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【エッセイ】男女平等と親父たちの嘘

中高年女性でジャニーズファンという方は多いようですね。
あ、今、話題にして良いんだっけ?良いよね。
娘と2人でコンサートに出かけるという人も少なくないようで。
旦那さんも容認している、というか、容認せざるを得ないというか。
まぁ、全く悪いことじゃないからね。

じゃ、男の場合だったらどうなんだろうね、と。
オジサンがAKBとか日向坂とかいろんな坂に夢中になってたらどうなんですか?
いや、いるでしょう、いると思います。
今回は中高年の妻帯者としましょう。
旦那さん、お父さんがアイドルにハマって、せっせとグッズを買い集め、奥さんとは別にさせられた寝室にポスターを貼り、週末ごとにイベントに出かけて、握手会を楽しみにしてたらどうですか?

「あれ?パパは?」
日曜日の昼近くになって、高校生になった亜優美がパジャマのままリビングに下りてきた。
「出かけたよ」
優子はソファに寝そべり、テレビのワイドショーを眺めたまま答える。
「まさか、また?」
「そ、握手会だって」
「うっわ!マジ、キモいんですけど」

そうなりますよね?なりませんか?
いや、違いますよ、ボクは。アイドルは全員同じ顔に見えるタイプです。
ただ、そういうお父さんがいると思うと不憫で不憫で。

「おや、田中さん、久しぶりですね」
山下が手を振りながら近づくと、田中は、
「おお、山下さん、ご無沙汰してます」
と言って、目深に被ったニューヨークヤンキースのキャップを脱いで頭を下げた。
3ヶ月前のイベントで会った時より髪が増えている気がする。
植毛しているという疑惑は確信に変わった。
胸にはいつも大きな双眼鏡をぶら下げている。
「向こうに川田さんもいましたよ、ホラ」
川田も合流して、三人はイベント会場に向かう。
周りは若者ばかり。浮いているのは自覚してるが、もう慣れた。
「山下さんは奥さんにファンだってことは話してるんですよね?」
「ええ、今日もイベントに行くと言って出てきました」
「すごいなぁ」
田中と川田が感嘆の声を上げる。
「いやいや、すごくないですよ。呆れられてます」
「それでもすごいですよ。私なんか、もうつけるウソがなくて」
川田が俯きながら笑う。
「それなら、何かにハマってることにすれば良いんですよ」
自信満々の顔で田中が続ける。
「私はバードウォッチングってことにしてあります。それならホラ、この双眼鏡だって怪しくない」
なるほど、だからいつもアウトドアファッションなのか。
「田中さんは賢いなぁ。それじゃ、私も次からバードウォッチングにハマったことにします」
「じゃ、私たちはバードウォッチング仲間ということで。ワハハ」
「じゃ、綺麗な鳥に会いに行きましょう」

実際、どうなんですかね?
まぁ、偏見かなぁとは思うんですが、それでも娘からしたら、ジャニーズファンの母親よりアイドルファンの父親の方が受け容れられないですよねぇ。

男女平等が叫ばれるようになって久しいけど、この分野では平等じゃないような気がするなぁ。
せめて、田中さん、山下さん、川田さんの3人がウソをつかなくて済むようになってくれたらなぁ。

やっぱり偏見ですかね?

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