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トスカーナ・オリーブの夢 販売に向けて

収穫の終わった、10月の終わり。
まだ少し、黒く熟している実をつけたオリーブの木が、サワサワと揺れている。

さてこれから、やる事はいっぱいある。
搾り取ったオリーブオイルは、販売するのに商品化しなくてはならなかった。

オリーブオイルの成分検査
ラベル作り
どのような商品展開をしていくのか
詳細やホームページ
配送方法
その他、諸々。

人生の、ありとあらゆる場面で、人は決断しているけれど、
販売するために決めていく事のうち、迷うことばかりで、ああどうしようと思いながら、毎日が過ぎていく。

とりわけ、オリーブオイルのラベル。
これを決めないことには、商品化が進まない。
搾り取ったオリーブオイルのサンプルを、指定機関の研究所に持っていき、
成分検査をしてもらっている間に、ラベルの原案を完成させる事にした。

言葉に長けていない分、それを伝えるのに充分な素材を持っていかないと
相手にしてもらえそうにない。
相手はイタリア人だから、好きなように解釈して、自分色に表現してくれるのがお得意。
その勢いに飲み込まれないための、最低限のモノを用意する。

偶然にも出来上がったロゴマークを入れ、120ページにも渡るラベル作成の要項と搾油所で頂いてきた、他の作り手さんのラベルを見比べながら、必要事項を記載していく。
文字の大きさや書き方の順番もあるし、ボトルの大きさも考慮しなくてはいけない。

プリントアウトしては、調節し、調節しては、プリントアウト。
幾度となく、同じような作業を繰り返し、ようやく原案が出来上がった。

夏に、世話役フランコに教えてもらった印刷所もあったのだけど、そこはあまりにも遠く、他にないか?と、とりあえず、周りの人に聞いてみる。
これも、長いイタリア生活の中で学んだことの一つだ。

困ったら、人に聞く。

人に聞くのが得意でない私も、少しはイタリア人っぽくなってきたのだろうか。
「ねぇ、どこか、良い印刷所は知らない???」

「ウチがお世話になってるところに行ってみたら???」

ワインを作っている知人が教えてくれた。
とてもありがたい。

闇雲にいろんな人に聞いてみたけれど、
印刷所と言ってもいろいろ扱いが違うらしく、
「オリーブオイルのラベルねぇ…どうかなぁ。」という意見が多かった。
イタリア人だから、なんでも知っている…というわけでもない。

なるべく早く、ラベルを完成させたかったから、
知人がお薦めしてくれた印刷所に行ってみた。

正直いうと、ここも近くはない。
訪ねてみると、片腕に包帯をしたお兄ちゃんが出てきた。

「あ、知ってる?エコ対策で容器の素材の表示も記載しないといけないの。これは、僕が上手いこと組み込んでおくよ。見積もりは、来週の火曜日には出すから。連絡がなかったら、一報ちょうだい。」

エコ対策の表示…
イタリアの新しい法律は、人々を悩ませる。
でも、きっと、上手くやってくれるに違いない。

ちょっとした期待とワクワク感で、少し嬉しくなった金曜日。

もうすぐだ…

その時は、そう、確信していた。

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