意外と身近な裁判傍聴の世界

 フジテレビ系で今季、法科大学院を舞台とするドラマ「女神(テミス)の教室~リーガル青春白書」が放送されている。北川景子さん演じる主人公が教員として奮闘する姿に力をもらっている。また、法曹界の在り方や、司法試験のジレンマが描かれている点が興味深い。
 ドラマなどでよく目にする法廷だが、多くの人にとっては実生活の中で縁遠い存在だ。そもそも、裁判をいつでも簡単に傍聴できることを皆さんご存じだろうか。
 私自身、アルバイト先の同僚に誘われ、初めての傍聴を体験した。その模様を徒然と記録したい。

 今回感じたのは、裁判が私たちの暮らしにとても密接で身近なものだということだ。一日に多くの裁判が行われていることがわかり、窃盗などの軽犯罪は思っていたよりも多くあるんだ、そんな印象を持つ。
 札幌高等裁判所に入ると、簡単な手荷物検査があるのみで、あとは自由に法廷に立ち入ることができる。エレベーターホールには掲示板があり、そこにはずらりと当日行われる裁判が掲示されている。多くは1~2時間程度の長さのもので、複数ある部屋で並行して進められ、かつ一日に何件も扱うようだ。
 傍聴はとても簡単だ。予約などは必要なく、各法廷出入り自由だ。とはいえ、実際に入ってみると非常に緊張感がある。法廷内では携帯電話は電源OFFという決まりだが、着信音を鳴らしてしまった人がいて、裁判長から退席を命じられる一幕もあった。

 私が傍聴した2つの裁判は、いずれも若者が窃盗を犯したことについてだった。弁護人・検察官・裁判官から質問を投げかけられた被告人が、それに一つ一つ答えていく。被告人に同情してはならないが、犯罪を犯した背景に家庭環境や生活の苦しさ、少しの気のゆるみなど、様々な事情があったことがわかってくる。
 裁判長は真正面から被告人を見つめ、質問を投げかける。「今後罪を犯さないためにどうするか」という点について、かなり深堀りされていた。
 
 語られる内容は、非常に人間的で、判例にあるような堅苦しい言葉ではない。ド素人の私にも十分理解できる内容だ。面白いといえば不謹慎だが、ここで語られるやり取りからは、生きる難しさと自分の行動を熟考する大切さを感じさせられる。貧困や家庭環境など、犯罪を助長した社会背景についても考えるきっかけになる。
 私たちが生きているこの社会の、すごく身近だけど踏み入れなかったもの。それがこの法廷であり、犯罪を犯すという世界線だと感じる。自分自身の人生や、自分が生きている社会について、もう少し想像力を広げてみる・・・そんなきっかけを与えてくれる裁判傍聴だ。
 


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