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雑草取りの報酬は大量の大葉根っこ付き

コロナ禍でテレワークになり早3年。

自ら動かなければ、家の中をうろうろするぐらいしか歩かないので、さすがにこれでは体がなまると朝のウォーキングを始めた。

特に夏は昼間よりはちょ~~~っとだけ気温が低い超早朝ウォークにはまり、1時間ほど歩き続ける。

住宅街の間をすたすた歩き、
「この家は金持ちだな~、この家は誰か住んでるのか?いつも窓ががっちりガードされてるぞ。この家のガーデニングはコンセプトがわからんな。この都会に車3台、しかも外車って誰が乗ってるのだ?」

などど、人のうちをさくっとのぞきつつ歩いていたのが、人のあら捜しばかりするので、まったく楽しくない。

毎日同じコースだとさすがに飽きる。ということで、自転車で少し遠出をして川沿いを歩くパターンも増やした。

これが大当たり!やはり何でもひと手間なのだ。
雨が降ったあとの流れのはやい川、逆に水が少なく、雲が映り込むほどおだやかな川、朝からギターの練習をしている青年、ひたすらバッドを振り続ける少年など、目にも心にもやさしくなる風景が広がる。

一番のお楽しみが畑。

種まきから始まり、芽が出て、葉がでて、花が咲き、収穫。
野菜が育つ過程を見るのが楽しくて、つい朝ドラ「らんまん」の万太郎みたいに

「おまんら、強風にも負けずに生きとったな~」

なんて人様の畑の野菜にむかって話しかける始末。

一押しのお気に入りはおばあちゃんが一人でせっせと世話している畑。最近はトマト、オクラ、きゅうり、ピーマン、ナスなどが収穫期で朝から、腰曲げつつ、かごにどんどん収穫していく。

一人で大変だな~といつもしげしげと眺めていた。

野菜の収穫よりも気になっていたのが、春にはちっこい葉っぱだったのがたった数か月の間に巨木と化した大葉。
すでにおばあちゃんの背丈をこえ、四方八方に増えている。
特に肥料をあげたり手をかけなくてもどんどこ育つので、おばあちゃんも手に負えないのだろう。
にしても、いずれは引っこ抜かないといけないのにおばあちゃんやれるのかな?
その前にこの大葉、収穫しているの見たことがないんだけど、いらんのかな?

と思っていた心の声が聞こえたのか、おばあちゃんが話しかけてきた

「あんた、たまに朝散歩している子ね」

おお!やはりいつもしげしげとみていたのに気づいていたか。

「はい、そうです。おばあちゃん、この大葉、収穫しないのかなと思ってみてました」

すると、おばあちゃんが、お!という顔をしながら

「大葉は育ててないのよ。勝手に毎年はえてきちゃうの。お姉ちゃん、食べたいならあげるよ。その代わり根っこから持って行ってくれないかしら」

はい、きました!そうでしょうとも。これ抜くの大変だもの!

ということで、次の日、早速、農作業ルックで大葉をいれる大袋持参で4時半に到着。

「ほんとに来たね。若いのに早起きなんてエライ!」

と褒められたものの、マスクで顔がみえなくてだいぶ若く見えてるんだろうな。あなたと一緒で長く寝ていられないのよ、腰がいたくて、おほほほほと言いたかったが若いままでいることにした。

そんなこんなで、5個くらいあった大葉の大群を一つずつ処理する。四方八方からスコップをさし、少しずつ根っこを持ち上げ、最後は一気に引っこ抜く。5個全部引っこ抜いたあとはさすがに汗だくだった。

この引っこ抜くという作業がハマり、頼まれてもないのに今度は、大き目の雑草をむしり始めたら

「お姉ちゃん、何が楽しくて雑草抜いてるの。助かるけど」

とケタケタ笑うおばあちゃん。

4時半から2時間ほど作業してこの日は終了。引っこ抜いた大葉ひと塊だけもらい自転車にのせて帰る。その姿は、完全に農家のおばちゃんだ。

こちらが戦利品。

あんな小さな葉っぱだったのがこんなぶっとく成長

雨が少なかったのと、太陽がバリバリあたっていたため葉っぱが固く食べられるものはあまりなさそうだけど、中をわけわけすると柔らかそうな大葉が見え隠れする。

この日を境におばあちゃんとすっかり仲良しになり、週2回ほど勝手に雑草を抜きに行く。
野菜は近所の道の駅みたいなところにおろしているとかで、生活の足しにしているのだそう。

「うちで朝ごはん一緒に食べるかい?」

と誘われたこともあったが、一人暮らしのおばあちゃんの家に得体のしれない女が出入りしたいたら

「変な人がうろうろしています」

と通報され、オレオレ詐欺ならぬ、わたしわたし詐欺と間違われても困ると思い、丁重にお断りした。この畑だけの関係でいいのだ。

雑草取りをしているときにもう一つ気になったのがバジル。
これも花が咲き乱れ、もう食べごろすぎである。

「おばあちゃん、バジルは出さないの?」

と聞くと

「昔は、出してたんだけど、あまり売れないからやめちゃったの。けど、バジルもはえてくるのよね、勝手に」

と苦笑い。そうであればと、バジルも引っこ抜いてもらってきた。

これまた相当な量なので、鶏肉のトマト煮バジル添えくらいじゃ消費できず、バジルソースを作ってみた。

おばあちゃんにもおすそ分けし、なんじゃこれ?といわれたので

「パスタにあえたり、チキンに添えたり」

と言ったら、作ってみる!とうれしそうに持ち帰ったので、次に会った時どうだったと聞くと、かなり申し訳なさそうに

「あれな、パスタにあえてみたんだけれどもどうにもこうにも・・・味がしない。単なる葉っぱを食べているようで・・・」

といわれてしまった。そういえば、両親にもバジルソースパスタを作ったとき、さぞかしまずかったんだろう、でも娘の前でそれは言えなかったようで、わたしがトイレに行っている間に緑のパスタから赤いパスタに変わっていた。

おそらくケチャップと粉チーズを足して、即席ナポリタン風にして無理やり食べたのだと思われる。

おばあちゃん、お父さん、お母さん、バジルソースはもう二度とあげないのでご安心を。

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