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危険なホーリーウォーター

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「好きなだけいてください」

写真撮影終了後、僧侶のやさしい言葉に甘えて誰もいない寺院内をただただぶらついた。

1人で平気なのに、扉をあけてくれたちびっこ僧侶が付き添ってくれる。

振り返ると、にこっと笑顔で返してくれるもんだから、意味もなく何度も振り返ってかわいい笑顔をみせてもらった。完全にあやしいおばちゃんだ。

するとボトルに入ったあやしい黄色い水を発見。

指をさしながらこれはなんぞや?といったゼスチャーをすると、またまたにっこり笑いながら、華美な装飾の水差しのようなものにあやしい黄色い水を投入し、持ってきた。

はて?何をするつもりだろう。英語がしゃべれないちびっこ僧侶、ゾンカ語がしゃべれない日本人は、ただただ微笑んで突っ立っているのみ。

すると、水差しを置いて、手のひらを返し、両手をくっつけておねだりみたいなポーズをするではないか。そしてわたしの手をとり、同じようにしろという。

子どもにおねだりポーズをするのは気が引ける・・・と思いつつも、おねだりポーズをすると、手のひらにあやしい黄色い水を並々と注いでくれた。

水がこぼれないように両手をびっちりとあわせ、どうしたもんかともぞもぞしていると、水差しを置き、両手を口にもってきて飲み干すようなしぐさをする。

飲めと?!透明ならまだしも、この黄色い濁った水はあやしすぎる。恐ろしく腸が弱いわたしがこんなあやしげなものを飲んだらトイレに直行するに違いない。

しかし・・・ちびっこが丁寧に注いでくれた水を無碍にすることもできぬ・・・選択の時が迫る・・・

そして、飲み干した。

特に味はしない、ただの水。飲んだからといってすぐにどうこうなるものでもないが、あやしげなものを飲んでしまったという疑惑がはれず、悶々とする。

しかし、キッズ僧侶はうれしそうにしていた。その笑顔を見れただけでいいじゃないか。

その後も別の部屋の祭壇にいくたびに、あやしい水をスタンバイし、手のひらに並々と注ぐキッズ僧侶。断るすべを知らない日本人おばちゃんはただただ注いでもらい一気飲みを繰り返す。嬉しそうにする顔がみたい、ただそれだけのために飲み干す。ホストクラブで推しのためにシャンパンボトルをいれる女性の気持ちがわかるような気がする。

5つめの部屋に入った所で、チュキがやってきた。

あやしい水のことをかくかくしかじかとしゃべりまくると

「それはホーリーウォーターよ。日本でも手水舎あったじゃない。清めの水。ホーリーウォーターをいただいたらちょっと口をつけて残りは頭に振りかけたりするのがセオリーかな」

「え?全部飲んじゃったよ。あの黄色い成分はなに?おなかこわしちゃいそうな色なんだけど」

するとケタケタ笑いながら

「ハーブか何かいれててあの色になっていると思うよ。おなか壊すかどうかはわからないけど、あなたは腸が弱いからね・・・わたしは壊したことないけど」

そりゃ、そうでしょ。ちっちゃいころから怪しいホーリーウォーター飲んでたら慣れているに決まっている。

こちとら不純物を取り除くだけ取り除いたきれいなお水、しかもミネラルウォーターを買って飲んでいるやわな腸。壊しそうな気がしてならない・・・

しかし、せっかくの思い出。ここはひとまず後先考えずに、ホーリーウォーターで清めてもらったと思っておくことにしよう。と、笑顔でキッズ僧侶に別れをつげ、助手席に乗る。

気持ちいい風を感じながら、ゲレプいいな~と思っていると、早速、おなかがゴロゴロしだした。

や、やばい。でも、きれいなトイレじゃないとゆっくりできない。ここは我慢するべし。

しかし、腹の中は祭りのおはやし状態。わたしの中のおはやしはますます調子をあげ、発狂寸前。

口数の多いわたしが黙り始めたことで、緊急性をさとったチュキはアクセルを踏み込み、猛スピードで自宅へ戻ったのだった。

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