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提訴時記者会見 原告コメント

以下は、2023年7月に、環境省(国)を相手として、長時間労働等によって発症した鬱病の損害賠償請求のための提訴時記者会見でのコメントです。


1.業務の大変さと退職に至った理由

 国家公務員の長時間労働の主な要因として、国会関係の対応についてよく取り上げられますが、福島地方環境事務所での私の担当業務のなかには、国会関係の対応はほとんどありませんでした。

しかし、現地採用職員と本省からのプロパー職員との業務遂行能力や責任範囲が異なることが主な原因となり、日常的に長時間労働をせざるを得ない状況でした。

当時は残業代も全額は支給されませんでしたが、その中でもただただ被災地のために、誠実に仕事に取り組んできたつもりです(なお、未支給残業代については、時効により請求しておりません。)。

 当時は、プロパー職員であるとはいえ、社会人2年目だったこともあり、中には重責を感じる業務もありましたが、その一方で大きなやりがいを感じ、周りの方々にも恵まれ、かけがいのない経験ができたものと思っております。それでも退職せざるを得ない状況になってしまったのは、長時間労働そのものもありますが、心身の異変を感じたときに組織としての支援を受けられなかったのが大きな原因だと考えています。自分でできることはすべてやったつもりですが解決せず、あとは管理側の対応に頼るしかない状況で、十分な対応を取っていただけなかったことで追い詰められてしまいました。

2.発病して以降の状況

 発病後、約4か月の休職ののち復職しましたが、心身ともに健康な状態になることはなく、継続的に出勤ができる状態ではありませんでした。職場の周りの人たちは親身になってくれましたが、組織としての対応には失望することが続き、自分の命を守るためには退職以外に手段がありませんでした。

 退職後、申請中の公務災害制度による金銭的支援を受けられる見通しが全く立たない中でも、通院を含めた生活は続くため、収入を得る必要があり、できる範囲で就労していましたが、やはり定期的な就労に耐えられる体調ではなく、たびたびお休みを取ることとなってしまいました。ご理解、ご対応いただいた会社の皆様には本当に感謝しております。

現在は、通院、投薬を続けつつ、大小の波を繰り返しながら少しずつ回復しておりますが、結果として、社会人生活のうち半分以上の期間をこのような形で過ごすこととなってしまいました。

3.被告国に対する思い

 新社会人として様々な面で大変お世話になった組織に対し、提訴という手段を選ばざるを得なかったことを非常に残念に思います。また、本件の対応により、現職員の方々の手を煩わせること自体も本意ではありません。しかしながら、度重なる不誠実な対応により、この状態を解決するには提訴に踏み切るしかないという思いに至りました。

 産業医との面談内容が本省から担当部署へ共有されず全く対応が行われなかったこと、公務災害申請から認定まで1年半以上かかった上、その間主治医への聞き取り等が行われた形跡がないこと、公務災害認定後も申請書の書き方等の簡単な質問への返答まで数か月かかること等、不誠実と捉えられても仕方ない対応は数え上げればきりがありません。

 近年、官僚の長時間労働については、様々な取組により少しずつ改善されているように思いますが、それでも世の中の急激な変化により想定外の事態が起きる中、働く人の最後のセーフティーネットとなるべき公務災害制度が、このような不誠実な運営のされ方をしている状態では、働く人は安心できず、力を十分に発揮できないと思います。

4.会見(公開)を選んだ理由

 一般的に、官僚の劣悪な労働環境については、主に国会対応などの組織外の原因がよく挙げられており、一部は事実だと思いますが、それ以前に組織内部の規律や意識に根本的な問題があることを広く訴えたいと考えて、本件について公開することといたしました。

 まだまだ中途採用者が少なく、新卒からずっと官僚という人が多いため、他社のスタンダードを知らず、不満に思っても諦めるしかないというマインドが染みついてしまっている部分があると思います。

今後人材の流動性を上げ、中途採用も増やすといった方針が示されておりますが、多様な人材が安心して働ける環境の整備のためには、働く人を大切にする意識の醸成と、その意識に伴った組織運営が必要と考えます。

本件に関する議論がその実現に向けた一助となり、今まで涙を呑んできた先輩、同期、後輩の希望となることを切に願います。

以上

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