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OLIVE DELLA YUKI 未来に繋ぐ美味しい…の背景

冬のオリーブ畑。
年末年始に降り続けた雨のおかげで、
オリーブの木々は、青々とした草たちに囲まれている。

昨年の今頃はまだ、年老いたプロフェッソーレがこの土地の持ち主で、
「もう、体力的に出来そうにない…」と、数年前から放置されていた土地である。
田舎生活志望の私としては、そんな土地があったら「是非とも、私がやりたい!」と
自分の無知さ加減は棚に上げて、思ったのだけども、
イタリアの若者には、そういう志望者は少ないらしく、
だから売り出されていた土地であった。
もっとも、私も、若者と言える年ではないのだけれど。

そんなこんなで、オリーブの栽培家となり、
初めて、オリーブオイルを生産し、
今に至っている。

ひとえに、「美味しいオリーブオイル」というのを、
消費者や販売者の視点に立って思うのと、
作り手として思うのとでは、
実は大きく違うのだと、
今回、初めて経験することとなった。

エキストラバージンオリーブオイルの定義は、その成分の数値によるものが大きいけれど、
その数値が「美味しい」には直結せず、
その年の天候だったり、収穫の時期であったり、
はたまた搾油所で扱う機械の性質、搾り取るまでの時間、搾り取る時の温度、
そういった様々な要素が折り重なって生まれるもので、
もとより、
オリーブが育つ土地の影響は大きい。
それが、今回手がけてみて、初めて思った事である。

口で簡単に、
「美味しいオリーブオイルを生産します。」とは言い難く、
出来るだけ、自然に忠実に、
育つオリーブに、いろんなタイミングを見計らい、
あとは、オリーブ自体の力を信じるしかない。

自然の力の前には、
私なんぞの手は、きっと、微々たるもので、
だけれど、それを壊さないように配慮しながら、
古代ローマから続く、オリーブオイルの生産をすることは、
果てしなく壮大な夢のようにも思える。

一本一本を紡ぐ糸のように、
私が関わっている今のオリーブ畑も、
こうして次の世代へと受け継がれるようになれば、
それはまた、イタリアの持つ素晴らしい食文化を伝える歴史の一部となり得る…
そんな気さえする。

ようやくイタリアから送り出したオリーブオイルを
受け取った方たちから
「美味しいです。」というメッセージをいただくたびに、
この小さなオリーブ畑が、過去から未来への架け橋となり、
さらに、
イタリアと日本の架け橋になっていることを思うと、
なんだかとても感慨深く、
より一層、頑張ろう!と思うのである。

#未来に残したい風景

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