キャリアの振り返り④

前回からの続き。

今は総合商社で事業投資を行なっている。実際に入ってみた感想としては、一ミリとして後悔はしていない。素晴らしい環境の職場であると思う。

前評判通りグローバルカンパニーで、海外とのやり取りが毎日のように発生するし、組織の看板あるいは実績が豊富にあり、興味関心を示してもらえる。もちろん海外では、当社を知らない会社もあるが、事業内容を丁寧に説明すれば、きちんと興味を抱いてもらえるケースのほうが多いと思う。また。総合商社は、日本を代表する企業たる自負があり、コーポレート部門のファンクションも素晴らしい。研修制度は、この上ないぐらい充実している。ありとあらゆるノウハウが文書化され、組織に蓄積されている。

また、年収は一部減少はしたものの、直近の好業績もあり、驚くほど一気に同水準に近いレベルまで来ている。

海外出張もコロナを開けてから、毎月に近いペースで行かせてもらえている。行きたいから行くというよりも、行けと言われるから行く、という感じだ。もちろん個々人のキャラクターや役割によって、海外に行く人と行かない人の濃淡はあるが、僕は「行く人」の側に分類してもらえている。

良い案件を見つけてくれば、数百億円規模の投資も許可してもらえる世界である。目的がクリアであれば、数千万円の調査費も正当化される。僕自身、こんなに予算が使える経験をしたことはいまだかつてない。それだけの資金力があるのだ。

正直、プライベートエクイティファンドに入っても、このグローバルでの業界トップクラスを狙うようなプレイはできなかったであろう。PEはその性質上、日本国内が主戦場になるから。商社の目線からすれば、日本は確固たる知名度を誇り、いくつもの分野で、キャプティブなディマンドをおさえてはいるものの、多くが縮小市場であり、投資優先度からすると決して高くはない。

色々な側面から非常に素晴らしい職場であると思う。

また、契約社員での入社ではあったが、たまたまいろいろな組織のニーズに合致したこともあり、中途採用試験に合格することもできた。後々に聞くと、中途採用の門は契約社員よりもはるかに狭いらしく、僕は本当に幸運であったと思う。

契約社員の期間では、とにかく英語をモノにするのが目標であった。5年という期間で、そうした経験を蓄積するのが目標であった。いまも変わらないが、5年という年限がなくなったために、もう少し中長期で大きな投資案件に取り組む、というスタンスに変わってきている。

業務そのものは契約社員であれば、正社員であれ、変わらない。どちらもある種の専門的技能をベースに貢献する人間である。僕自身、今は契約社員の面接をしているが、採用できた人はとても有能で申し分ない働きをしてくれている。

が、やはり正社員と契約社員では、組織からの見え方が違うのは後になってわかった。正社員の教育・人事システムに乗らないし、評価システムも完全に分離されている。契約社員は5年という期間はあるが、3年もすれば、中途採用の可能性のあるなしは見えてくるため、転職活動を始める人が多い。となれば、どうしたも双方の目線からドライになりがちだ。この時間軸の違いは、日々の業務においても違いをもたらすように思う。

話は変わるが、投資案件が実行できるかは運の要素がかなり大きい。良い案件が見つけられるかもさることながら、課長・室長クラスの能力や、部長や本部長の社内政治力によるところも相当に大きい。僕はたまたま関与した案件で2件、投資実行ができたが、自分がソーシングからプロマネをしてきた案件は、外部専門家のDDまで進むも、一時停止の状態になっている。外部DDに至らなかった案件は、それこそこの何倍もある。それぐらい社内のコンペティションは激しい。

とはいえ、かなり楽しく日々を過ごせていることは事実だ。今は転職は全く考えていない。いかにして組織にとり意味のある投資案件を遂行審、より有意義な経験を得るかにフォーカスしている。今までのキャリアで、転職を考えていない、という状態はあまりなかった気がする。監査法人は初めから5年程度と決めていたし、コンサルティングは魅力はあったが最初の給料が低すぎてサステナブルではないと感じていたし(実際に2年程度でやめた)、個人事業主は毎回が数か月の付き合いであった。経歴上、長く年数を置くことに一定の価値がある企業でもある。

今はこの組織の中で、できる限り、高い評価を得て、早く昇進し、より広範にリーダーシップを発揮する機会を探していきたい。そして短期的には海外駐在の機会をいち早く持ちたいと感じている。その可能性を上げるためならば、ありとあらゆる手段を取るつもりだ。




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