剪定という哲学
今年のイタリアの冬は、本当に暖かい。
まだ2月だというのに、すっかり春の陽気で、日中は、18度くらいの日が続いている。
剪定にはもってこいの日々。
少しでも、経費をうかせる…ということもあるけれど、
きちんと、オリーブの木々と対面したいこともあり、
出来るところは自分たちでやっていきたいと早速、剪定バサミを買ってきた。
さて、どこを切れば良いのだ???
オリーブの木の、途方もなく広がっている枝を見上げて、しばし、止まる。
オリーブの木は、土からの養分を吸い上げて、枝の先々にその栄養が行き届くようにしなくてはならないのは分かるのだけど、
果てしなく広がっている枝の、果たしてどれを切ってあげるのが正解なのだろう。
根本の脇から生える小さな枝はイタリア語で 「pollone」と言って、これはカットしなくてはいけない。
昨年は、ほぼほぼ、何もしなかったから、オリーブ畑の向こう側にある数列は、もう凄いことになっているのを、収穫の時に気がついた。
まずは、出来るところからやっていく。
失敗するのがこわいから、考えに考えると、どの枝も切れなくなる。
まるで、人の生き方のよう。
石橋を叩いて渡る。
叩きすぎてもいけないし、叩かず渡れなくなるのもいけない。
ある意味、哲学。
夜、Youtubeで剪定の仕方を教えてくれるチャンネルを選びながら、何が必要なのかを聞き分ける。
人によっていろいろで、またしても分からなくなる。
若い人は、ザックザック切っていく。
経験ある主は、切った後の切り口からの影響を含めて、どれくらいの位置に鋏を入れなくてはいけないかを教えてくれる。
さっき言っていたのとは、違うなぁ。
全部を聞き入れると混乱する。
やっぱり、人間の生き方みたいに思えてくる。
いろいろなチャンネルを見ながら、自分の中での正解を探していく。
そうして、その時はわかったつもりになって、いざ、オリーブの木を目の前にすると、
昨日見ていたオリーブの木とは全然違う枝の伸び方をしていて、やっぱり分からなくなる。
オリーブの剪定の仕方みたいな講座があると聞いた。
「今日で募集が終わったよ。」と言われた。
いつも、一歩遅い私。
結局、やってみなければ分からない。
そうして、少しずつ、覚えていこう。
オリーブ栽培の、長い長い冒険は、まだ始まったばかりであるのだから。
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