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美貌喪失、そして愛のゆくえ

「春琴抄」、その容顔美麗に威容を誇った盲目の春琴、しかし何者かに熱湯を浴びせられ、プライドもろともくずおれる。しかし奉公人で弟子の佐助は自ら目を刺し盲目となることで、春琴の雲鬢花顔うんびんかがんたる美の誇りを守ろうとした。これを絶対の愛というのかどうか、愛にしろ悪にしろ、そもそも世の中に絶対なるものがあるのかどうか私は知らない。でもおそらく愛とはこうした自己犠牲のもとに人の誇りを守ることではないかと思われてならない。人が大切にしているものを捨身してでも守れるのか、そうした愛などまるで知らぬ私は自信がない。それでもやはり、「愛は盲目」なのだろうか。

「春琴の肉体の巨細を知りつくしてあます所なきに至り」

谷崎描く、愛の行方。それは尋常ならぬ、しかしその死まで貫いた無二の無私の愛であった。

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