マガジンのカバー画像

オンナ作曲家の部屋_by_jwcm

68
作曲家がゆるりといろいろやっています。(HP) jwcm.site
運営しているクリエイター

記事一覧

決断することと音の創作について

ここ一か月旅をしたり方々でワークショップをしたりして考える時間があったので、少しまとめておこうと思う。つたない英語で自作のプレゼンテーションをさせてもらって言語化できたことも、これまでの創作について振り返る良い機会になった。 ジェンダーについてリサーチするようになってから、社会の構造と個人の関係性について根本的な本質にフォーカスして考えるようになった。女性作曲家が少ないのは、女性に才能がなかったわけじゃない。ただ女性が作曲するという社会でなかった。才能を見せようとする場が社

【十月の備忘録】ex-peri-mentalの先にあるもの

朝から仕事をする。一山超えたところにある隣町のカフェまで車で向かう。小さな森を抜けたところにそれはあり、そこまでのドライブはとても気持ちが良い。特に秋に森をドライブするときは、刻々と変化する紅葉を楽しみながら自分自身も森と同化したような気分になる。 「自然と一体化できる」なんてふれこみのテーマパークもあるけれど、自然と人間が別の存在として考えられている人間中心的な世の中で、自然と同化することはどうやら気持ちの良いと認識されているようだ。 所属する女性作曲家会議のイベントで

そして今演奏される作品の作曲家男女比はどうなっている?

女性作曲家会議(Japanese Women Composers Meeting)では、これまでシンポジウムやリサーチを通して、女性作曲家と社会の関係性について独自の調査を行ってきました。2021年末に発行し、現在発売中の「ザ・ダイアローグ:Arts & Women」は、それまでのリサーチやインタビューをまとめたものとなっており、昨年時点での女性作曲家をめぐる社会的状況の一部を垣間見ることができます。 そして今どうなっているのか? 出版から半年後、様々な方の手に渡り(ご購

JWCMの2021年度とこれから

2020年はこんな振り返り記事を書きました。 年度中に2021年度の振り返りをと思いつつ、2022年度が始まってしまいましたが、あきらめずに(!)記録を残していきたいと思います。今年度、応援してくださった皆々様、ありがとうございました! 2021年5月 キクラボonline #5『女性の新しい音楽(Frau Musica Nova)』 2021年5月1日にドイツから作曲家でFrau musica nova代表を務めるブリギッタ・ムンテンドルフを招き、レクチャーを行いまし

ダイアローグ: Arts and Women【音楽家と社会】➂

かつて影なる場所で息を潜めていた⼥性アーティスト。それは果たして本当に過去のものなのか?⼥性アーティストと社会をテーマに始まったシリーズプロジェクト「ダイアローグ:Arts &Women」。初回はjwcm共同代表の渡辺裕紀⼦(作曲家)をホストに、EGSA JAPAN(芸術におけるジェンダー/セクシュアリティ教育を考える会)のメンバーであり、舞台芸術関連アーティストの分析をライフワークとする社会学者・⾼橋かおりを迎え、⾳楽家と社会について論じます。こちらは2020年12月20日

データから音楽業界の男女比と決定権の所在について考える

ここからは具体的なデータを取り上げて、現状について検証していきたいと思います。調べたのは以下団体や機関役員などの男女比です (女性数/男性数)。 【著作権協会役員】 一般社団法人 日本音楽著作権協会 (JASRAC) 役員 (2020 年6月24日現在) 3/33 【都内のプロフェッショナルオーケストラ役員】 ・公益財団法人 NHK交響楽団役員名簿 (2020年10月現在) 2/11 ・公益財団法人 新日本フィルハーモニー交響楽団、役員及び評議員 (2021年8月掲載

数字から見る音楽家の労働環境

前回、前々回に続き、お金と音楽家の話。そもそも、なぜリサーチをしようと思ったのか、その経緯と現状について書いていきたいと思います。 所属団体jwcm(女性作曲家会議)では、二年にわたって女性作曲家にまつわる社会的問題について、当事者として取り組んできました。ただ活動を続ける中で少しずつ認知されてきたものの、「作曲家」「女性」というマイノリティとしての存在故か、社会一般に私たちの声を共感を持って届けることの難しさも感じていました。 今回新たに行うリサーチでは、よりリアリティ

サロン終了のお知らせ

jwcm発足から次の8月で二年が経ちます。 jwcmとして活動することは、これまで知らなかったこと、知らなかった世界から自己を再発見することだと思っています。そして、jwcmの活動の中でも大切な、守られた場所としてみんなで育ててきた「廾ッ≠ョ勹ヵ丿∧ヤ」。この数年間のモヤモヤは全てここで吐き出すことができたし、共感しあうことで、孤立感や疎外感を拭うことが出来ました。いつの間にかなくてはならない場所になっていたような気がします。 そして突然ですが、みなさまにご報告です。

1~2声部、10分程度の作品に対して委嘱費用は?

約半数の作曲家が、小編成10分作品を5万以下で書いている。前回に引き続き、お金の話。前回行ったアンケート結果が出ましたので、こちらにまとめます。 まとめると、6万以上と答えた方が53パーセント、5万以下と答えた方が47パーセント。5~6万を境に凡そ、半数というところでしょうか。 ソロ・デュオ作品10分を5万円で書くことがどういうことなのか。わたしの肌感覚ですが、編成に関わらず、ミニマムでも一か月はお時間を頂きたい(できれば3か月くらいあると嬉しい)。なので、一作品を一か月

女性作曲家は男性作曲家より稼いでいる額が30%~40%少ない?

先日行ったドイツ人女性作曲家ブリギッタ・ムンテンドルフ(Brigitta Muntendorf)が事前インタビューでこう漏らしたんです。 「女性作曲家は男性作曲家より稼いでいる額が30%~40%少ない」 欧州でも、ここ日本でも殊に美術界においては、出展アーティストの男女比が問題視されている現状があります。欧州現代音楽界でも似たような状況があるわけですが、ブリギッタの発言を聞いて、委嘱される作曲家の男女比だけでなく、委嘱費用までも差があるのか?疑問に思いました。そもそも、日

③キクラボonline ♯5

2021年5月1日19時に開催された、jwcm主催キクラボonline ♯5<新しい女性の音楽>の書き起こし記事です。(編集:わたなべゆきこ) ーイベント概要ー 5月1日(土)19-21時(ドイツやフランス:12-14時) 出演:ブリギッタ・ムンテンドルフ(作曲家、FMN共同代表、ケルン音楽舞踊大学教授)、わたなべゆきこ(作曲家、女性作曲家会議共同代表)ほか 使用アプリ:zoom 言語:英語と日本語 通訳:森紀明、神沢希洋 参加費:投げ銭式(Note、Paypal) ①開

②キクラボonline ♯5

2021年5月1日19時に開催された、jwcm主催キクラボonline ♯5<新しい女性の音楽>の書き起こし記事です。(編集:わたなべゆきこ) ーイベント概要ー 5月1日(土)19-21時(ドイツやフランス:12-14時) 出演:ブリギッタ・ムンテンドルフ(作曲家、FMN共同代表、ケルン音楽舞踊大学教授)、わたなべゆきこ(作曲家、女性作曲家会議共同代表)ほか 使用アプリ:zoom 言語:英語と日本語 通訳:森紀明、神沢希洋 参加費:投げ銭式(Note、Paypal) ①開

#5 女性の新しい音楽【アーカイブ】

本記事は、2021年5月1日に開催されたキクラボonline # 5『女性の新しい音楽(ゲスト:ブリギッタ・ムンテンドルフ)』で参照されたリンクをまとめたものです。 ブリギッタ・ムンテンドルフ作品関連Trilogie fuer zwei Flügel (2017) ARCHIPEL (2020/21) COVERED CULTURE (2021) Bilderschlachten – Batailles d’Images: Six moods to stand kin

キクラボonline ♯5 開催に先立って

本日2021年5月1日19時より、キクラボonline ♯5<新しい女性の音楽>を開催します。開催に先立って、参加される方、もしくは参加できないけれども、興味を持ってくださった方向けの文章をお届けします。 ーイベント概要ー 5月1日(土)19-21時(ドイツやフランス:12-14時) 講師:ブリギッタ・ムンテンドルフ(作曲家、FMN共同代表、ケルン音楽舞踊大学教授) 使用アプリ:zoom 言語:英語と日本語 通訳:森紀明、神沢希洋 参加費:投げ銭式(Note、Paypal)