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祇園祭の季節に淡い恋心を思い出す

祇園祭。
大学時代を京都で過ごした私は、この夏の大イベントに3度繰り出したことがある。

1度目はクラスメイトの女の子と。
3度目は研究室のメンバーたちと。
そして2度目は今でも時折思い出す大切な思い出。

夫と初めて会った日だ。

大学3回生の5月

部活の飲み会で久しぶりに会った先輩に、不意に話しかけられた。
「ゆきのちゃんのこと、いいなって言ってる研究室の同期がいるんだけど紹介してもいい?」

願ってもいない話だった。
当時の私は彼氏いない歴=年齢の状況を変えなければと焦っていた。
とはいえ、高校生の頃も大学生になってからも男子と話すことは滅多になく、仲良くなる方法などまるでわからなかった。

会ったこともない人と連絡を取り合うのは抵抗があったが、紹介してくれた先輩を信じようと思った。
彼女はどちらかといえば目立たないタイプで、無闇にそういう話をするようには思えなかったから。

それから間もなくして

彼とメール友達になった。当時、修士1年の彼は普段会う同級生たちよりも、ずっと大人に感じた。
メール交換は、1日1往復かそれ以下ぐらいのゆるりとした頻度で続いた。
共通の知人である先輩のこと、部活のこと、テストのこと……内容は忘れたが、長文をやりとりしていたことは覚えている。

それが1ヶ月ほど続いたある日、あの誘いを受けた。
「いっしょに祇園祭にいかない?」

あれからもう8度目の夏になる

毎年のように「祇園祭いく?」と尋ねるが
「混んでるから行かないー」と毎年つれない。

祇園祭を初デートの場所に選んだのは彼なりの背伸びだったのかもしれない、とゲームに興じる背中を愛しく思う。

あの日、待ち合わせ場所へ向かう京阪電車の中で感じていたキツネにつままれたような気持ち。
勇気を出して私を誘ってくれた彼の横顔。その鼻筋。
リュックを背負った肩幅の狭い背中を、レモンかき氷を片手に人混みの中追いかけた記憶。

ずっと忘れない7月の宝物だ。

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