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オリーブオイルの現実

12月も、もうすぐ終わる。
今年の冬は、適度に雨が降って、適度に晴れていて、だからオリーブ畑が青々としている。

注文分のオリーブオイルを毎週末、搾油所に取りに行く。
私がお願いしている搾油所は、作り手別にそれぞれのタンクを真空状態にし、温度調節された部屋で保管してくれている。
少しでも鮮度を保つには、ギリギリにボトル詰めをした方が良かろうと、こうして、週末になると搾油所にやってきては、フィレンツェへと持ち帰るのである。
一気に全部持っていきたいところだけれど、今度はフィレンツェの家の方が、梱包材やらなんやらでいっぱいになってしまうから、息抜きついでに週末やってくるのが、自分には向いているのだと思う。

「今年は大変だった…」
搾油所のシモネッタがボヤいた。
オリーブの成長具合が遅く、度々の荒れた天候に影響され、収穫と搾油が、短い期間に集中したからである。
私の方は私の方で、天候に振り回されたけれど、それでも、今年出来るベストだったな…と、後になったら思う。収穫は、それより前でも早すぎ、その後だったら、大雨にやられただろうから。
後にも先にも、あのタイミングで良かった…と、どちらかというと、ポジティブ志向である。

搾油所には、沢山の5リットル缶が積み上がっていた。
「これは、どちらに?」と聞くと、ドイツに向けて発送するのだと教えてくれた。
イタリアで出来た良質なオリーブオイルが、イタリア国内でなく、海外に向かって出てしまう構図が、なかなか面白い。かくいう私も、その殆どが日本へ向けて発送している。
もちろん、イタリアで購入してくれる方も居て、それが少しずつ増えていることがまた、嬉しい。

イタリア産の美味しいオリーブオイルを、イタリア人が皆、知っているか?というと、そうでもないのが現実で、スーパーなんかで、適当に買えるものを購入して使っているのが普通であるから、味見をしてもらうと、ビックリされる。

「オリーブオイルって、こんなに美味しいんだ…」
私にとって、それは、最高の褒め言葉である。

小さな農家が作る良質なオイルは、なかなか、大きな市場まで行くことがない。
家族分だけ取っておいて、あとは搾油所の人に販売を任せ、売れたらその半分ほどの金額が入る…みたいなカタチになる。だから、他の作り手と一緒くたになってしまったりもする。
実益にならないから、ますます、手放す人が多いのが現実。

かかる費用も半端ないけど、行けるところまで行ってみたい。

私の気持ちはというと、もう新年度に向かっている。

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