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【ジェンダー】女子に求める「かわいさ」の背景には何がある?♯064

高校の先生に「今の女子高生は何が好きなのか?」と聞いたことがある。
するとこんな答えが返ってきた。

「かわいいが好きね」

可愛い人やものに憧れ、自分が「可愛くない」と落ち込む。
10代の繊細な心にこの「かわいさ」というキーワードが深く関わっているようだ。

スタディサプリが調べた高校生のなりたい顔ランキングというものがあった。

このランキングによると、女子高生が選ぶなりたい顔の第1位は橋本環奈さん。
その理由は、
「目がキュルキュルでかわいいから」
「パーツ一つひとつがかわいらしい
からなのだそう。

続いて第2位が浜辺美波さん。
「The女の子みたいなかわいい顔をしているから!」
「透明感がすごくて、天然でおもしくて運動音痴なのがかわいい女の子すぎる」

第3位 新垣結衣さん
「ふわふわした感じのかわいさが魅力的!」

ここでは、あえて「かわいい」というキーワードが含まれているコメントを抜粋したが、編集部が抜粋したコメントにも「かわいい」というコメントが目立つ。

この女子の「かわいい」って何なんだろう。

確かに私の娘は4歳だが、ユニコーン、マイメロディ、ちいかわetc
とにかくかわいいものが大好きだ。
また私がイギリスに住んでいた頃、日本のかわいいキャラクターはヨーロッパでも人気だった。
インドネシア人の友人がよく"KAWAII"という言葉を使っていた。
そしてイギリスの有名な美術館サマセットハウスではCUTE展が開かれている。

そういえば、春休みに乗ったキティちゃん新幹線。
これも海外からの旅行客がめちゃくちゃ多かったな・・・

とにかく、この日本のKAWAIIは、海外でも評価される日本文化の1つであることは間違いなさそうだ。

ただ、一方で、海外の女子高生も日本の女子高生と同じく「かわいい女子」を目指していたかと聞かれると疑問が残る。
イギリスで仲良くなった女子中高生はKawaiiを表すcuteより、かっこいいを表すcoolを求めているようにも感じた。

話は変わり、「かわいい」の代表格、赤ちゃんのかわいさについて考えてみたい。
赤ちゃんや動物の「かわいい」を調べたことで有名な人物が、動物行動学者のコンラート=ローレンツである。
ヒトだけでなくイヌやトリなど多くの生物に共通する赤ちゃんの特徴を調べ、これらを「ベビースキーマ」と名付けた。

この特徴とは
「体に対する頭の大きさの割合が大きい」
「額が大きい」
「目が大きく丸くて顔の中の低い位置にある」
「鼻と口が小さく頬がふくらんでいる」
「体がふっくらして手足が短くずんぐりしている」
「動作がぎこちない」というものだ。

人間の赤ちゃんは、生まれてすぐはゴハンも食べれない。喋れないし、歩けない。未熟な状態で生まれてくるので、1人では生きられない。
このベビースキーマの特徴により、必然的に大人に愛情行動を引き起こして、世話や保護を受けることができるようになる。

このベビースキーマという特徴を踏まえながら、橋本環奈さんやちいかわのキャラクターを見てみると・・・
・目が大きく丸い。
・鼻と口が小さく頬がふくらんでいる

という点が当てはまる。

またキティちゃんやドラえもんなど日本の人気のキャラクターに関しても上記に加えて
・体に対する頭の大きさの割合が大きい
・体がふっくらして手足が短くずんぐりしている

という特徴が該当。

あと、先述のランキングで浜辺美波さんの「運動音痴がかわいい」という点もベビースキーマの
動作がぎこちない
という点が当てはまっている。

これは、平成31年度東京大学学部入学式での東京大学 上野千鶴子教授の祝辞の一部である。

女子は子どものときから「かわいい」ことを期待されます。
ところで「かわいい」とはどんな価値でしょうか?

愛される、選ばれる、守ってもらえる価値には、
相手を絶対におびやかさないという保証が含まれています。

東京大学 上野千鶴子教授平成31年度東京大学学部入学式 祝辞より一部抜粋

上野教授は、社会が女性にかわいさを求めるということは、「男性の地位をおびやかさない」という意味がこめられていると言う。

女性は男性より一歩ひくもの
女性は出すぎてはならない
女性は男性のサポート役
こういう価値観は、女性にかわいさを求める裏側に隠された「社会の本音」なのだ。

このように、女性にかわいさを求めすぎる風潮が
日本のジェンダーギャップ指数146カ国中125位(世界経済フォーラム「Global Gender Gap Report」2023年版)の低さに現れているように感じる。
「かわいさ」そのものを否定するつもりはない。
ただ「自立したい」と望む女性にも、
社会が「かわいさ」と押し付けすぎるのは、女性に生きづらさを与えているのではないのだろうか。
また、あまりに幼いときから女子に可愛さを求めすぎることも同様だ。

私たち日本人が世の女性に求める「かわいさ」を再考すべきかもしれない。

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