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緑地帯 映画監督へ(中国新聞にて)6話

CM監督になってから5年が経とうしていた。そろそろ、助走距離の半分前まで到達した気がして焦りが募っていた。僕は映画を撮るために多くの映画プロデューサーと会い、企画を進めた。しかし、1本も映画を撮ったことのない僕にはチャンスはなかなかもらえなかった。
 そんな中、脚本はあるが制作に着手していない映画企画に出合った。「ぜひ撮りたい」と思い、自らCMで関わりのあったタレント事務所や芸能事務所に出演を申し込んだ。知り合いのCMプロデューサーは資金集めに奔走してくれた。そして、そこから一気に企画が動きだす。企画から4年かかってのクランクイン。初監督作品となった「おじいちゃん、死んじゃったって。」(2017年)はそんな流れから生まれた作品だった。
 映画撮影の現場は、自分が想像していたよりもかなり体力勝負の面がある。朝から晩まで撮影が続き、役者と演技についての話し合いが毎日のようにあった。
 「森ガキ組」という一つのチームで皆が同じ方向を向かって映画を作って、監督の「OK」のひと言で撮影が進んでいく。それはかなりの重圧でもあるが、高揚感でもあった。CMと異なり、「撮影をしても、しても終わらない」という感覚はすごく新鮮だった。CM現場とは全く違う筋肉を使っていたような気がする。
 出来上がった作品を見て、僕はおこがましくもこう思った。「これなら世界に通用するのではないか」と。幸いにも配給会社はテアトルと松竹が付いてくれ、全国館で上映することができたのだ。(映画監督=広島市出身)


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