見出し画像

【エッセイ】人事発令の季節に想うこと

6月17日。
ちょうど7月まで2週間になり、出向元の会社でも人事発令があった。
1年前の5月から新しい環境になり、丸っと1年ちょいも経つと、すっかり親元会社のイベントも懐かしい感覚になる。

この一年間はというと、僕にとって人生初めての経験となる、ほぼ転職に近い職種の違った仕事に従事している。
いままでは部署が変わったり、支店に行ったり、グループ会社に行ったりが自分にとって”異動”だったけれど、今回は仕事内容だけでなく、肩書きや連絡先やらメアド、上司や同僚までもが全く新しい違った環境だったから、ほんと転職と変わらなかった。

最初、「新しい環境に慣れないと・・」と少し焦る気持ちが大きかった。でも人間、適応するしかない状況になると心持ちが変わる。今まで常時確認していた会社メールやらもほぼ見なくなり、いままで「仕事中は見ないといけない」という気持ちはなくなった。
立場が変わると、いつも目に見えない何かに追われていたような感覚がひとつの虚構だったことに改めて気付かされる。

そんなこんなで、一年も没頭して”新しい仕事”をしていると、なんだか今でも所属しているはずの親元会社が、ひと昔前に働いていた以前の会社のような気持ちになっていた。
この感覚は、昔読んだ本『サイロ・エフェクト』の”インサイダー兼アウトサイダー”的な思考ができる状態なんじゃないか?とふと考えてみたりする。

そんな中で、親元会社の交流会の案内が来たので、1年ぶりに皆の顔をみて話をしてみようといってみることにした。


会場に着くと、100名以上の社員が新しくできたコミュニティスペースのような部屋に集まって、皆それぞれのグループで談笑をしている。結構広い部屋だけど、これだけのひとが集まるとかなり喧騒としていてボリューム大きめな感じw

会場に入る前に電話があった元部下と少し立ち話をしていた。
「急に異動発令が出て⚪︎⚪︎部にいくことになりました」
「へぇ、よかったやん、ご栄転おめでとう、そこには知り合い結構いるからよろしく言っとくわ」
「交流会は申し込みしていなかったのでいけないんです、自分が異動とも思ってなかったので・・」
「そうなんやな、あ、お願いしてた仕事最後しっかりよろしくな」
そんな会話をしながら、彼の会社人生の大きな節目となるタイミングで、1年前まで自分は何かしてあげられたのだろうか、と会場についてから辺りを見渡しながら考えていた。

飲み物をとってふらふらを集まっている人たちの顔を覗き込む。知っている顔ぶれはあまりなくて、ほんと別会社の交流会に来ているような感覚。
何人か、以前一緒に働いたことのあるやつらがいたので、ついついそいつらと昔話に花が咲く。
「いまどんな仕事してるんですか笑」
「そっちは相変わらずなん?」
「わたしも異動になりました。また営業になってマネージャーに昇格しました」

数年前まで一緒のプロジェクトをしていた仲間。10年以上前にお互い担当で汗を流した後輩。新入社員の時に最初の上司としてかわいがっていたやつ。昔から仕事で尊敬している幹部の方。いまも出向でお世話になってる人たち。後輩の部下で表彰状を持った優秀そうな若手社員。
さっきまで、知らない顔ばかりだと思っていた会場で、10人以上のひとたちと、いまは違った立場でいろんな話をした。



会社、組織、職場の雰囲気は、いろんな人のいろんな想いがぶつかり合って形成される。
人事異動はそんな想いの集大成として、いままでの自分の振り返りや今後の自分の人生を考える契機につながる。
少しだけ、蚊帳の外にいる僕は、少し疎外感を感じつつも、それ以上にそこにいる人たちの想いを受け止め、噛み締めながら声をかけていた。


そんな宴も時間となり──────


昔なら「今日はのみまくろうか〜」とかいう強制的な集団行動を率先するキャラだった僕も、大人な感じで足早に会場をあとにする人たちに紛れて外に出た。

来年のこの季節には、僕も今の職場が満了になって親元会社に戻ることになるだろう。その時には人事発令があるんだろうな、と自分ごとになって考えてみると、いま置かれている立場や仕事がかけがえのないもののように感じられた。

とにかく出世を目指してライバルと競争したり、ギャンブルみたいにでかい仕事を追い求めていた年頃は過ぎ去り、時代も変わり価値観も変わった。


”ビジネスキャリア”から”ライフキャリア”への転換。

ここんとこ、ぼんやりと考えていること。

いろんなことを考えすぎるのではなく、いまこの瞬間も行動していくことが大切なんだと改めて腹落ちした感覚になった。

人生の時間は常に流れ、その時は自分にも訪れ、永遠に続くものは何もない。

その流れの中で何かを求め続けるのではなくて、人との関わりの中で何を与えられるのかを考えていきたい。



©︎2024 Mahalopine

記事執筆のための、いろいろな本の購入費用として活用させていただきます!