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私の本音

10月の上旬。

収穫の一週間前、収穫隊の隊長モハメッドが
オリーブ畑にやってきた。

「そろそろ、いい感じだね。来週末あたりは、どう?」

お隣さんの一角では、既に収穫を始めている。

トスカーナでも南にあるマレンマ地方では、
北のフィレンツェあたりに比べて
陽当たりも良いせいか
一足早く、収穫が始まるみたいだ。

おぼろげな記憶と、携帯の中に残る写真から比べると
黒々しているし、実も大きい気がして、
今年の方が熟成が進んでいる…と思うのだけれど、
比較的雨が多かったから実が膨らんでいるという事もあるらしく
そうすると、重量は稼げても
搾油率が減って、出来高は少なくなるのだと言う。

天気予報を見たら、
翌週1週間が雨マークだったから、
出来れば、雨が降る前に収穫しておきたい。
オリーブが、その水を吸ってしまう前に。

実が青いと、
ポリフェノールは豊富だけれど
黒く熟していた方が濃厚な味になる。

待つべきか、
どうなのか。

判断するのに、
あまりにも、経験が無さすぎて、一人では決められず、
結局、昨年同様、
世話役フランコと収穫隊隊長モハメッドの意見を仰いで
10月の15日前後に収穫する事に決めたのだった。

フランコが言う。
「今年はね、搾油の金額も上がるよ。この光熱費の高騰化の影響があるからね。」
それだけではない。
ガソリン代だって、跳ね上がっていて、
搾油所に持っていくのにだって、経費がかかってくる。
「それから…」
続けて、ポツリと言った。
「もし、オリーブを他から買うのであれば、言ってね。」

フランコが保つオリーブ畑のある campagnatico では、
一昨年前あたりから打撃を受けていて
収穫に伸び悩み、
今年は、他から買うことを
早いうちから計画立てていたのを知っている。

「君のところ、昨年のは完売したしね。量が必要であったら…」

おかげさまで、
出来たオリーブオイルを全て売り切ってしまえたのは
本当に恩の字で、
だからこそ、
販売数を増やすより
その質にこだわりたい。

気を回してくれたフランコには
「ありがとう。」と告げ、
でも多分、
量が少なくても
もう少し、
この土地のもつ特徴を知りたい…と思う。

経営者としては、どうなのかな…と思う、私の才覚。
それでも、
自分のもつオリーブ畑から出来るオリーブオイルを追求したい…
が、私の本音。

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