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かぐや姫とメリーポピンズとラピュタとスターウォーズ

幼稚園から小学校にかけて、日本昔ばなしと世界名作劇場を欠かさずみていた。

小公女セーラのかわいそすぎる状況に号泣し、南の島のフローネになりきって、潮風をほほにうけ、裸足でかけていく自分に憧れ、お父さんに「家族で遭難しよう!」と提案したこともあった。

中でも一番心にぐっさりと響いたのがかぐや姫。

竹から子どもが生まれるわけないし、3か月で姫に成長するなんてどんなエイリアンだよと今でこそ突っ込みどころ満載のお話だが、当時は、羽衣を羽織れば、ふわふわと宙に浮いて、月にいけるとはなんと不思議なことよと子ども心ながら思っていた。

そんなわけで、お母さんのストールを拝借し、月を眺めてはにやにやする日々。自分もかぐや姫のようにいつか月からお迎えがくると思っていたんでしょうね。なんてめでたい子どもだ。

月に召されることを願っているとはつゆ知らず

「あの子、毎日、夜空眺めて、天体に興味があるんじゃない?」

と親バカ全開な両親は、理系の才があるかもと、頼んでもないのに百科事典を買ってくれた。イラストが豊富でなかなか読み応え、学びがいがある百科事典ではあったが、そんな辞典には目もくれず、一番お気に召したのが付属でついていた地球儀。

最初は大きな丸い球をくるくると回して遊ぶ、単なるおもちゃだった。回すだけなのになんだか楽しすぎて、チベットのマニ車ばりにぐるんぐるんと回しまくった。本物のマニ車だったら、小学生にしてだいぶ功徳を得られたんじゃなかろうか。

とあほの一つ覚えのように回して遊んでいたある日、ふと何が書かれているか気になった。そのうち、なぜ一つ一つ変な形なのだとしげしげと見つめるようになった。

いや、そもそもなぜ丸い球体にこんな絵が描かれているのかと気になればなるほど考え込むようになった。
なぜか昔から、すぐになんでなんで?と聞けない子でず~っと悩み続けた。

眉間にしわを寄せて、地球儀を眺めていた娘を心配した母親が放った一言

「うんち出ないの?」

そっちじゃない・・・と小学生ながら突っ込んだ。

なぜうんこを我慢しているような顔をしていたかという理由を話すと、

我々はこの球体の中に住んでいて、この細長い部分に住んでいるんだと。この青い部分は海なんだと。

なんと!なんと!こんな丸いものの中に住んでいるのか?

いや、どういうことだ?海はこぼれないのか?と大パニックを起こした。

そのあたりは詳しく説明してくれず、というかできなかったようで濁された私は、フン詰まり状態が続いた。

空を眺めても、海をみても、丸いとは思えない。しかも、丸いのになんで海の水がこぼれないのかわからない。見上げた空はどこまで続いているのかも気になる。

とだんだんわけがわからなくなった。

そんな大混乱中のある日、雲に座るメリーポピンズに出会ってしまった。

なんと!雲の上で遊びたいとは思っていたが、現実に雲に住む人がいたとは!

しかも、傘を広げて優雅に地上に降りてくるではないか!

ですよね?ですよね!

実は風が強い日に傘をさしていたら、ふわっと体が浮いたことがあって、これは絶対に飛べると思っていたのだ。

単に飛べるとは思ってはおらず、風が強い日にその強風を利用して飛べるんじゃないかと小学生ながらに考えていた私、天才すぎる。

ということで、猛吹雪の中、傘をさして、飛ぶ練習をしていたこともある。結果、何本もの傘の骨が折れただけで、いくら練習しても全く飛ばない・・・

やはり、雲の上にはいけないのか・・・

と落ち込んでいたのもつかの間。小学校高学年ともなれば、雲の上には乗れないことがわかり、あきらめかけたそのとき、今度は天空の城ラピュタに出会ってしまったのだ。

さすがに飛行石なんてものは現実にはないだろうし、そんなものじゃ飛べませんよと現実を受け入れるお年頃。

が、ラピュタを覆う龍の巣は間違いなくある!と確信した。

夏の入道雲の中に確実にやつはいる。

なんだかうれしくなり、また雲の上にいく手段を考え始めた。どうやったらラピュタに行けるかな~と無駄な思考に時間を費やしたとある日。

かわいい娘が無駄に悩みまくっているのをみかねたお父さんがその夢をあっけなく叶えてくれた。

はい、そうです。簡単に雲の上にいける乗り物、飛行機に乗せてくれたのだ。

始めて飛行機に乗ったときの感動は今でも忘れられない。

小窓にこれでもか!と顔をくっつけ、ず~っと窓の外を見続けた。

飛んでるだけでもすごいのに、地上からでは見られない一面真っ白な世界。そして、龍の巣ばりのモックモックの雲たち。

こんな世界があったのかと目をキラキラさせて見ていた。

そのままかぐや姫が住む、月にもいくんだと思い込んで今か今かとその時を待っていたものの、急降下し、あっけなく地上に帰されてしまった。

なぜ娘がしょんぼりしているかわからないお父さん。

「だって、月にいけなかったもん、次は月に行きたい」

といったら

「月?!今は、月に行ける人はいないんだよ」

というじゃないか。

なぜじゃ。なぜいけないのか。

両親お得意の適当な濁しのおかげで、全く気分がはれず、ぶ~たれていたが、時はあっという間に過ぎ去り、「月にいくなんてどこのバカがいった?」とばかりに現実をどんどん受け入れる中学時代。

また、心をゆさぶるものに出会ってしまった。

宇宙を縦横無尽にかけめぐる、ミレニアム・ファルコン。

あのスターウォーズでハンソロとチューバッカがのっていた宇宙船ですよ。

さすがに日本ではそんなものはないとは理解しつつも、アメリカにいけば、宇宙港があって、ファルコンのような宇宙にいける船が待機しているんじゃないかと考えた。

興奮しながら、宇宙港について現実的すぎる友人に話すと

「スペースシャトルはあるけど、宇宙飛行士しか乗れないんじゃない。あんたは無理でしょ。」

と鼻で笑われた。

そこで、よっしゃ!宇宙飛行士になるぞ!

と一念発起して勉強に打ち込み、若田さんと一緒に宇宙ステーションに滞在していたら、ここまでのお話は、成功話として大々的に報道されたはずだが、現実は、宇宙ステーションが通過する時間に空を見上げ、

お!宇宙ステーション通過!

と発見しただけでわっしょいわっしょいしている次第。

一般人は夢のまた夢か~、私が生きている間は宇宙旅行なんてできないんだろうなと漠然と思っていたコロナ禍。

元ZOZOの前澤氏がとうとう宇宙滞在を実現した。

しかも、2023年には月周回渡航予定だという。

一般人でも金さえ出せば宇宙旅行にいける時代が来たのだ。

とはいえ、正真正銘の本物の一般人にはやっぱり夢のまた夢。

でも、夢を持ったっていいじゃないか。

一度は行きたい月、いや宇宙!

そして、「地球は青かった」と実体験をもとに言ってみたいのだ。

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