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楽しくてつらいコロンビアMBAでの2年間が終わりました

アメリカに来ても面倒くさがり屋な性格は変わらず、バタバタしているまま時が過ぎ、気がつけば2年ぶりのnoteとなってしまった。

上記のノートで報告させていただいたように、アメリカ/ニューヨークにあるコロンビア大学のビジネススクール(経営大学院)に通っていたが、2023年5月に無事に卒業することができた。

記憶が新しいうちに、2年間の海外大学生活奮闘記をここに綴ってみる。

とにかく楽しかったし、とにかくつらかった

海外留学と聞くと「海外生活を楽しんで、さらにパワーアップして帰ってくる!」という印象があるかもしれないが、正しくもあれば正しくなくもあり、私の場合はそんなキラキラした状況ではなく、最初の1年は特に、もっとモヤモヤした感情に支配されていた。

日本生まれ・日本育ち、いわゆる純ジャパの私は、渡米して1〜2ヶ月は英語に全然ついていけず、かつ私の「話の流れを切りたくない」「何回も聞き直すのは申し訳ない」という変に気を遣ってしまう性格が災いし、「Where are you from?」「What did you do before coming here?」「What are your plans after graduation?」をひたすら繰り返し、あとはただニコニコしているbotのようだったと思う。

誰かに誘ってもらった飲み会も、事前に参加者のInstagram・LinkedInを見て何を話す・聞くべきか事前にシミュレーションし、飲み会に挑んではうまくできずに落ち込むという、毎回毎回初デートですか…?くらいの面持ちだった。

MBAの平均年齢は28歳。31歳で入学した私の方が3年も長くビジネス経験を持っているにも関わらず、クラスでも思うように発言できず、「日本語だったらできるのに…」という気持ちが、私の自信を消し去ってしまうのに、そんなに時間はかからなかった。言いたいことを思うように表現できない環境が、自分らしさを打ち消し、自尊心を削った。

100社応募してもうまくいかない就職活動

アメリカでの就職活動は、ゼロになった私の自信をマイナスへ突き落としたように思う。

「他の学生とは違うバックグラウンドだし、興味は持ってもらえるかな?」と淡い期待を抱いて就活を始めたが、逆にトラディッショナルではないキャリア・ビザのサポートが必要になる留学生という立場・コロナ後戻ってきたと思われていたが再度悪くなり始める景気、など様々な要因が重なり、100社以上応募したうち面接に呼ばれたのはわずか7〜8社程度。面接に呼ばれれば、数日間はほぼ24時間稼働で準備をし、それにも関わらず、うまくできなくて落ちる、うまくできても落ちるということが続いた。「あぁ、今まで積み上げたキャリアがあると思ってアメリカに来たけれど、実は何も持っていなかったのかな…」という気持ちに心が支配されてしまっていたし、散々練習したにも関わらず、面接で英語が思うように出てこなかったときは、1人でももちろん、何年振りかな?と思うくらい、友達の前でも泣いた。

「今までのスキルや多様な経験を活かして、アメリカで挑戦したい!私ならできる!」と持ち前の自己肯定感の高さと希望で胸いっぱいのはずだったが、無事にオファーをもらうまでの渡米後1年間は、人生で5本指に入るくらいにつらい期間だった。

世界90カ国からきた800人の同級生

上記の通り、「とにかくつらかった」留学生活だったが、「とにかく楽しかった」とも言えるのは、学校で出会ったたくさんの友人のおかげだと胸を張って言うことができる。

大人になってから新しく友人を作るのは簡単ではない。多くの人が同じように感じるのではなかろうか。

約800人、世界90カ国以上から来ている同級生の中には、自分と似たような志・姿勢・趣味を持っている人も多く、話す言語や国籍は関係なく、本当に気の合う友達がたくさんできた。今後どの国へ旅行しても、1人は必ず連絡できる友達がいるという状況は、2年間の学生生活だからこそ手に入れられたものであり、貴重な財産である。

精子バンクから生まれてきた友人、プログラミングで破綻寸前の家族を救った友人、イスラエル軍としてパレスチナ紛争に関わってきた友人、アフガニスタンで銃に撃たれたことのある友人、敬虔なキリスト・イスラム・ヒンドゥー・ユダヤ宗徒、20億円の家に住む起業家一家の息子など、日本にいたときには到底出会えなかった人たちは、私の視野を広げ、新たな気づきをたくさん与えてくれた。「アメリカに存在する人種差別について」「共産主義・資本主義について感じること」「銃規制の是非」「なくならない紛争」など、日本ではあまり考える機会のなかったようなトピックについても夜な夜なお酒を交えながら議論をし、学校の授業以上に友人から学ぶことが多かった。

ゆっくり腰を据えて学ぶことの楽しさ

そして同時に、2年間の学生という立場は、ゆっくり腰を据えて新たなトピックを学ぶことの楽しさを再確認させてくれた。

思えば、2016年に最初の起業をしてから、常にアウトプットを求められ、インプットをする時間と心の余裕がなかったように思う。会社を売却し、一息ついたタイミングで、クリプト・バリュー投資・気候変動など、今までに全く馴染みのなかったトピックを学ぶことはとても楽しく、自分自身の中の時間の流れをゆっくりとさせてくれた。

「本を読めばわざわざ海外に行く必要はないのではないか」「広く浅く学んだって何の役にも立たない」と言われてしまえばそうなのかもしれない。しかし、環境・時間の使い方を変えた上で学ぶことは、私の知識だけでなく性格にも影響を与えてくれたように思うし、同級生のディスカッションの中からの発見は対面でしか学べなかったことである。(「このような考え方があるのか」はもちろんのこと、「このような発言の仕方が効果的なのか」というソフトスキルも多く学んだ。)

良い意味でも悪い意味でも変化した自分

一言でまとめると、この2年間は、良い意味でも悪い意味でも「今まで積み上げてきた自分がフラットになった」時間だったように思う。海外留学のつらい側面から、自尊心は削られ、自分の存在価値がわからなくなったタイミングもあったが、周囲の考えやアドバイスをもっと吸収したら突破口が見えるはずだと自然と思える、オープンな性格にもさせてくれた。受験や入学前準備を含めると3年半ほどかかったこともあり、卒業したことで「大きな人生の目標」を達成した感さえあるのだが、もちろんここからが新たなスタートなので、ビジネススクールで得たものを活かしつつ、引き続き学ぶ姿勢を忘れずに頑張れたらなと思う。

合計3,000万円ほどかかったMBA留学。「費用対効果は?」と聞かれると、「これから自分がMBAでの経験をどう活かせるか次第ですかね」と答えるしかないのが正直なところである。ただ、費用対効果を考えるまでもなく、とにかく海外で勉強したいという気持ちで挑戦をした自分の決断は「正しかった」と言えるし、日々奮闘しつつも「正しくできた」ことにはさらに自信を持っていきたい。

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