夜景を見て何を感じる? ー札幌日記8ー
札幌に来た父親が、藻岩山から札幌の夜景を見たいとのこと。
藻岩山に登るにはロープウェーがあるらしく、その駅へ向かおうとしたがアクセスがちょっと悪かったため、3人でタクシーを捕まえる。
運転手さんに行き先を伝えると、「日本三大夜景ってありますよね。函館、神戸、長崎って。日本新三大夜景てのがあって、北九州、札幌、長崎なんですよ」と教えてくれる。自分も夜景といえば函館や神戸というイメージがずっとあったけど。調べてみると、日本新三大夜景は「夜景観光コンベンション・ビューロー」という団体が2015年から始め、全国の夜景鑑定士へのアンケートをもとに3年ごとに決めているらしい。
へえ、札幌の夜景は綺麗なんだ、と思ったけれども、困ったことに運転手さん曰く、「なので最近は藻岩山へ夜景を見に行く人がすごく増えて、ロープウェイも1時間待ちとかザラらしいですよ」。10月終わりのこの時期は街中でも寒いのに、夜の山の上はもっと寒いだろう。高齢の両親にはキツそうだ。特に帰りのロープウェイに乗るのに1時間も山頂で待つのは…
そこで運転手さんは、「山頂まで行かなくても、車で行けて夜景が見えるいい場所がありますよ!」と代案を出してくる。しかもそこはカフェなので、少しも寒くなくコーヒーを飲みながら札幌の夜景を眺められるという。ここは環境客にも知られていないので完全に穴場らしい。寒いのに恐れをなした両親は、迷いなくその提案に乗ってしまった。旅は計画通りじゃないことが醍醐味と思っているので、私も賛成。
すごく静かな店だし、なるほど、穴場という通り席も全然空いている。山頂からの眺めより俯瞰度は低いだろうけど、十分に街が見渡せる。ただ、コーヒーは(おそらく)景色代が乗っかっているので、かなり高い。でも美味しいコーヒーだし、コーヒーとケーキの代金でロープウェイ往復の料金と大体同じだった。いい場所を紹介してもらった。
眩い光は、まあ綺麗とは思うけど、すぐに別のことが頭に浮かぶ。こんなに電気を消費しているんだなあと。
私は今福島県に住んでいるし、2011年の原発事故にずっと関わって撮影してきた。だから今でも電気のこと、エネルギーのこと、それに象徴される人間の欲望のこととかずっと考えている。
だから夜景を見ても、単純に感激できない。
モエレ沼公園のモエレ山に登ったときには、札幌の街よりも送電線と鉄塔がすぐに目に入った。そして、どこの発電所から送られてきているのかな?とつい考えてしまう。北海道も2018年に、地震によって大規模な停電が続いたことを思い出した。
今のところ、電気は超絶大事なライフラインのひとつで、食べ物、飲み物と同レベルくらいだ。それを作り出すためのエネルギーも大事だ。それは11年前は日本に住むほとんどの人が気付かされて、東京で計画停電があってもみんなが努力したのに、そんな記憶はどこへやら。
夜景を見ながら、光の数が人間の欲望の数に思えてくる。終わらない欲望を改めて考える。
《札幌日記は今回で終了です》
(了)
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