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初めてもらった恋文を読まなかった理由

芸能人の私生活はまったくもって興味がないのだが、気持ちがのらず原稿が進まないときはツイッターに流れ着き、癒し動物の動画を眺めたりして、無駄な時間を費やす。

もうひとつみてしまうのが、右側にあるいまどうしてる?いわゆるトレンドである。

お!と思うニュースももちろんあるのだが、芸能人のゴシップがあがることが多い。で、見なくてもいいのについついみてしまった #広末涼子

なんと恋文がツイッターにさらされているではないか!
来年の大河ドラマの主人公・清少納言が書いた源氏物語では恋文のやりとりがリアルにさらされているがあれは物語だからいい。
平安時代の恋文がどうどうと教科書にのっているのもあるが、もう亡くなっているから時効。

となるとまだ現役バリバリの女優さんでお子さんもいる人の恋文が世間にさらされるなんて、いろいろやらかしたといえど、なんとご無体なことと思いつつ、思い出したのが自分がもらったいや、受け取った初めての恋文。

時はさかのぼること高校時代。

自宅からK高校まで自転車コキコキ30分かけて通っていたかわいい女子高生ゆきんこ。自宅から自転車で10分くらいのところにK高校よりもちょいレベルが上のN高校があり、中学時代の初恋相手がその高校にいくという情報をキャッチし、絶対に行くぞ!と張り切って勉強したものの、楽して入学しようと画策し、推薦を出してみたものの校内で撃沈。
と同時に初恋の相手もどうやらかわいこちゃんと恋仲ではないかという噂をキャッチし、じゃあ、いかなくてもいいんじゃね?とふてくされ、別の高校への進学を決めた。

というどうでもいい情報はさておき、通っていたK高校は街中、N高校はちょいと郊外ということで、高校に通う道すがら、街中からN高校に通う自転車通学の学生とよくすれ違っていた。

道幅がせまいちょっとした住宅街のところを抜けていく関係で、左側通行というお行儀のいい交通マナーは誰も守らず、かなり危険なすれ違いをしながら高校に通っていた。

そんな狭い道でありながら、同じ中学の友達と自転車並べて、くっちゃべりながら通学するという、交通マナーもへったくれもない通学をしていたとある日。入学から3か月くらいたったころだろうか。
向こう側からくるN高の男子とよく目が合うようになった。

最初は気のせいかな~と思っていたのだがすれ違うときに確実に目があう!気がしていた。

そんなある日、踏切待ちをしているさなか、例のN高男子が踏切の向こうにいるではないか。ということで、友人に

「ねえねえ、あの人いっつもうちらのことみてね~が?(←秋田弁)」

中学の時から色白で超かわいくて目がくりくりで、そんでもって天然さく裂の友人が

「そう?初めて見た気がするけど」

と全く気になってない模様。

え?ということはも、もしかして、私を見てる?ということは、私に気があるということではないか?と思い込み始めた。

踏切事件からさらに気になり始め、毎朝、どこであうかチェックしてみると、ほぼ同じ場所で出会う。

絶対に、時間あわせているに決まっている!

残念ながら自分好みの顔ではなかったのだが、好かれるというのはうれしい。やば~い、告白されたらなんて断ろうなんて考えていた。

夏休みに入っても部活動があるため高校に行く毎日。
しかし、時間も違うし、一緒に行くメンバーも違うし、ルートも違う。

あの人、私に会えなくて寂しいだろうな~と勝手に妄想。
は!全然興味ないとかいって気にしているじゃんあたしとか一人でニタニタ。もはや手の施しようがない女子高生である。

部活が終わり、いつも一緒に帰っている子が彼氏と待ち合わせ~とかいって
一緒に帰れなかったとある日。

ふてくされながら一人で帰り、なんだかやるせないな~甘いものでも食べるかとN高の近くにあるコンビニでおやつを購入し、立ち食いしようとしたそのときだ。

あのN高男子が目の前にいるではないか!

スイーツを食べようとしていた手をそっとさげ、食べるのをやめ、ごくりとつばを飲み込む。

え?こんな急展開ある?
しかも、こんな部活帰りの汗臭い状態で、さらにスイーツ立ち食いしようとしたそのときに声かける?

あ、でも「ラブストリーは突然に」なんて歌もあるしね~なんて思っていると、いきなり

「これ、渡してください」

と真っ白い封筒が目の前に。

こ、これはラブレターではないのか!
人生初のラブレター。きゃーーーーーー

いやいやいや、待て待て!読んでくださいではなく、渡してくださいとはどおいうこと?!
と一人頭の中で会話をしていると

「いつも一緒に学校行っているお友達に渡してほしいんです」

そっちか~~~~~い!

今まで自分が見られていると思っていたことが超絶恥ずかしい。
つか、勘違いさせるなよ!なんなんだよお前!
好きな人がいるならしっかりそっちを見ろよ。
とキレるものの、わたしが勝手に見てたという説も有。

ライブで押しをみて「今、わたしのこと見たよね!」というのと同じレベルだ。

という文句は高校入りたての初々しい女子高生にはできずに、

「あ、はい・・・」

と受け取ってしまった。

じゃ、お願いします!と清々しく去っていたN高男子を見送り、食べそびれたスイーツをむしゃむしゃ食べながら正真正銘のラブレターを眺める。

は~初めてもらったラブレターは友達あてだったか・・・
さほどかわいくない女子の人生ってこういうものかとなぜか贈る言葉が流れる。

暮れなずむ町の 光と影の中
去り行くあなたへ 贈る言葉~

とにかく、頼まれた以上は渡さねばなるまい。1分でも早く人様のラブレターから逃れたかったため、自転車を走らせ、ラブレターをもらえるほどかわいい友人宅に向かう。

スマホやポケベルがなかった時代、突撃は当たり前。
ピンポンを鳴らすと、友人母が出てきて

「あら~、ゆきんこちゃん、部活帰りなの?」

なんて言われながら、友人を呼んでくれた。

家にいるのにかわいい恰好をしている友人はキラキラした笑顔をみせなら

「え~どうしたの?宿題の答え知りたいの?」

そうなのだ、かわいいうえに頭もいい、非の打ちどころがない友人。
天は二物を与えずなんていうが、かわいい、頭がいい、家金持ち、お母さんやさしい、これだけでも四物与えてるじゃないか!!!

と悲観しても仕方ないので

「これ」

とラブレターを渡した。
きょとんとして受け取ろうとしないから

「前にさ、N高の男子がうちら見ているんじゃない?って話したべ。
あの男子とさっき、コンビニであってこれ渡してっていうから」

といったら、急に険しい顔になって

「いらない」

といわれた。

「え?どうするの?これ」

「だって、顔も覚えてないし、だれかわからない人からもらいものなんてできない。返してきて」

だそうだ。ものすごく機嫌が悪くなってしまったので、なぜか謝罪をして、ラブレター持参で家路につく。

自分あてではないラブレターを眺め、はて、どうしたものか・・・と考える。
返却しようにも夏休み中で会う機会がない。
だからといって、明日もあのコンビニでスイーツ買って待ち伏せするのもどうかと思うし・・・

こうなったら読んで捨てるか?
いやいや、自分あてではなく友人にあてた、恋焦がれるフレーズ読んだら気持ち悪くなりそう・・・好きな人からだったら気色悪いフレーズもうれしいだろうけど。

ラブレターを渡した以上、彼は返事を待つよな。
新学期からまた熱い視線を毎日浴びるのはもうごめんだ。

なんとか夏休み中に返却してしまいたい。

ということで、部活にいくだけなのに毎日人様のラブレターを持ち歩いた。
人様のラブレターとなると扱いはひどいもんで、部活のかばんの奥底にしまいこむ。

数日はきょろきょろして、N高男子を探したものの、そのうち忘れ、かばんにいれておいたことも忘れていたある日。自転車に乗っているさなか、大雨に振られ、家に着くころには雨がしたたるいい女状態。

では、なくもはやホラー。お母さんに、

「なんでやんでから帰ってこないのよ~。洗濯ふやして!」

と怒られながら、風呂に入っていると

「ちょっと、かばんの底になんか紙いれてた?濡れちゃって、ぐちゃぐちゃよ」

は!ラブレター入れっぱなしだった!!!!

そこにおいておいてと頼み、風呂から上がってみると、あんなに輝いていたラブレターは見るも無残な姿に。
広げようにもぐっちゃぐっちゃ過ぎて、いじればいじるほどボロボロになりそうだ。

とはいえ、捨てるわけにはいかない。
きっと彼は返事を待つであろう。

仕方がないので、ぐちゃぐちゃと丸まったまま、おひさまの下で乾かし、ジップロックにいれて保管。もはや化石状態。それでもわたしには返却する義務がある。

そして、新学期。

いつものルートでの通学が始まった。

友人はというとラブレターのことなんてすっかり忘れて夏休みの思い出をくっちゃべっている。うらやましい。こっちは誰かさんあてのラブレターを預かったばかりに、思い煩ったというのに・・・

初日に会うかな~と思いきやまったくすれ違うことなく、1週間経過。
あれ、避けてるのか?
もしかして、ラブレターに電話番号とか書いてて、夏休み中待ってたとか?

また思い悩む日々が続く・・・

そうこうするうちに1か月がすぎ、そろそろ捨ててもいいかなと思ったころ、遠くに見えるN高男子の顔!

友人に

「ちょっと先にいってて」

と先にいかせ、N高男子にちょっとこっちこいゼスチャーをし、朝の忙しい時間にすみっこで密会を開く。
なんだかくら~い顔をしているが、理由を聞いている時間はない。
かばんから単なる丸い物体と化したジップロック入りのラブレターを出す。

「ごめんなさい。友人に渡そうとしたら断られて。夏休みの間に会えるかなと思って持ち歩いてたらこんな状態になってしまいました」

と渡す。すると

「そうか、そうだったか。なんか変なこと頼んでごめんね。でもありがとう」

と丸い物体と化したジップロック入りのラブレターを受け取った。そして

「捨てることもできたのにわざわざありがとう。いい人なんだね」

褒められたか?つか、優しい女子高生の心にふれて、恋に落ちちゃったんじゃないか?と妄想するも、それから一度も会うことはなかった。

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