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泣き散らかしたおまえがなにを言う〜「月の満ち欠け」〜映画の感想

* この文章には激しくネタバレがあります。映画を観る前の方はご注意ください

小説の映画化されたものを見るときに、自分に言い聞かせていることがあります。
自分は小説の文章を自分の頭の中で組み立てている。人も同じように頭の中で組み立ててゆく。
だから、けして自分のイメージどおりの映画化というのはありえない。
映像化というのは妄想を具現化するものだから、ちがうのは当たり前。
だから「違うというのを理由に」その映画をに違和感を抱いたりするのは、まったくオカド違いの感想なのだと。

そして、万一、その違和感を消化できなかったとしても、それに対して同意を求めるべきではない。
それでも、その違和感をどこかで喋りたいのであれば、それは「自分のページで喋る」しかない。
自分のページで…
喋るしかないものをこれから書きます。
前置きが長くなってしまいました。

映画が低評価であるということではありません。
その証拠に、というか、もう、こらえきれずに何度も泣きました。
隣のおねえさんも激泣きしていました。
知らないもの同士が同じシーンに涙あふれ、同時に鼻をすする。
これが映画館という空間の醍醐味なのだと感じました。

ストリーは、複雑な原作を整理したとはいえ、まったく原作のテイストで、とてもわかりやすく、そして「ああ! こうなのね!」と思う部分も多くありました。

子役の瑠璃がよかったです。
押さえ具合と、押さえた中で言うセリフが。
お父さんである小山内堅に「お父さんとお母さんの子供でよかった」というところは本当に泣きました。
小山内さんがまだ、生まれ変わったこの子が自分の子供だとは信じていないにもかかわらずです。

三角哲彦役の目黒蓮さんは本当にぴったりで、演技がとても素敵でした。瑠璃との逢瀬も、瑠璃の元夫正木の狂気も。
どれも、やりすぎず、抑えた映像で、少しずつ、全体が明らかになってくる感じがすごくよかったです。
そして緑坂ゆい役の伊藤沙莉が素敵でした。
高校時代の瑠璃とも同級で、生まれ変わった瑠璃の母親でもある緑坂ゆい。
彼女は一貫して親友の言う「生まれ変わり」の話を「あり得ないけれど信じて」いてくれてます。
「あり得ないものを信じる」
物語の真骨頂としてのその部分を伊藤沙莉が担っているなと思いました。

とにかく、いろんな気持ちが胸に迫って泣きました。
いい映画だと思いました。
本当に見てよかったと思いました。

ラスト間近の瑠璃と三角の再会シーンを見るまでは…….

この部分に関してだけ言わせてください。

何度も生まれ変わった小学生の瑠璃と中年になった三角哲彦の再会のシーンです。

この部分は原作でも「ようやく再会できた」というあたりしか描かれていません。
このふたりのシーンは異形です。
小学生と中年、いくらなんでも不自然すぎる。
だけども、この異形をなんとか描いてほしかったのです。
迷子の子供と父親に見えてもいい。父親に見える三角哲彦が泣きながら瑠璃を頬ずりしてもいい。

いや、どうしてもそういう形を描かないと決めているのなら、それも仕方ないことだと思います。

だけど、1代目正木瑠璃(有村架純)と若い頃の三角哲彦(目黒蓮)の抱擁シーンでここを代用するのは、どうよ?!と思います。
いくらなんでもそれは、かなりお花畑すぎると思います。



という部分だけ、どうしても納得できなかったけれど。
それでも、とてもとても泣きました。
ひとりひとりの丁寧な演技で「信じてほしい生まれ変わり」と「どうしても信じられない人」の通じたり通じなかったりの部分がとても胸に迫りました。

最後の「もうひとりの生まれ変わり」のシーンもとてもよかったです。

というわけで、「泣き散らかしたお前がなにを言う」という不満もありましたが、この映画は、見れて本当によかったと思いました。

あと、蛇足ですが、あまりにも気持ちが高まりすぎて「目黒蓮が若い頃の佐藤正午さんに見えた」というのは、もうほんと自分でも馬鹿げていると思います。
背格好は似てるとは思いますが。



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