ギリシャ神話 伝令神ヘルメースと補酵素NAD

伝令神ヘルメースは最高神ゼウスとプレアデスのマイアの子である。

ゼウスは司令塔である間脳、プレアデスは小腸細菌や消化酵素などつまり分解者にあたる。

マイアはその長女。様々な分解過程の初期行程に関わる。
生体は血糖値を一定に保つように様々な機能を持つ。間脳の司令下で血糖が維持される。

マイアは小腸粘膜ではマルトース(麦芽糖)をグルコースにまで分解するマルターゼに相当。

また、エネルギー代謝の過程ー解糖系ではグルコースをピルビン酸にまで分解する部分にも相当している。
ピルビン酸にまで至る過程で生じるものが電子伝達体NADである。

また、小腸細菌は必須アミノ酸トリプトファンからビタミンであるナイアシンを作り出す。このナイアシンがNADの原料になる。

このナイアシン、NADが伝令神ヘルメースである。
ヘルメースは生まれた時から盗みの才能を持っていた。
NADさまざまな脱水素酵素の補酵素として機能し、酸化型 (NAD+) および還元型 (NADH) の2つの状態を取り得る

ヘルメース誕生時のアポロンの牛泥棒の話がこの役割を象徴している。
ヘルメースは生まれてすぐに、アポロンの牛50頭を盗んだ。アポロンは怒るがヘルメースは嘘をつく。結局お互いに必要な物を交換して友好関係を築く。

以前考察したがアポロンは神経シナプス他、生体内シグナルを象徴している。聴覚情報や心拍リズムなど様々な一定のリズムを刻む周期を司っている。故に記憶と深く関わる。妹のアルテミスは月経周期。

アポロンとヘルメース2人の、シナプス間の情報伝達に関するお互いの役割が決まった。

神経受容体は、シナプス小胞から放出される様々な神経伝達物質をキャッチする。基本的に一つの物質に対して一つの受容体だが、形が似ている場合、間違う。
つまり電子伝達体は嘘をつく事がある。

この生体内情報伝達に欠かせない故にヘルメースは伝令神であり、盗みと嘘の才能を持つと言われる。

また、ヘルメースはゼウスとマイアの息子だが、ゼウスの妻ヘーラーの母乳をのんで育ったため、ヘーラーからも息子同然に扱われる。
これはNADの原料ナイアシンは、トリプトファンから合成されるため。
トリプトファンは、セロトニンの原料で、セロトニンはメラトニンの原料。
つまり松果体ヘーラーの分泌するメラトニンと深くつながっている。
アポロンとのエピソードには、概日リズムの調整役としての機能も含まれている。

この電子伝達体の特性故に、ヘルメースは様々な神の称号をもつ。能弁、境界、体育技能、発明、策略、夢と眠りの神、死出の旅路の案内者などとも言われ、多面的な性格を持つ神である。
幸運と富を司り、狡知に富み詐術に長けた計略の神、早足で駆ける者、牧畜、盗人、賭博、商人、交易、交通、道路、市場、競技、体育などの神であるとともに、雄弁と音楽の神であり、竪琴、笛、数、アルファベット、天文学、度量衡などを発明し、火の起こし方を発見した知恵者とされた。
火の起こし方は、エネルギーつまりATP産生である。
NADは好気呼吸の中心的役割を担う。

ヘルメースに配偶神はいないが、アフロディーテとの間に子をもうけている。
ヘルマプロディートスの名は、両親にちなんでいるだけでなく、美しい女体をもった美少年(ヘルメースにしてなおかつアプロディーテー)という意味も持つ。
また、両性具有、雌雄同体を意味する "hermaphrodite" という語の語源でもある。
また、巨大な陰茎をもつ陽物神プリアーポスも一説にはヘルメースの子とされる。

アフロディーテが性腺刺激ホルモン放出ホルモンを司る話は既に述べた。
2人の子ヘルマプロディードスは、性腺刺激ホルモン。
男性ホルモンであるテストステロンは、女性ホルモンのエストロゲンの前駆体、つまり両性具有。
男性ホルモンのテストステロンは男性らしさを生み出すホルモンであり、巨大な陰茎陽物神プリアーポスを象徴。
このホルモンの合成に関わるのが補酵素になる。

こうして電子伝達体ヘルメースは日夜、生体内で間脳ゼウスの手足となって情報を伝えている。



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