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【体験談】子どもに熱性けいれんが起こったら

前回のエントリで次男がPCR検査を受けることになった経緯を書いた。
今回はそもそも救急搬送されることになった原因となる突発性発疹について体験を記しておこうと思う。

突発性発疹自体は生後6ヶ月〜2歳くらいまでにほとんどの子が罹患すると言われている。
現在3歳の長男も1歳半くらいのときに経験したが、その時は熱があがり、不機嫌になったくらいで自然治癒したため、特に何の問題もなかった。
それがまさかの今回は救急搬送である。熱性けいれんが起きたためだ。

高熱が出たときに起こりうる熱性けいれんだが、その発症率は約10%弱らしい。
またその中でも症状により、比較的症状が軽い「単純型熱性けいれん」と入院が必要になることが多い「複雑型熱性けいれん」に分けられるそうで、次男の場合は後者であった。
80%ほどは単純型のけいれんとのことで、発熱してから入院まで行くケースは全体からすると2%程度と、とても少ないが、こうして実際に起こりうることなのである。

突然発症し、また重篤な状態になる可能性もある熱性けいれんは、何より「いざ起きたとき」のことを想定しておくことが大事である。
今回の体験談が、何らかの参考になれば幸いである。

日曜・午前

朝起きて何となく熱っぽい気がしてはかってみると、37.8度。ぐったりもしておらず、日曜で病院もしまってるのでとりあえず様子見。機嫌も悪くない。
解熱剤も無駄に使うと良くないと聞くので、一旦明日受診させようと考えていた。

15:00-17:00

昼寝するものの長くは寝れず。頭を冷やしてやるもどんどん熱っぽくなってきた。超絶不機嫌になり、抱っこしていないと泣きっぱなし。離乳食はそこそこ食べる。ベビー用イオン飲料みたいなやつも少し飲ませてみる。夫は23:00まで仕事で、帰宅は0:30くらいになる予定だった。

17:30

突然泣き止みぐったり。身体がこわばってくる

17:45

小刻みに身体が震えている。熱性けいれんか?と思うものの、そこまで大きな震えではなく、悪寒との区別がつかず悩む。
顔色も悪くなくどちらかというと赤っぽい。とりあえず硬い床に寝せて、横向きにして気道確保。ビブを外して首元を緩める。
痙攣っぽい震えが起きたら動画撮って時間をカウントしてみる。
2分ほど続く。少し間がありまた2分ほど。

熱性けいれんについては事前に勉強しており、「平らなところに寝かせる」「窒息しないように首元を緩めて、顔を横に向ける」「けいれんの時間をはかる」という知識はあったため、けいれんなのかどうか確証はなかったが、とりあえずそれをやってみることにした。

17:50

5分以上けいれんが続くなら救急車だったはず…と思い注意深くカウントしたが、けいれんの持続時間は2分。また他のけいれんの症状と言われている白目や、顔色の悪さなどは見られず、判断にとにかく迷う。

#8000の子ども医療相談  に電話して救急を受診すべきか相談することにした。
状況からして、寒くて震えてるのかもしれないからあっためてと言われる。けいれんが5分以上続いていなくとも、意識がそれくらい戻らない時は救急車を呼ぶようにと言われる。
目は開いているし、意識が戻らない状態とはどういうことなのか…とまたしても自分の判断力に自信がない。
名前を呼んで目が合わないとか、反応しなかったら意識がないってことでいいですか?と電話で確認し、とりあえず呼びかけをしてみることにした。

17:55

名前を呼びつづけるが反応なし。またしても震えながら、目は一点を虚に見つめている。
最初はただ熱でぼーっとしてるのかと思っていたが、これは本格的におかしいかもと思い始める。
ずっと震えているというよりは、少し間が開き、また始まるのでやはりけいれんではないかと考える。

18:00

5分経っても意識が戻らないので救急車を呼ぶ。
簡単に状況を説明。母子手帳や保険証などとりあえずいりそうなものをバッグに詰める。
横でふざけていた長男だが、ただ事ではないテンションを汲み取ったのか、私が「今から救急車にのって病院に行くからね、準備しようね」と説明するとしっかり「わかった」と答えた。

夫も仕事でおらずとにかく怖かったが、私がパニックになると長男にまで伝染してしまうという危機感があり、なるべくゆっくりと落ち着いたトーンで長男に指示をした。
イヤイヤ期絶頂で、普段は着替えるのも逃げ回る長男だが、何も反抗せずいうことを聞いてくれたので助かった。

次男の様子は変わらず。食べ物はでなかったが、少し液体のようなものを吐く。
窒息しないように、横をむかせて口元を拭ってやる。目は一点を見つめたままだが、苦しいのか涙や鼻水が流れだした。
呼吸音もおかしく、息苦しそうだ。

18:10

救急車到着。救急車の中でけいれんが続いた時間や状況などを説明。救急隊の人に撮っていた動画も見せる。
やはり呼吸が苦しそうで、すぐに酸素をつけられた。救急車の中でもけいれんし、同じく2分ほど続いた。
状況を理解できない長男は、救急車に乗れることに少しテンションが上がった様子で、でもふざけることはなく自分でシートベルトをしめて、大人しく椅子に座っていた。

18:30

大学病院に到着。次男の情報などを記入して待合ロビーで待つ。
直近の海外への渡航歴や、家族でけいれんを起こしたことがある人がいるかを聞かれる(家族に既往歴があると起こりやすいらしい。うちの場合は該当者無し)

19:15

救急隊の方が「とりあえず薬でけいれんはおさまっています」と伝えにきてくれる。病院についてからも何度かけいれんしたらしく、結局1時間くらいは続いていたそうだ(痙攣重積というらしい)

19:30

医師に呼ばれる。人がいるところではあれなので、中に入ってくださいと言われて嫌な予感がする。
けいれんは止まってるものの、意識がまだ混濁していて戻らない。
これからCTと髄液の検査をすると言われる。
髄液検査は背中に針を刺して行うらしく、リスクもあるからと同意書にサインをするように言われる。

19:45

待ちくたびれた長男は、私の膝の上で寝た。私は何もすることがなく、熱性けいれんについて色々と調べてみた。ここでけいれんには「単純型」と「複雑型」があることを知る。
色んな体験談や、医療サイトを見てみるとやはりCTや髄液検査までしているというのは、症状がまずそうである…とわかりさらに落ち込む。
そこからひたすら待合で待つ。時間がすぎるのがとにかく遅い。
今どんな状態なのか、何でもいいから教えてほしい。

21:40

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ようやく中に入れてもらえて次男に会えることになった。感染症対策で透明のビニールシートのテントの中に寝せられていた。
点滴に酸素、色んな管が繋がれていて見るだけで辛い。胸の部分が機械で?ドクン!と動いていて怖かった。これはどういう状態なのだろう?寝ているのか?目はほぼ閉じているが、うっすらと開いている様子。先生からは「けいれんは治ったんですがまだ意識が…」と言われ、絶望的な気持ちになった。

22:00

医師から「まだ検査結果が出ていない中で言うのも心苦しいが、これだけ意識が戻らないことを見るとさらに専門の病院で調べたりしないといけないかもしれないし、何かしらの問題がある可能性がある」と言われ、絶句。頭が真っ白になる。ショックで涙も出ない。
このまま目を開かなかったらどうしよう、何か重い障害が残ったらどうしようと頭の中を悪い予感ばかりが巡る。
もっと早く救急車呼べばよかったのかなとか自分の行動を責めた。
でも次男が1番頑張ってるのだし、私が取り乱すわけにはいかないと何とか自分を保つ。同じく心配している夫にもきちんと状況を伝えてあげないといけない。

今の病院は満床で入院できないとのことで、違う病院にうつることに。夫は仕事を早退して向かってくれていた。
夫に状況を連絡しながら「何でもするからどうか助けてください」と祈り続ける。夫も病院に向かう電車の中で泣いていたらしい。
待ってる時間が永遠に感じる。

ショックで呆然となりつつも、どこかで客観的に状況を判断している自分がいて、ぼんやりと医師というのは精神的にもものすごくハードな仕事だな…なんてことを考えていた。
自分だったら目の前にいる保護者に辛い宣告をするなんてことできるだろうか…。
変な話だが、こうやって必死に処置してくれている医師や看護師のためにも、私がしっかりしなければというプレッシャーを感じていた。
私が泣いて取り乱していたら、医師はどれだけ伝えるのが辛いだろう。

22:40

次男が突然動き出す。目が開き、バタバタと手足を動かして泣き始めた。
医師と看護師が来てくれて「わ、よかった!元気になってきた」と言われる。とにかく意識がしっかりした姿を5時間ぶりに見れて、初めて涙が溢れ出した。
まだ状況は何もわからないが、とにかく意識があるというだけで少し安心した。

22:50

血液検査、CT、髄液検査の結果が出た。全て問題なしとのことで、とにかくホッとする。
でもまたけいれんが起こる可能性もあるし、肺炎の恐れがある(肺の状態が少し悪かったらしい)ので暫くは入院しましょうと言われる。
さらにこの時期で、熱と肺炎の疑いありのため新型コロナウイルスのテストも行うと言われる。

夫も病院に到着。
夫が到着したときには次男は大きな声で泣いていて、ものすごく安堵した。
夫は私より繊細な精神の持ち主なので、さっきまでの意識がない状態をみたらきっと自分を保っていられなかったと思う。
そんな夫を見るのはさすがに私でもできなかったはずだ。
夫がいなくて心細くて不安ではあったが、逆に夫がいなくてよかったとも心から感じていた。
次男の辛そうな姿だけでなく、夫の傷付く姿まで見るのはとても耐えられない。

0:00

夫に長男を連れて帰宅してもらい、私と次男は別の病院への搬送を待った。
次男は私の腕の中で眠りについた。コロナ感染者である可能性が拭えないので、ふたりでビニールテントの中で待つことになった。

0:30

医師と一緒に車へ。この騒動で?救急車が足りない?らしく自前の救急車っぽい車で移動する。
担当の先生に「お母さん、来られた時すごく落ち着いてたんで、皆で医療関係者かな?って話してたんですよ」と言われる。
熱性けいれんの場合、泣きながらとか、パニック状態で来る人が多いらしい。
その気持ちが痛いほどわかる。
「熱性けいれんは予習してたんです」と話し、さらに詳しくきいてみる。
悪寒との違いが見分けにくいが、悪寒の場合は目を閉じていることが多いそう。ぼーっとどこかを見つめているようなときはほぼ熱性けいれんだそう。

大体はけいれんが起きても5分以内に収まるらしいが、稀に次男のように何度も繰り返し起き続けるケースがあるらしい。
けいれんの長さが短くても意識が戻らない場合はやはり救急で診てもらったほうがいいとのことだった。

1:00

移動先の病院に到着。「こんな大変な時期にすみません。ありがとうございました」と診てくれた先生に御礼。久々に病院に行くと当たり前だけど医師も看護師も事務員も、ものすごく気を遣って仕事しているのがわかって、改めて感謝しなくちゃと思った。

1:15

小児科の先生と対面。次男は起きて移動するベッドの中で大暴れ。ものすごく元気に暴れていたので「けいれんしてたとは思えないくらいだね!」と先生に言われる。様子からすると大丈夫そうとのこと。
「ヤバイ」熱性けいれんの場合は、1日とかぐったり寝続けたりするらしい。

見た感じ突発性発疹の疑いが強そうとのこと。熱は40度を超えた。
突発性の場合はほぼ問題ないが、急性脳症という合併症を起こすことがあるらしい。厄介なことに治ったと思ったときに発症するとのことで、これになると後遺症などが残りやすいので、しっかり入院して様子をみましょうと言われる。
先生曰く、けいれんで他に心配なのは髄膜炎らしい。ウイルス性の髄膜炎は大したことないが、細菌性だとかなりまずいそう。かなりの確率で障害が残ったりするとのこと。
先生からはヒブと肺炎球菌の予防接種受けてくれててよかった!と言われる。これがあるかないかで全然リスクが違うそうだ。
PCR検査の結果がわかるまでは、家族も全員面会は禁止。入院グッズの持参もNGという徹底ぶり。

2:00

次男と別れ、私だけ帰宅。

再会、そして医師からの説明

前回のポストで詳しくは書いたが、PCR検査で陰性とわかるまでは、面会もできず辛い日々を過ごした。

結果(陰性)がわかり会いに行けたのは水曜日。次男の身体にはみっしりと発疹が出ており、やはり突発性発疹で発熱したことがわかった。
「不機嫌病」とも呼ばれているだけあって、終始顔を歪ませ泣いていたが、意識があるだけで涙が出そうになる程嬉しい。

翌日には医師から電話があり、症状のより詳しい説明を受けた。
心配していた肺炎も、どうやら炎症ではなく浮腫の可能性が高いとのことであった。
特に心配はないらしい。
また合併症も起こしておらず、食欲もあり、経過はとても順調とのことで、ようやくこの日に心から安心ができた。

奇しくも当日は夫の誕生日。
荷物を届けに病院へ行ってもらい、次男に4日ぶりに対面してもらった。
元気な姿を見て涙がこぼれたそうだ。
「人生で最高の誕生日プレゼントだ」と呟いていた。

親がパニックを起こさない

このエントリで伝えたいのは、どの子にも起こりうる脅威にいかに親が備えておくのが大事かということである。

私が熱性けいれんに備えておこう、と心構えができたのは「37.5℃の涙」という病児保育をテーマにした漫画を読んだからだった。

漫画ゆえに強調して描かれている節はあると思うが、熱性けいれんの描写は凄まじく、こんなことが実際におきたら絶対に焦って対処できない…と恐怖を感じた。

アクシデントが起きた時に1番大事なことは「パニックを起こさないこと」だ。
命の危機とはレベルが違うが、何度も仕事で追い詰められたときにそれを痛感していた。

慌てると正常な判断ができずに、よりリスクを肥大させてしまう。
落ち着いて、今自分が取るべき最善策は何なのかを考える。これが何より大事である。

とは言え、実際に現場を目にした者としては、パニックを起こす気持ちも痛いほどわかる。
だからこそ、事前の備えが大事なのだ。第一ステップは「知ること」。
熱性けいれんという存在を認知しておくだけでも、いざというときの焦りが減るだろう。

そして病院へ行くまでにすべき応急処置を学んでおく。これだけでも心の余裕が全く違うはずだ。

前述の通りだが、我が家の場合入院するまでの事態になったものの、初期のけいれんはそれとわからないくらいの微妙なものだった。
後ほどyoutubeなとで、けいれんの動画を見ていたが、やはりけいれんとハッキリ分かるものが多く驚いた。
我が家のように悪寒と見分けがつかないようなケースもあるようだ。

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こちらは病院からもらったけいれんについての資料である。我が家の場合はこの「間代性痙攣」で腕などは曲げた状態でけいれんが始まった。
私のけいれんのイメージは、この強直性痙攣だったので、これまた違うパターンがあることを学んだ。

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ここにあるように、口の中に物を入れないのも大事なポイントだそうだ。
うっかり手を入れたりすると、噛みちぎられそうになることもあるらしい。

継続時間のカウントについては、動画を撮るのがおすすめである。
そのまま救急隊員にも見てもらえるので、初期症状を伝えやすい。

こんなご時世だ。救急車を呼ぶのには慎重になるべきだが、必要な場合は躊躇いなくコールする勇気も必要になる。
判断に迷う場合は #8000 や救急安心センター事業 #7119 に電話することをおすすめする。

備えても憂いはあるが、備えないよりはずっといい

この一件があってから、私はyoutubeでひたすら救急救命のビデオを観た。
人工呼吸の仕方、心臓マッサージの仕方、AEDの使い方、誤飲したときの対処…どれも数度は見たことがあるものだったが、やはり自分ができるかと言われると自信がない。

何事も起こらないことを祈るばかりだが、何かあったときに少なくともパニックを起こさずに対応できるようになっていたい。

消防の救急講座などもコロナの影響で中止になっているそうだが、落ち着いて外出できるようになったら受けてみたい。

このポストも誰かの役に立つことがあれば、幸いである。

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