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涙雨の後味 | 訪問看護卒業しました

訪問看護師を、卒業


あっという間の3年間だった。

3年前の夏、
病院の看護師を辞めて
訪問看護の世界に飛び込んだ。

20代の訪問看護師は、
日本全国128万人いる看護師のうちの
わずか1〜2%程度だそうだ。

だから私が就職した当初は
それはそれは、丁寧に育ててもらった。

初めての体験ばかりで、
右も左もわからぬ状態。
先輩たちの後をよちよちとついて行った。

見て、感じて、技を盗んで。
「お家での看護」を学んで、
自分のものにしていった。

先輩たちからは、
結構甘やかされていたと思う。

多分もうひとりで走れるのに、
いつまでも自転車の補助輪をつけて
走っているみたいだった。

あれ?

ふと気が付くと、
いつの間にか、補助輪は外れていた。

バレないように、そおっとそおっと
補助輪を外してくれていたみたいだ。

個性豊かな子ども達が教えてくれたこと


この3年間で関わってきた多くの子ども達。

個性豊かで、みんなキャラが濃かった。

例え自分で
呼吸が自分で出来なかったとしても、
筋肉が上手に動かせなかったとしても、
生まれながらに手足が曲がっていたとしても、
心臓の造りを理由に、
いつも顔が真っ青だったとしても、
途中で大きな病気が見つかったとしても‥‥

彼らはハンディを
ハンディだと思って生きていない。

今の頭の中には、
そんな概念すらない。

今を楽しく生きる。
目の前の壁は、知恵を絞って乗り越える。

真っ直ぐな瞳は、
近くを見据えているようで、
遠く遠くを見据えているようにも感じた。

なぜそんなにも
今に真っ直ぐになれるのか。

それはその壁も、その先も
楽しいハズだと信じて止まないからだろう。

いつまでも、うじうじメソメソしない。
疲れたなら、サッと眠る。
なぜならその方が
心と体の回復が早いと
わかっているからだと思う。

そんな純粋でシンプルな生き方に
小さな感動を覚える毎日だった。

子どもたちとお腹を抱えて笑い合い、
時にはケンカして、仲直りした。
「ごめんね」と言い合えたら、
次の瞬間また一緒に遊ぶことができた。

親御さんと喜びを共有し合い、
悲しみを分かち合った。

時には分かり合えないこともあったけど
対話を諦めずに、また歩み寄った。

そうしたら新しく深い絆が生まれた。
それが、「明日も頑張ろう」と
思える希望になった。

患者さん、家族、スタッフと

世代を越えて
涙を分かち合った。

笑いを共有し合った。

患者さんも、家族も、医療者も
みんながみんな
ひとりの力ではどうにもならなかったから

支え合った。

「チーム医療」なんて言われるけれど、
チームは作るのではなく、
自然と生まれるものだと知った。

そして誰かに比重がかかりすぎると
バランスを崩すことも知った。

誰かが真ん中に居るわけではなく、
みんなで手を繋いで
大きな安定した輪っかになることが
自然な在り方なのだと思った。

そんな現場にいた私は、
小児の訪問看護に終止符を打つことにした。


更なる「自然な在り方」へ戻るために


頭では「続けたい」、
体は「不調」、心は「休みたい」。

あまりにも複雑で不自然な在り方で
駆け抜け過ぎた。

欲張りにやり過ぎたのかと
自分を責めたこともあったけれど
今はそれが理由ではないように思う。

全てが純粋に楽しかったし、
好きでやりたいことだった。

でも、今までの生き方に
カイゼンが必要なのは確かだった。

純粋にシンプルに生きていいと
子ども達から教えてもらったのならば、
その通りに生きていいのではないか。

そうして自分と向き合う数ヶ月を経て、
現場を離れる決意ができた。

最後まで涙は止まらなかったけれど、
悔いはない。精一杯やりました。

いつまでも悲しみの涙の雨を
降らせているわけにもいかないのだ。

これから描く未来


私の強みと弱みとがこの数ヶ月で
改めて浮き彫りになった。

そうして、
ひとりではできないことばかりだ
と知ったから、

今まで以上に
自然と支え合えるような仲間との出会いが
この先待っている気がする。

大事にしたいことをまもりながら
細々と、のびのびと、生きていく。

仕事ばかりに比重がかかりすぎていたけれど
もう少し全体的にバランスよく生きていく。

今後のビジョンは、
シンプルにそんな感じに描いている。

これからどうするのかと
問われることも多いけれど、

そんなことわからない。

自分の思考の枠の中だけで
これからの可能性を考えるなんて‥。
そこに限界があることくらい
もう私は大人だからそれくらいわかる。

どう足掻いたとしても
自分の可能性は、信じることしかできない。

だから今やりたいこと、できることを
やるだけだと私は思う。

看護は人間を成長させてくれる場。
だから別の形で
関わり続けたいと思います。

「別れるのが寂しい。」
「看護師は天職だと思う。」
「たくさん甘えていました。ありがとう。」

最後の別れの挨拶で、親御さんたちから
様々な言葉をかけてもらった。
子ども達とはいつもと変わらぬような感じで
お別れをしてくれた。

一つひとつの言葉が嬉しくて、
涙をこらえることができなかった。

昔、ある先輩がこんなことを言ってくれた。
「あなたの名前を呼んでくれているときは、
ちゃんと看護が届いている証拠だよ」と。

ちゃんと看護が届いていたんだな。
そのことを確信できただけでも
今までの看護に、自信がもてた。

涙雨の後は、甘くて酸っぱくてほろ苦い。
でもそっと背中を押してくれるような
門出の味だ。

「人生の優先席に、
自分を置いてくださいね。」

最後に上司からもらった宝物みたいな言葉。

私はちゃんと、前を向く。

今までの3年間に感謝でいっぱい!
これからに乾杯!

これからも頑張ります。


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