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中途半端は「本気」の伏線

いやぁ、「伏線」って本当に興奮する。

たとえば『進撃の巨人』は、伏線がすごい。読み飛ばしてしまうほどの平凡なシーンに、実はすっごく重要な意味が隠されている。突如出現した巨人の謎、登場人物たちの抱えた運命……。完結する何年も前から伏線が張られていたのだと知ったとき、カンナで木材を削ったような清々しさが味わえた。伏線最高、伏線バンザイ。伏線との出会いは、わたしを幸せにしてくれる。

そんな伏線に出会えるのは、物語だけではない。
つい最近、10年超のとある伏線を回収した。

私は熱中するのが苦手だった。中学の頃はジャニーズにはまる友だちが多く、わたしもカラオケで歌えるよう曲は覚えた。でもコンサートに行くほど好きにならなかった。高校時代にハマったバンドも、いまではたまーにYoutubeで超有名ソングを聞く程度。大学時代に所属したサークルは月2回程度参加するだけで、週末は基本バイト。どれも程よく好きで、それなりに楽しむだけ。「好きな芸能人は?」「趣味は?」「最近はまってることは?」こんな質問が大の苦手だった。そう聞かれても、なんて答えていいかわからないから。。

良くいえば「浅く広く」、悪くいえば「熱中できないタイプ」。なにかに興味を持っても、少し調べてやめてしまう。やってみたとしても、しばらくすれば飽きる。その繰り返し。「推し」なんて言葉は、遥か遠くにいる。何か1つのものに愛情を注げない自分に、ずっとコンプレックスを持ってきた。

変わったのは、27歳になってから。

HUNTER×HUNTER(アニメ)を知ってしまった。連載再開してから見ようと思っていたけど、つい気になって見始めた。これが、とんっっでもなくおもしろい。12歳のゴンとキルアが困難に立ち向かいながら成長していく過程。奇術師ヒソカや盗賊集団である幻影旅団の強さ。そして凶暴アリ・キメラアントとの壮絶な戦い。。ピーク時には、仕事終わりに6話以上みてしまうほどハマっていた。アニメを見終わった後はマンガを全巻購入し、Twitterの「#連載再開」にドキマギする生活となった。

さらに、弱虫ペダルの御堂筋翔にも出会ってしまった。弱虫ペダルは高校の男子ロードレースのインターハイが舞台の漫画で、御堂筋は京都代表の京都伏見高校のエース。でかい黒目にヒョロヒョロの身体、「キモ」が口癖で、最初はものすごく気持ち悪いキャラだと思った。性格も最悪だ。ロードレースの試合中、ライバルに「君の母親が倒れたらしくて係員が探してた」と嘘をついて動揺させたり、先輩にも自分を君付けで呼ぶように命令する。完全に悪役ポジションだ。
でも実際は、ものすごく純粋でストイック。小学生の頃は周りにバカにされるほど運動音痴だったけど、病弱の母の笑顔が見たくて自転車に打ち込む。母が亡くなった後もめちゃくちゃ練習して、ひらすら勝利にこだわる。そのストイックさで実力をつけ、1年生のときからチームのエースとして活躍する。他人に厳しいけど、それ以上に自分に厳しい。そんな御堂筋の純粋さを大きな心で受け止める、2個上のキャプテン・石垣光太郎との組み合わせが本当にいい。最近ではほぼ毎日Twitterで検索するほど大好きだ。

ようやく、心から「好き」だと思えるものが見つかった。他人の愛と比べたら小さくても、好きは好きだ。大好きなものに出会えた人生は最高に楽しい。

思い返してみれば、全部「伏線」だったのかもしれない。

気になるアイドルやアーティスト、お笑い芸人、趣味候補、アニメやマンガなど……。夢中になりきれず、たくさんのものが中途半端なまま終わってきた。自分の人生には不要だったのだと思っていた。でも実際は、自分が夢中になれるものにつながる伏線だったんじゃないか??

数々の中途半端な出会いがなければ、いま大好きなモノたちには出会えなかったかもしれない。ハマらなかったからこそ、いまの自分の幸せがある。中途半端は、決して無駄じゃなかったのだ。


夢中になれるものがない。推しがいない。語れるものが思い浮かばない。
こんなコンプレックスを10年以上抱えていきてきた。きっと似たような悩みを持つ人もいるだろう。

でも大丈夫。ハマらず消えたものたちは、夢中への「伏線」となる。興味関心に素直に生きていけば、いつか伏線を回収する日がやってくるはずだ。

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