見出し画像

#9 セルフバリュー(自身の行動指針)を持とう

はじめに

職業柄、企業のミッション・ビジョン・バリュー(以下、MVV)を策定し、その浸透を図るというコンサルティング支援を担うケースがあります。MVVを制定するだけでは効果は限定的ですが、その浸透がなされると大きな経営効果をもたらすことができます。組織におけるMVVの浸透については、またどこかでお話しできればと思いますが、本日は組織ではなく、個人に焦点化してお話ができればと思っています。

MVVの制定と浸透を実施するようになって気づいたことは、組織のバリュー(以下、カンパニーバリュー)はあっても、個人のバリュー(以下、セルフバリュー)にまで内在化させられているビジネスパーソンは極めて少ないということでした。バリュー(価値観・行動指針)が何となくかっこいい言葉が羅列されているだけであり、思い出されたかのようにたまに使われるだけの言葉になっているケースを見かけることも少なくありません。

「セルフバリューが落とし込まれている人にどれくらい会ったことがあるか?」と聞けば、それほど多くないのではないでしょうか。したがって、「セルフバリュー」を持ち、その浸透(内在化)を実施するだけで、大きな違いを創り出すことができると思います。

ここで、ややこしいのですが、2種類のセルフバリューについて区別しておきたいと思います。尚、どちらが良いという類いのものではありません。

①自身に深く落とし込めている(内在化できている)カンパニーバリュー
②(カンパニーバリューとは別に)自身のものとして設定したバリュー

のどちらもセルフバリューという扱いをしています。本稿の前半は①について触れますが、後半で②についても触れたいと思います。

バリューを持つことの意義①

では、ビジネスパーソン個人の観点から、バリューを持つことの意義は何でしょうか?

1)自身の「到達目標」を定め、「思考と行動の質」を高められる
2)上記の「到達目標」を、周囲に可視化してより明確に伝えられる

の二点が挙げられるように思います。

バリューは、自身の到達目標(目指す水準・在り方)を規定する作用があります。バリューは、「こうあるべき」「こうありたい」が言語化されたものであり、その水準を目指す作用が働きます。ここからは具体的に、カンパニーバリューの内在化(セルフバリュー化)について解説します。

弊社(リブ・コンサルティング)では、「成長スピードにプライドを持つ」というバリュー(※弊社では「マインド」と呼びます)があります。“現在の自分にプライドを持つのではなく、これからの成長スピードにこそプライドを持つ“という在るべき水準を明確にしているわけですが、その言葉を意識することで、自身の目標設定・成長実績に対しての捉え方が厳しくなります。

「この目標設定であるべき成長スピードに到達できるのだろうか?」から始まり、「もっと成長スピードを早めるにはどうすべきか?」など、問いが活性化することになります。結果的に、落とし込まれたアクションも、より質が高いものが設定されることになるでしょう。

ご参考までに、私自身の事例についてお話ししたいと思います。当時新卒2年目の若手コンサルタントだった私は、「最速でMGRに昇進する」という目標設定を置きました。その際に、「成長スピードにプライドを持つ」を意識したところ、「MGR昇進をゴールにしていいのだろうか?」という問いが浮かび、「最速でMGRに昇進し、昇進初年度から際立った活躍をする」ことが目標設定に変わりました。昇進初年度での活躍が目標となると、自身の目標に対する解像度の低さが課題として出てきました。

そこで、まず、現在MGRとして“トップクラスの活躍“をされている方がどんな点が優れているかの分析をし整理をしました。(インタビュー含む)
次に、優秀MGRについて書かれている書籍を片っぱしから読み漁り、スキルとマインドの両面からありたいMGR像を明確に定めていきました。
最後に、それらをロードマップに落とし込み、MGR昇進月から逆算して、2ヶ月単位での目標設定を各項目に分けて設定しました。
結果的に、最速でのMGR昇進を果たし、昇進初年度から2年連続でマネジャー・オブ・ザ・イヤーを受賞し、今度は最速での事業部長へ昇進することになりました。「成長スピードにプライドを持つ」というバリューを自身に深く内在化させていなければ、この状況は起きていなかったのではないかと思います。(前提として、周囲の人に恵まれていましたが…)

カンパニーバリューを内在化できているかどうかの判断は難しいのですが、ことあるごとにそのバリューが浮かび、自身の思考や行動に寄与しているかどうか?ではないでしょうか。日々その言葉と向き合っているレベルでなければ、内在化とは言えないのではないかと考えています。

また、バリューを基軸とした”問いかけ”がなされることが習慣化しているかどうかを判断基準にされることもお勧めします。問いによって、人は思考が進み、意識や行動の変化に繋がる為です。

バリューを持つことの意義②

バリューの意義の二点目は、「到達水準」を可視化することで、周囲に明確に伝えられることです。管理職になると、自身の水準や基準がメンバーにとっての当たり前ではないという当たり前の事実に直面します。そして、この当たり前の事実に、人は驚くほどのストレスを感じるのではないでしょうか。

これらの事実に直面して考えたことは、自身の水準を明確化できていないことでそのGAPが起きやすいのではないかということでした。何も可視化されていない中で、「こんなの当たり前だろう」と思われても、メンバーにとっては迷惑でしかありません。

弊社では、カンパニーバリューがあることで、こんな時にどう考えるべきか?ということがよく問いかけられます。それによって、互いの考える水準・基準を明確化することには大きな意味があると感じています。(これはタスクレベルでも同様なのですが、今回はその根底にあるバリューの水準を伝えることにフォーカスしています)

カンパニーバリューに加えて、(上述②の意味での)セルフバリュー=個人のバリューを持つことの背景には、会社のバリューには記載されていない、自身の大切にしている考え方や基準があることがあります。それらの可視化も意味があるのではないかと考えるようになり、新卒5年目のタイミングで事業部長になったタイミングでまとめてみることにしました。

一方で、自身の価値観の押し付けになってしまうと、メンバーの可能性を削いでしまうことになりかねないリスクもはらんでいます。率直に、管理職になりたての私はそれが理解できておらず、周囲に迷惑をかけてしまったように思います。現在では、参考までに自分を知って頂く為のツールとして活用しています。

セルフバリューのご紹介

最後に、具体事例として、(カンパニーバリューとは別に)私自身が定めているセルフバリューについて触れて本稿は終了したいと思います。バリューづくりのご参考にして頂けましたら幸いです。

前提として、人生とは「自己の存在証明の道程」だと私は考えています。自分自身が生きた証を何らかの良い形で残したいのです。そうした存在証明を高いレベルでできる人材は、高次元のセルフバリューを持つ者ではないかと思い至りました。その言葉を「存在証明」という意味で、“PROVE“というコンセプトにまとめ上げ、自身の考え方を可視化しました。

画像1

一つ一つを解説していると大変なことになりますので、一つだけ事例として取り上げます。"Possibility(可能性)"という言葉は、自分にも他者にも投げかける、私にとって最頻出ワードの一つです。

可能性を信じることで、自らが変わり続ける勇気を持つこと。その変化によって、自身の可能性も世の中の可能性も拓かれるという考え方をしています。可能性を信じ志高くあり続けることは本当に難しいことですが、とても魅力的で価値があることだと考えています。一方で、大きな壁にぶつかると、志や目標の目線が下がりがちになりやすいので、この言葉を忘れずに置くことが大切だと考えています。

長文になりましたが、セルフバリューを明文化し、より自身の到達水準や判断基準を明確化し、日々の思考の質や行動の質向上に繋げて頂けたら幸いです。今回も最後までお読み頂き、誠にありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?