山で過ごす年末年始|八ヶ岳・高見石小屋
年末年始を山小屋で過ごしてみたい。
いつもと違うお正月の過ごし方を求めて選んだのが、八ヶ岳にある高見石小屋だ。八ヶ岳にある山小屋は、有人で通年営業しているところが多くある。高見石小屋もそのひとつだ。
目的地へ行くための登山口は様々あるけれど、冬季は使える登山口が縮小される。私たちは渋の湯をスタート地点として、途中に黒百合ヒュッテで昼食をとり、宿泊地の高見石小屋へいくことにした。
渋の湯をスタート
今年は積雪が少ないと聞いていた。案の定、登山口には被る程度の雪しかなく、到着したときには雪ではなく雨が降っていた。これは雪もご来光も期待できないかもしれない。
「ま、今回は山小屋がメインだからね!」と友達と話しながら、予定通り目的地を目指すことにした。
八ヶ岳は、やっぱり美しい。雪が少ない分、雪の隙間から苔がちらちらと顔を出している。
苔むした世界と、うねりのある木々。
しんと静まり返った空間。
あぁ、八ヶ岳に来たんだなぁと思う。
あられが降ったりやんだりしつつも、登り進めていくにつれて、その景色が変わっていった。きゅっ、きゅっ。踏みしめるときの触感から、雪に厚みが増しているのがわかった。
次第に空の様子が変わってきた。あられが止み、ひゅうひゅうと雪が舞っている。これは、稜線に出たら爆風にさらされるだろうなぁ。樹林帯で、風から守られている安心感の中を歩く。
寒さが増してきた。脱いでいた手袋を、ささっと履く。手持ちの水は、まだ凍っていない。ペットボトルなんかに水を入れていると、カチッと凍ってしまうことが常である。けれど、今日は全くその様子はない。確かに寒いけれど、それでも耐えられるくらいの寒さだった。
黒百合ヒュッテを越えて
ちょうど12時頃に、黒百合ヒュッテに到着。室内で暖を取らせてもらうことにした。
1時間ほどたっぷり休憩して、再び雪の世界へ。体がしっかり温まった後だったので、小屋に入る前よりも数倍寒く感じた。
「さぶぅ…!」
歩き出すのが億劫になりながらも、目的地に行かなければならないので、頑張って歩く。あと1時間半ほど。ここからさらに、雪深くなる。
木の枝に樹氷がまとわりつき、姿を変えている。小枝に細かく雪がまぶされている姿が、かわいらしくも見える。
新しく降り積もった雪は、さらさらとした食感。登山道脇に転がる丸太に、こんもりとした雪が積もっている。これは‥!
どう見ても、ブッシュドノエルにしか見えない。雪は、粉砂糖か。私は、いつの間にか、お菓子の世界に迷いこんでしまったのか。
再会を、高見石で
目的地、高見石小屋に到着した。ランプで灯された室内は薄暗く、目が慣れるまでに少し時間がかかった。
小屋の中は、年越しを満喫しに来た登山客でいっぱいだった。ガヤガヤとした室内。真ん中には、大きな薪ストーブがあり、メラメラと炎が燃えている。温かで、にぎやかな時間になりそうだ。
なんと今回は、驚いて声が枯れるほど、たくさんの山友達との再会があった。どの人とも、数年ぶりの再会ばかり。
たまたま同じ日に泊まりに来ていた方、山小屋で働いている方、登山道でたまたますれ違った方‥‥。同じ日の同じ瞬間に出逢えるなんて、出逢わせてもらったとしか言いようがないと思った。
再会が嬉しすぎて、嬉しすぎて。
お祭り騒ぎのような時間。
山を続けていてよかったなぁと思った。
躍動感のある年
『一年の計は元旦にあり』とか『三が日は一年の雛形だ』などの言葉を聞いたことがある。
もしそれを信じるのだとしたら、今年は「再会」がキーワードになるのでは、という予感がする。「人との再会」はもちろん、「やりたかったこと」や「疑問だったことの答え」との再会も含まれる気がする。
点と点が線になる。
そして、立体感を帯びていく。
あの山とこの山を繋いだら、山脈だったのね、というような。そんなイメージ。「繋がった!」という、アハ体験がたくさんありそう。
なんだか、大地の鼓動のような、躍動を感じる。
今までの積み重ねが実を結ぶ。
躍動感のある一年になりそうだ。