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映画『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』を観て

「私はジョーになりたかった…」

猛暑凄まじい日々が続いた八月前半、私は病院のベッドの上で過ごしていました。。三泊四日の予定が延期になり、正味九日間の入院生活。

とっても具合が悪くてただベッドの上でぐったり過ごした二日ほどを除いて、映画を観て自分がどこにいるのか忘れちゃうくらい集中した時間もあり、ある種メリハリの効いた日々を過ごしました。

観た映画は計5本。最後に観たのがこの『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』。日本では昨年ロードショーだったのですね? 

『若草物語』は子供の頃に大好きな一冊で繰り返し繰り返し読みました。

でも舞台になっている南北戦争当時のアメリカの様子や当時の生活様式は、文章で読んでも子供の私の想像を超えていましたが、それでも、大きな邸宅、馬車での移動やダンスパーティー、ロングドレスなどなど、ひたすら憧れでした。

また、クリスチャンとなった今ならわかりますが、四人姉妹の母親が近所の貧しい人たちへの施しのために、自分の娘たちが楽しみにしていたクリスマスのご馳走を譲ってあげるとか、正直、理解できませんでした。

それぞれ個性的な四人姉妹の中で私が大好きだったのは、圧倒的にジョー。ジョーは自由に生きる道を求めて四苦八苦し、時代や周囲との対立・軋轢もあったり、理解されず受け入れられず、浮いてしまったり非難されたりするわけですが、子供の私は、そのジョーの夢に向かって果敢に戦い進もうとする姿に憧れたものでした…。

そんな、たいへん思い入れのある『若草物語』。

封切と同時に映画館に駆け付けられず残念に思っていましたが、今回、AmazonPrimeで観ることができました。嬉しかった!!!

私が観たい映画の条件として、映像の美しさがありますが、その点は大満足。クラシックな家の造りや調度品の数々、登場人物たちの衣装、舞踏会のシーン、森や海辺の豊かな自然、巴里の街並み、最初から最後まで美しいが溢れています。女性陣を差し置いて特筆すべきは、ローリー役のティモシー・シャラメの美しさ、かな~。

ストーリーは四姉妹の子供の頃、つまり『若草物語』に描かれている時代の回想シーンが、大人になった四姉妹の生活の中に頻繁に組み込まれて同時並行で進んで行くので、オリジナルの『若草物語』を知らない人が観ると、どれが過去の話で、どれが現在なのか、混乱するのでは? と思いました。

でも、オリジナルが大好きだった私は、このストーリー構成は楽しめました。四姉妹と心を合わせて「ああ、そうだったわ!」なんて思いで観ていました。

麗しい四姉妹のお話し、のはずですし、実際、そうなのですが、ジョーとエイミーの壮絶な取っ組み合いの喧嘩のシーンもあったりするからこそ、現実味があっていいです。

子供の頃に本を読んでいた時はほとんど注目しなかったけれど今回の映画で注目したのが四姉妹を育て見守るお母さんのミセス・マーチ。私の記憶の中ではひたすら聖女のような、マザー・テレサが南北戦争時代のアメリカで家庭の主婦として生きていたらこうだっただろう、みたいな、聖女のイメージでした。

映画の中で、自分の短気を持て余し落ち込む次女のジョーに、お母さんが声をかけます。「あなたが、私に一番似てるから気持ちはよくわかる。私も実は相当短気なの」。いつも冷静沈着で慈愛に満ちた母を見てきたジョーにはにわかに信じられないのですが、驚く娘に対して「40年かけて努力して、ようやく心をコントロールできるようになったわ」と。

「あ~、これ、よくわかる!」大いに共感しました。
ミセス・マーチは私からしたら信者の鏡ともいえる、とても敬虔なクリスチャン。短気を起こして行動していたら、とてもイエス様の期待には応えられませんから、失敗するたびに悔い改めて「どうぞ、この愚かな私を憐れんで変えてください、導いてください」ってお祈りしていたんだろうな、と思います。自分がそうだから…。

自分たちの生活だって相当苦しかったのに、もっと困っている人を見るといてもたってもいられなくて、持っているものはすべて与えてしまう。その点は、信仰者としてお手本です。

そうかと思うと、戦いの前線に出向いて長期不在だった夫に対してチクリと嫌みを言うユーモアも持ち合わせています。根底に愛があるからこそ言えるチクリなのですが、そんなシーンも素敵でした。ミセス・マーチは旧約聖書の『箴言』に描かれている理想的な女性像に重なります。

しっかりした妻をだれがみつけることができよう。彼女の値うちは真珠よりはるかに尊い。
箴言31章10節

あんなに仲の良かったジョーとローリーの心がすれ違い、多くの読者の期待を裏切ってのまさかの展開や、周りの誰もに愛されて愛された三女のベスが病のために早世したり、人生の切なさもたっぷり含まれています。美しくて楽しいだけの夢物語じゃない。もちろん、人生ですから。

退院の前の晩から見始めて、途中で退院したので(笑)、続きは家に帰って家のベッドの上で観ました。

心臓の治療なので、万が一の確率だっていくらかはあった中で、無事に帰ってくることができた、その有難さを感じながらこの映画を観て、「ジョーになりたかった」子供の頃の自分を改めて思い出し、あの頃の自分が喜んでくれるようにこの先の人生を改めて生き直したいと思わせてもらいました。

メリル・ストリープが意地悪なマーチ叔母さまの役を、本当に嫌みたっぷりに演じているのも、楽しいです(笑)。
一見、意地悪で、愛情なんて欠片もなさそうな叔母さまでしたが(ミセス・マーチの対局に位置する女性)、これと見込んで、実は可愛がった四女エイミーに莫大な遺産を残します。意地やプライドや恥ずかしさから言葉や行動では最後まで示すことができなかった、彼女なりの愛情表現だなって感じました。それをもって、エイミーは、娘時代の画家の夢を捨てて、教育者への道を拓いていくのですから…。

繰り返し観たい映画です。




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