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「Ich war das nicht!(私じゃないわ!)」にみる合理的ドイツ人

今までドイツ語のテレビを観ようとも思わなかった私だが、ドイツ語苦手意識克服のため、娘と一緒に「Barbie」を観てみることにした。
しかし、それはあるひと言より、5分も経たないうちに終了することとなった。

その場面では、バービーが妹たちと宝さがしをしているところだった。
少し離れたところまで犬に導かれ「ここ掘れワンワン」とお宝発掘を試みていたが、結局その場では見つからず、リュックサックを置いた場所に戻ってきた。
ところがバービーが置いたはずのリュックは、消えていた。
「私のリュックがなくなってるわ!」とバービーが叫ぶ。
すかさず妹が「Ich war das nicht! (私じゃないわ!)」と返した。
それを聞いた私は耳を疑った…


このフレーズ、ドイツに住んでいると実によく聞く言葉である。
わが家でも
「あれ、なんでこの本がここにあるの?」と言えば、「Ich war das nicht!」
「ボールペン、どこいっちゃったかな?」と聞けば、「Ich war das nicht!」
日本語補習校の先生をしていた時も
「誰かの鉛筆が落ちてるよ」と言えば、「Ich war das nicht!」
「このおもちゃ、電池がないのかしら?」と聞けば、「Ich war das nicht!」

私は「誰がやったの?!」と問い詰めているわけではない。ただ単に、疑問に思ったことを口に出しただけである。
バービーも同じで、妹を責めたわけではない。「置いたはずのリュックが、そこにはなかった」と事実を述べただけなのだ。ましてや、ずっと一緒に行動していた妹が、瞬時にリュックを取って隠すことは至難の業である。
「私じゃないわ!」の代わりに「どこにいったのかしら?」というセリフではダメだったのだろうか。


誰かに責められる前に「私じゃない!」と主張するドイツ人は、連帯責任を重んじて、自分に直接関係のないことでも、頭を下げて謝ることができる日本人とは真逆である。

ドイツ語の勉強を始め、このブログを書くようになって、私のドイツ人への考え方も少しずつ変わってきたように感じる。そして、もしかしたらドイツ人は「自分に関係のないネガティブなものから身をかわすこと」が上手なのではないかと考えるほどになってきた。
ネガティブそうなものが自分の人生に侵入してきそうだと感じた時、ネガティブなものが入ってくる前に阻止する。ある意味、合理的、ドイツ人らしいとも思った。

自分たちの人生を、自分たちの幸せを求めて、自分たちなりに楽しんで生きているドイツ人。他人のゴチャゴチャなんかに巻き込まれている暇はないのだ。
アメリカでのオリジナル版では、バービーの妹がその場面で、どんなセリフを言っていたのかが気になる。

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