見出し画像

和装にまつわるいろいろな気持ちをすくい上げ形にするのも作り手の仕事だと考えます

フォリア工房の私たちは、着物を着る方々の、着物にまつわるいろいろな気持ちや思い出を大切にしたいと思っております。

普段「人の気持ちとか思いとか、そういう事と美は関係ない」と申しております私ですが、それはあくまで「美ってそういう性質があるよねー、怖いよねー、だから尊いよねー」という話であって、日常生活におけるモノや人間関係にまつわる思い出や気持ちは大切にしております。(当たり前です!笑)

 * * * * * * * * 

当工房では、

あまり袖を通す事のない、お祖母様やお母様、ご友人から譲り受けたお着物や帯、その他の和装品を活かす事は出来ないだろうか?という事をいつも考えております。

もちろん、汚れがひどい、サイズが合わないなどの場合は、解いて洗う、仕立て直すなどの事が必要ですが、そのまま着られるような状態の場合でも、譲り受けたものの場合は柄行が現代には合わないという事はありますし、ご自分で購入されたものでも、そのお着物や帯単体では好きだけども、合わせるものが無く、結果あまり着ないもの・・・そういうものが出てきたりするものです。

そこから

「お客さまの和装資産を運用する手助けをする事は出来ないか?」

というテーマが導かれました。

なんだか金融関係のお話のようですが、和装もある意味「所有者の記憶も含めた資産」ですので・・・

私どもで、特に力を入れている具体的な取り組みは

「現代の帯によって、前世代の着物を現代に使えるものにする」

「お着物自体は気に入っていても合わせる帯が無いというお悩みを解決する」

というものです。

そういうわけで、当工房では染帯の仕事が多いのです。

帯の生産が着物よりもずっと多いため、ウチが帯の染め屋さんと勘違いされている方が時折いらっしゃいますが、着物も沢山制作していますよ!芸能人や文化人の方々への着物も沢山制作しております。ちなみに京極夏彦さんの直木賞授賞式の着物はウチのものです。

それはともかく

例えば、現代の感覚からすれば、大胆過ぎる絣のお着物や染のお着物でも、現代の帯を合わせる事で、むしろその大胆さが魅力になるようにする事は可能です。

なぜなら、その前世代のお着物も、新しい帯も、元の部分は日本の伝統だからです。

現代では、和装の古着市場も飽和状態です。

和装の古着屋さんに売りに行っても、余程のもので無い限り、処分してもらうだけになってしまう事も珍しくありません。

また、古着屋さんで、気に入ったお着物をお手軽価格で手にしても、合わせられる帯が無い、なんて事もあります。上に書いたように、それは現代のお着物でも起こります。

そんな時に「古典をベースにした現代の息吹を感じさせる帯」があれば、その着物は現代にも活きるものになるのです。

現代は、エコロジーにまつわる意識を打ち出した会社が多いですが、それは和装でも可能なのです。

私どもは、以前の呉服業界の人々があまり深く考える事なく、また実際の対策をする事なく主張していた「着物に時代は無い」「着物は三代着られる」などという言葉は否定しております。

実際には、一部の産地もののスタンダードかつ高品質なものを除いて、そうでは無いからです。

私たちは、そのような「売るためだけの都合の良い言葉」は発しません。

着物は民族衣装であり、かつファッションでもありますから、流行は色濃くありますし、昔の配色や柄行は現代のものほど繊細ではない事が多いので(それは洋服も同じでした)現代基準では大胆過ぎると感じられるものも多いのです。

産地ものの織物だったりすると、その当時の技術の粋を集めたとんでもなく技巧的な織物もあります。しかし、品質は良くても現代のセンスでは着られないな、というものがあるのです。

そういう事実がありながら、キモノは三代着られると言って売った呉服業界から「こうすればファッションとしておかしくならずに現代に着られる」という具体的かつ有効な提案は無かったのです。

あったのは、染め直し、仕立直し、刺繍や金銀彩による加飾などの「それなりのレベルの新しいキモノを誂えるのと同じぐらいの金額がかかる」アドバイスなどでした。

それだけではどうしても「現代ファッションとしては難しい仕上がり」なのです。

そういうわけで私どもでは

「日本の伝統である“取り合わせによる増幅”でそれを解決する」

という事を考えたわけです。

少し角度の違う言い方で再度説明してみますと

フードロスを止めるという試みが世界的に言われておりますが・・・

私たちは「和服ロスを止める」=「一見古くなったかに見える着物を現代の帯で蘇らせる!」を、工房の制作のコンセプトのひとつにしております。

それは、着物を染め直すのではなく「現代の帯と昔の着物を取り合わせる事によって古い着物を蘇らせる」という事です。日本文化の精髄のひとつである「取り合わせによる増幅」を使う事で可能なのです。それは結局日本の伝統によって導かれた事でした。

これは随分以前からそうしていて、エンドユーザの方々には認知もされていますし、実際に私どもの帯を合わせてみた方々からは「なるほど!」と納得していただける事が多いです。(お客さまお手持ちの古い着物に合うように、フォリアで新しく柄を起こして帯を制作する事も良く行います)

それと「いろいろな着物に合せられる染帯」で使い勝手が良い、出番が多い、というご感想をいただきます。

が、いつものように、呉服業界や呉服や工芸メディアの方々からは「お客さまの和装資産の運用を制作者として考える」「現代の帯で前世代の着物を蘇らせる」という説明をしても「はあ?何それ?」という反応ですね・・・(笑)こういう事は、実際にお使いになるエンドユーザーの方々の方が理解して下さって「確かに!」とご賛同いただける事が殆どです。

文化はムダが沢山出ますしムダを楽しむ所が大いにありますが、丁寧に作られたもの、思い入れのあるものをムダにするのは残念な事です。

しかし現代的視点で見直すならばムダを減らす事も出来るわけです。

それも、和装制作の大切な仕事の一つだと私たちは考えています。

(「現代の帯で、前世代の着物を現代ファッションにする」実証画像の手持ちは沢山あるのですが、悪意は無くとも画像を公開してしまうと「この人の着物は古臭かった」みたいな事になってしまうのを避けるために、実際の画像を上げる事が出来ない事が残念です・・・)

その代わり、江戸時代の綿の太縞の着物ですが「名古屋帯がものすごく合せにくい着物でも、ウチの帯なら合わせられるよ見本」のInstagramの記事を・・・

お気軽にお問い合わせ下さい! ←最後は宣伝!

よろしくお願いいたします。m(_ _)m


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?