏に代打で登場し、見事バックスクリーンへ逆転の2ランを放ちます。この年は中々印象的な活躍を見せられませんでしたが、この本塁打は福井の魂の投球に報いる素晴らしい一撃でした。

5.2016年

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圧倒的な長打力を期待され、1年契約で残留となった2016年シーズンは、開幕から好調で3/4月は.358 9本塁打を記録し、その後も3割近い打率をキープするなど、チームの好調ぶりに合わせて自身も好調をキープしていましたが、例年のごとく故障により戦線離脱してしまいます。

これにより、この年も95試合の出場に留まりましたが、通年の打撃内容自体は来日以降最高のもので、OPS.900を記録するなど素晴らしい打撃成績を収め、25年ぶりのリーグ優勝に大きく貢献しました。

この打撃内容の向上は、それまで4番に座ることが多かったのが、下位打線に座ることも多くなり、一発長打を嫌がった相手からまともにストライクゾーンで勝負されることが減ったことと、エルドレッド自身もそれを我慢できるようになったことが大きいのでしょう。

波の大きさが特徴的なエルドレッドの打撃の中でも、このシーズンは比較的波が少なく、その中でも爆発的な活躍を見せることもあったため、個人的にはこのシーズンが広島在籍7年の中で最も良い打撃内容だったように思います。

そして、日本シリーズでは大谷翔平から本塁打を放つなど、3試合連続本塁打を放ち、これまでも見せてきた爆発力を発揮して敢闘賞を受賞しました。

このように、故障離脱こそあったものの、来日以降最高の打撃内容を見せ、ポストシーズンでの活躍も光った2016年シーズンの印象に残る本塁打は以下の通りです。

※本塁打動画は、最初のツイートの2本目の本塁打動画からが2016年のものとなっています。

①5/1中日戦

投手陣が打ち込まれ、4点ビハインドと苦しい展開で迎えた5回裏、中日先発・ネイラーを捉え始め1点差まで詰め寄った後、代打で登場したエルドレッドが高めの釣り球をものともせず、左中間スタンドまで豪快に運ぶ逆転3ランです。

この打席前の時点で、リーグトップの9本塁打でリーグ2位の打率.358と絶好調だったエルドレッドが、代打で登場しても得点力が維持できる選手層の厚さを感じるとともに、4点ビハインドをあっさり跳ね返す「逆転のカープ」の象徴的な試合という点が、非常に印象的です。

加えて、エルドレッドとは全く無関係ですが、打たれたネイラーの悔しがり方も特徴的で、更に印象深さを増させています。

②日本シリーズ

マウンドに合っていなかったとはいえ、大谷翔平の150㎞の速球を捉えた1本目。押せ押せのムードの中、鍵谷陽平の釣り球をものともせずスタンドまで豪快に運んだ2本目。有原航平の浮いたカットボールを見事にライトスタンドまで運んで見せた逆転の3本目。

25年ぶりのリーグ制覇で勢いに乗るチームを象徴するかのような3戦連発で、死闘の末ソフトバンクを破った日本ハムの勢いをも凌駕するかと思わせたチームを牽引する大活躍でした。

しかし、その後は当たりがぱったりと止み、チームも4連敗で日本一を逃すと言う結果に終わったのは、波の激しい何ともエルドレッドらしさを感じずにはいられないところです。

6.2017年

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前年、来日以来最高の打撃内容を見せましたが、この年もそれを継続してシーズン途中まで中日・ゲレーロと本塁打王争いを演じるほどの活躍を見せ、最終的には27本塁打、OPS.900を記録し、チームのリーグ連覇に貢献しました。

トータルでは前年以上の活躍を見せたものの、夏場以降は右肩下がりの成績で加齢の影響を感じさせ、来季以降への不安を感じさせる内容であったことが懸念として残るシーズンでした。

そんな2017年のエルドレッドの印象に残る本塁打は以下の通りとなります。

①7/1中日戦

中日・小笠原慎之介からの3打席連発。得意の左投手の140㎞そこそこのストレートは内外構わずキッチリ捉え、かつ奥行きで勝負するチェンジアップに対しても、好調ゆえにしっかり間を取り、距離を取って捉えることが出来ています。

相変わらずの爆発力を見せつけた点と、好調時のエルドレッドらしさが詰まった3連発という点が印象深いです。

②8/6横浜戦

試合展開には然したる影響を及ぼさない一発でしたが、外のボールゾーンのスライダーを泳ぎながら圧倒的なリーチでスタンドまで運んだ、驚異の一撃です。

邪魔になるシーンもありますが、このように時には大きな武器にも成り得る圧倒的なリーチを感じさせる変態的な本塁打という点から、鮮明に記憶に残っています。

7.2018年

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結果的には現役最終年となった2018年。この年もシーズン当初の5試合で3本塁打を放つなど、例年通りの開幕ダッシュを見せましたが、すぐに失速。

5月頭の時点で打率は.200台に低迷し、同ポジションで役割の被るバティスタにその位置を取って代われるようになりました。

6月に一軍登録を抹消されると、そこから一軍昇格を果たすことはなく、シーズン終了後にとうとう自由契約となってしまいました。

一軍に登録されていた期間も短かった最終年ですが、その中でも印象に残る本塁打を最後に2本挙げたいと思います。

①3/30中日戦

6回に逆転を許し、重々しいムードに包まれたその裏。一振りでその雰囲気を切り裂いたのがこの同点弾でした。アウトローのボールでしたが、エルドレッドにとっては距離の取れる位置に来るストレートという絶好球で、ものの見事にライトスタンドに運んでみせました。

②4/26横浜戦

3回以降膠着状態が続いたこの試合。後攻のアドバンテージを生かし、同点の9回に登場してきた横浜の絶対的守護神・山崎康晃のストレートを見事に捉えバックスクリーンまで運んだ会心のホームランです。

衰えが顕著に見られたラストシーズンでしたが、球界を代表するクローザーのストレートを捕まえるあたりにエルドレッドの意地を感じる一撃でした。

8.どのような選手であったのか?

ここまで、年ごとにエルドレッドの足跡を振り返ってきたところで、最後にどのような選手・存在であったのかを以下にて述べ、締めとしたいと思います。

波が激しく、主軸に置くには少々厳しい打者でしたが、6番あたりでフリーに振らせると非常に怖い打者で、事実エルドレッドの定位置が6番あたりに落ち着いた2016年以降、NPB史上でも屈指の破壊力を誇った打線を形成し、見事リーグ3連覇を果たしています。

また、現役最終年にも山崎康晃のストレートを本塁打にするなど、ストレート系には強く、ストレート系の強さが広島打線の傑出した得点力を導いた中で、重要な役割を果たしたことは言うまでもありません。

加えて、大柄な体格を生かした的の大きさと、レンジは狭いものの堅実な守備で、一塁守備でもチームに大きく貢献し、攻守両面でチームを支えた存在でした。

WARで見ると2.0すら超えた年もなく、フルシーズンで稼働したことも無かったため、数字で見ると大した選手ではないように見えますが、これだけの印象的な本塁打を放ち、ファンから愛された選手はそうはいないでしょうし、チームをリーグ3連覇に導いたという意味でも、多くのものをチームにもたらしてくれた選手だと思います。

最後になりますが、長い長い現役生活お疲れ様でした。次は駐米スカウトとして、現役時と同様に再び多くのものを広島にもたらしてくれることを期待しています。

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