見出し画像

佐藤正午さん「ファンならではのネタ」を私に語らせてください その3「比類なき小さな」伝説のサイン会

佐藤正午さんの「伝説のサイン会」というものがあります。伝説なので遭遇した人は数人しかいません。書店員さんを入れて通算5名といったところか。「ちょっとした行き違いで行われた、比類なき小さなサイン会」として、ロングインタビューなどにもチラチラ登場するのだけど、その詳細は明らかではありません。

でも、実はわたし、その場所にいたんです! ええ、ええ、いたんです。ただそれだけなんですけれど。その時の思い出を描きたいと思います。

それでは、いきます。

小さなサイン会が行われたのは佐世保駅からタクシーで2000円ほど走ったところでした。松浦鉄道の駅の近くにあるモールの中の書店。2014年の11月の末。その日、正午先生は出版社の方と一緒に佐世保の書店への挨拶まわりの予定でした。ところが、どこでどう話が転がったのか、挨拶に行くだけの予定だった某書店に「佐藤正午先生来たる!サイン会開催!」という告知が。

数日前に偶然書店の入り口で告知を見た佐世保の友人が知らせてくれました。「わたしは仕事で行けないんだけど......」いやいやいやいや、わたしも土曜日だけど午前中は仕事が入って、いや、でも有給余ってたよね、いやいやいやいや。その後ドーパミンの赴くままにホテルも取り、仕事も算段し、佐世保駅からはタクシーが一番早いことを割り出し。そっこーで参加を決めました。

やえちゃん夫婦が来れることがわかった。トミーはお花を手配してくれた。本当にそれは「ただのご挨拶のつもりだった、いきなりの、比類なき小さなサイン会」でした。小さな机に先生がちょこんと座って、そばに小学館の方がいて、わたしとやえちゃん、そして通りすがりの人と書店員さん5人ほどにサインしていただいたでしょうか。わたしと言えば浮かれに浮かれて、ずっとその机の周りにいたような気がします。

「痩せられました?」と聞いたように思う。「一作完成させると痩せるんだよね」。それから時間だけはあったので「最近読んだ本について」お話しした。「わたしは、家に帰ったら、伊坂幸太郎さんの新作と三月のライオンの最新刊が届いている予定です」と言った。「三月のライオンって?」「将棋の漫画です。先崎学さんが解説を書いていて、今はなくなった村山聖さんをモデルにしたような方も登場します(先生が将棋好きなのはリサーチしていた)」「それは読んでみたいな」

それから正午先生は最近読んだ本を二冊紹介してくださった。一冊は忘れてしまった。もう一冊は奥田英朗さんの「ナオミとカナコ」でした。「ナオミとカナコおもしろいよ、読んでみて」って。「ナオミとカナコ」はその後テレビドラマとなって大ヒットしました。

これが「比類なき小さなサイン会」です。やえちゃんともいろんな話をされていたように思う。短いけれど、ふしぎな時間でした。本来のサイン会は著者の本のための時間。それがあまりの小ささにいろんな方向に流れていって、不思議な空間が出来上がっていたように思います。

その日のことを私はこう日記に書いています。「その日、わたしは、コツコツとためていた人生のTポイントをすべて使ってしまった。これからも、また、こんなふうに使える日のために、コツコツと人生のTポイントを貯めていこう」と。

すっかり忘れてた! 初心に戻ろう。人知れず、人の為となることを行ない、人生のTポイントをコツコツためていこう!

*佐藤正午さん「ファンならではのネタを私に語らせてください」バックナンバーはこちらです。



この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?