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日本政府より先に「女性比率3割」を実現します! ad:tech tokyoがようやく目標達成するまでの軌跡

政府が掲げていた「2020年までに女性管理職の割合を30%にする」という目標の実現は困難であるというニュースが話題になっています。


帝国データバンクが2万3680社に実施した調査によると有効回答企業における女性管理職はわずか7.8%。このままコロナ禍の影響による景気減退が進めば人件費節減でそもそもの管理職ポストが減り、男女問わず新たに管理職に就くのが難しくなりそうな気配です。そこで今回は私がマーケティング業界のビジネスカンファレンス「ad:tech tokyo」主催者として、「イベントの登壇者の女性比率30%超えを目指す」という目標に取り組んで来て得た経験と失敗のお話をします。

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この「ad:tech tokyo」とは、広告やマーケティング業界におけるデジタル化についてのカンファレンスで毎年1万人を超える来場者に向けて約70ステージのトークセッションプログラムを提供しているイベントです。

ad:tech tokyo とは?
〜1万4,000人参加! アジア最大級のマーケティングカンファレンス〜

アドテックは世界の主要都市で開催されるマーケティング・カンファレンス。事業会社、エージェンシー、ソリューションプロバイダー、メディアなど、各ジャンルのトップランナーが大集結。日本開催は、2020年で12回目を迎え、アジアで最大規模の国際マーケティングカンファレンスに成長しました。2019年はカンファレンス来場者と海外来場者が過去最高を記録。アドテクノロジーにとどまらず、それに関連するマーケティングマネジメントも包括し、常に最先端の情報を届けます。
※2020年10月29日・30日開催は、新型コロナの影響を加味し、ハイブリッド開催といたします(追記補足)

70ステージ以上の登壇者の総計は250名程度!そのうち30%を女性の登壇者にするダイバーシティ目標を2年前から掲げてきました。なぜその目標を掲げたかというと……

理由1
弊社がフランス系資本の企業のため株主から「欧米では一般化しているダイバーシティの観点が欠けているのはおかしい」と指摘された
理由2
広告、マーケティング業界は女性の従事者が比較的多く、来場者も40%が女性であったため女性のキーパーソン探しには困らないだろうと考えられた

の主に2点からです。株主から指摘された時点での登壇者の女性比率はわずか6%に留まっていたため、その指摘はもっともでした。個人的にも当時の登壇者比率に対して危機感があった上に理由2のように女性登壇者が増やせる土壌が既にあると踏んだので「女性登壇者を30%に増やすのはいける!」と自信満々でした。まさに外圧の活用ですね。

しかし、目標を最初に掲げた昨年は、ad:tech tokyoは女性の登壇者比率を30%以上にすることができませんでした。そしてようやく今年の開催においては、8月27日現在で女性登壇者比率30%超の達成が確実となりました。1年目から目標達成は余裕だろうと思っていたあの頃の自分に伝えたい、「めちゃめちゃ苦労するよ」と。

苦労したポイントは3つ。まず1つ目は「立候補者がおらず発掘が必要」。ad:tech Tokyoの登壇者選出ルートは2つあります。「一般公募」と「推薦」です。一般公募ではイベント事務局と業界のキーパーソンに参画していただくアドバイザリーボードメンバーによって発表されるプログラムを見て「このテーマなら実践者として語れる!」と立候補してくださった方の中から登壇者全体の半数以上を選定するのですが、この応募者の9割が男性で女性からの応募はわずか。イベント来場者40%分の女性は一体どこへ?というわけで、「推薦」のために登壇者になってもらいたい女性キーパーソンの発掘を行います。業界向けメディアで担当者インタビューを受けていた方、アドバイザリーボードメンバーや決定済みの登壇者から「この人がやった施策面白いよ」と紹介していただいた方など、発掘自体は時間と人員を割けばたくさんの登壇者の候補が見つかっていきます。

ここで、2つ目の壁「説得がすごく大変」が立ちはだかりました。ad:tech tokyoの舞台で是非とも多くの人に考え方や実践した仕事の話をしてほしいと思う女性のキーパーソンを発掘して、登壇スカウトしに行くととにかく皆さん登壇を躊躇なさる。「私なんてまだまだ半人前」「人にお話できるレベルにない」と登壇したがらない方が多く、説得作業に非常に時間と手間がかかりました。男性をスカウトしに行く場合は先方がノリノリなことが多かったのでギャップを感じました。

この2つの苦労をしながらも昨年は登壇者の女性比率30%超をキープしながら選出作業が進んでいきました。しかし!結果は目標未達、女性登壇者比率28%という結果でした。これが最後の苦労……ではなく失敗、「進捗管理不十分」でした。数値目標達成のための管理、これは基本中の基本だというのに女性登壇者比率30%超えが見えてきて数値をあまり気にしなくなり始め出してくると、「このプログラムの登壇者の最後の1人は誰にする?」となった時に選出作業効率だけを重視してしまい発掘・説得の手間がかからない人、すなわち既に業界キーパーソンとして有名になっている男性たちを選んでしまったのです。もちろん地位を確立している彼らが提供してくださったコンテンツは素晴らしいものです。私たちが選出している登壇者は性別に関係なく素敵な知見を提供してくださる人々です。それは自信を持って言えます。だからこそ、参加者の男女比率と登壇者の男女比率の乖離をなくすことを目標にしていたはずなのに最後に失敗してしまいました。そこで今年は最後の最後まで男女比率の進捗を管理する担当者を選任し、徹底的にこだわることで、ようやく全プログラムの登壇者の女性比率を30%以上にすることにできました。

ここまできましたのであとは事務局として登壇者の皆さんの全力が出せるようバックアップの準備をするだけです。

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さて、ずっと男女比率、男女比率と繰り返してきましたが、ダイバーシティとは性別(それも男と女の2つだけ)のバランスを取ればいいというものではありません。業界やコミュニティによって意識しなければいけないものは違います。私たちのイベントの場合は年齢や参加者の国籍比率はもともと偏りがなかったので、偏っていた登壇者の男女比率にこだわったというだけです。3~4人しか登壇者がいないイベントの時は分母が少なすぎるので比率も何もという感じですが、10人超えたらダイバーシティの観点を意識するようにしています。何しろ色んな視点から議論したほうが私たちが提供しているディスカッションというコンテンツは盛り上がりますから。

やっと達成した「イベントの登壇者の女性比率30%超えを目指す」という目標、何かの男女比率を変えていくことがいかに大変であるかを身をもって感じました。だからこそ意味があるし広げていきたいです。

また、来年は、自ら登壇したいと手を挙げる女性を増やすことが目標にいれたいと思います。なぜなら、今回のad:tech tokyoに登壇する方々はジェンター問わず素晴らしい人たちばかり。だからこそ、参加する女性には、自分の実績やキャリアに自信を持ってもらい、その視座をほかの方々と共有することで役立ちたいと思ってもらいたいと思っています。



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