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OLIVE DELLA YUKI 田舎のお助け機関で…

ようやく、春めいてきた。
なんとなく、オリーブ畑に目をやると、
視界の片隅に、ピョンピョンと動くものがいて、
何かと思って、よく見ると
それは、野ウサギだった。
写真に収めようと、近寄ったら、
当たり前だけど、
ピョンピョンと遠くに行ってしまった。

その日は、オリーブ畑のある地方の、
公的機関へ出向く予定だった。

イタリアには、いろんな公的機関があって、
それらの手続きをお手伝いしてくれる団体もある。
出向いた先は、そういうお手伝いもしてくれるところだ。
何もかもが初めてのことだし、
簡単にたらい回してくれるイタリアの役所に行ったとしても、
結果は目に見えているから、
こういうお助け機関は、本当にありがたい。

約束の5分ほど前に辿り着くと、
中から穏やかそうなお姉さんが、とっても丁寧に対応してくれた。

「前の方が長引いていますので、こちらでお待ちくださいね。」

そのお姉さんこそ、事務員でもなんでもなく、
年金やら何やら、
難しそうな手続きをお手伝いしてくれる、私にとっては、とても重要な人だと
後で知ることになる。

約束の時間を10分ほど過ぎた時、ようやく中から人が出てきて、
今度は、自分が迎え入れられた。

「いやぁ、どんな感じ?」

最初っから、砕けた感じで、ポッコリお腹の出たシニョーレが聞いてくる。
なんかやっぱり、フィレンツェとは違う雰囲気を醸し出している。
搾り取られたオリーブオイルを日本のお客さまのもとへ直接送るのだと言うと、
「いいなぁ。僕の分も売って欲しいくらいだよ。」
そうボヤいたのが、ちょっと可笑しい。

農業はあまり儲かる仕事ではないから、片手間にやっている人が多く、
販売まで手が回らないから、
実は、有名どころのものよりも、美味しいオリーブオイルを作っているのに、
知る人ぞ知る…みたいになっている。
大手の、インポーターさんを見つけて、まとめてドンと送った方が、
楽で儲かるようになっているのだと
やってみて分かることが沢山ある。
個人のレベルでいくと、3ヘクタールほどの大きさくらいで収穫できる量が
ちょうど良いのかと思う。

お腹の出たポッコリシニョーレの話は止まらない。
手続きに何が必要で、何が必要でないのか、
よく分からないうちに、
気がつけば、30分は過ぎていたんじゃないかと思う。

「じゃあね、さっきのシニョリーナが、いろいろ手続きのお手伝いしてくれるから、
ひとまず、必要な書類、頂いとくね。」

多分、5分で終わりそうな話だったけど、
これからお世話になる機関、
ああ、イタリアだなぁ…と思いつつ、
その場を後にした。

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