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あの漫画のラストが忘れられない #読書感想文

忘れられない本は、どれもラストが衝撃的だ。大どんでん返しやおぞましい真実、やさしい気持ちになるハッピーエンド、暗い気持ちになる結末……。いいラストは、本を閉じても心の中には物語の続きが待っている、そんな名残惜しさを感じさせてくれる。

でもこの漫画のラストは「名残惜しさ」とはちょっと違う。何が起きたのか分からなくて、ラストの場面を受け入れるまで3度見くらいした。思わず「えっ?」と声が出るほどビックリした。

驚きが去ると、今度は怖くなる。ラストの意味を考えると、恐ろしい結末が浮かぶからだ。でも、答えは分からない。分からないから考えて、ますます怖くなる。。たいてい曖昧なラストは嫌だけど、この漫画のラストは読む人をのめり込ませる力がある。賛否両論あるけど、私はすごいラストだと感じた。

読んだのは「デトロイト・メタル・シティ」という少年漫画だ。「このマンガがすごい!2007」オトコ編1位に選ばれ、2008年には松山ケンイチ主演で映画化もされている。

主人公は、大人気のデスメタルバンド「デトロイト・メタル・シティ(DMC)」のヴォーカルであるヨハネ・クラウザーII世だ。白塗りのメイクで額には「殺」の文字、長い金髪、悪魔的な曲で観客を熱狂させる、まさにメタルバンドの人だ。でもクラウザーの正体は、ポップミュージック歌手を夢見る、デスメタルとは正反対のおかっぱ男・根岸なのだ!本人は「デスメタルなんてやりたくない…」と思っている。それでも根岸のクズな人間性と秘めたメタルの才能により、数々の伝説を生み出し、ファンはDMCにますます熱狂する。そのため根岸もメタルを辞めるに辞められない。

この漫画の面白さは「ギャップ」にある。普段は「甘い恋人」などのオリジナルソングを下北沢で路上ライブをしているが、根岸の歌は全く観客に受け入れられない。ひどいときは卵やゴミを投げつけられるし、プロからは「お遊戯」と一蹴される。一方、デトロイトメタルシティでは、悪魔のような曲とギターで観客を熱狂させ、天才的なパフォーマンスやアドリブでライブを盛り上げる。ファンはクラウザーを崇拝するあまり、クラウザーの言動すべてを悪魔的にとらえてしまい、本人には身に覚えのないDMCの伝説がいくつも生まれるほど。このギャップやファンの妄信が面白くて、最終話まで一気に読んでしまった。

ギャグ要素が面白かった分、あのラストがやっぱり忘れられない。最初から最後まで、読む人を夢中にさせてくれる漫画だった。外出自粛でヒマな方には、ぜひデトロイトメタルシティを最終話まで読んで、あのラストを味わってほしい。


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