見出し画像

ウチの弟子たちが体験するいろいろ その1

ウチに弟子が入ると、いろいろ説明しておく事があるのですが、そのなかで面白い話をひとつ・・・

++++++++++

私=オレとオマエでどこかに行って、どこかの先生(作家さんや職人さん、その他)と呑む事があると思うのだけど、オレがトイレに立った時や、用事でちょっと外に出た時・・最初からオレがいない時もあるな・・とにかく、オレがいない時に、その先生から「で、実際どうなんだ?」とか聞かれるから、そういう時は面白がって先生の話を聞いておけ。

弟子=はあ・・なんですか?それ?

私=先生がたは、弟子は、みんな不満を持ってると思っているんだよ。だから、弟子にオレの不満を言わせたがるわけだよ。笑

弟子=はあ・・・

私=それで、オレの弟子からオレの不満を聞き出して、それで優位に立とうとするわけ。アイツは普段偉そうな事を言っているけど、実際には弟子は不満を持っているんだ、普段SNSで書いている事なんてやっていないはずだ、って感じでね。「オレは弟子のお前のキモチは分かってるから。な。だからオレには正直に仁平親方の不満を言って良いんだぞ、聞いてやるぞ。アドバイスもやるぞ」という風に聞いてくる。それで、その先生は「いろいろな事をお見通しの先生、若者のキモチが分かる先生」という立場を得たいわけだよ。たかだかオレがトイレに行っている数分間でもそういう話題を振って来るんだぜ。笑

弟子=ほええ・・・ウチはSNSに脚色しませんしねえ・・自撮りアプリも禁止だし。ウチでは親方に不満があれば。直接、親方に言いますし・・・笑

私=それとか、酔ってくると先生がたはオレサマになる。「キミの親方も、がんばっているけど、あんなものはたいしたものではないんだよ。キミはまだ知らないから分からないかも知れないけど。世の中にはね、キミが知らないようなスゴイ人がいるんだよ。キミもいろいろな人に会って勉強するといいぞ。僕がいろいろ教えてあげるし。いろいろな先輩から可愛がられるようにしなさい。(例えばこのオレサマはお前んトコの親方よりも数段上なんだぜ、と匂わせるけど、流石にそれは直接は言わない)」

弟子=えー!そんな事言って来る人、いるんですか?そもそも親方は普段から自分以外から沢山学べ、オレを信じるな、充分検証して、それでオレの言う事が正しいとなった時に取り入れろって言ってますし(工房の決まりや親方の指示はちゃんと守らなければならないけど)・・・私がそんな事を言われたらムカつきますけど・・・恥ずかしくないんですかね?

私=ふふ・・甘いな。人は男女問わず、だいたい45歳過ぎるとそうなるんだよ(笑)酔ってる時は余計にな。シラフの時には謙虚ぶった事を言って、オレを褒めるような事を言っていた人でもキモチ良く酔っちゃったら口が滑らかになるもんだよ。もちろん、全員がそうではないけどな。そういう事も良くあるって事だよ。だから、そういう時にはふんふん聞いていれば良い。オレが貶されても反論はしなくて良い。かつ肯定もしないで良い(オレの文句を他人に言いたければ言えば良いが)彼らは聞いてあげるだけで満足しちゃうし。同調し過ぎても先生がたはオマエの事を「あの子はオレの弟子だ」とか言い出すから、ほどほどに・・なんだが・・・結構タチ悪いんだけど、上手い距離で話を聞く分にはかなり楽しめるぞ。そういう体験も修行のひとつだ。

弟子=はあ・・・そんな事、あるんですかねえ・・・?

++++++++++++++

後日

弟子=親方親方、この前、親方が言っていた事、本当にありました!

私=なんだよ?

弟子=あの、呑みの席で、親方がいない時に、先生方がこういう態度でこういう事を言うからな、ってヤツです

私=だろー(笑)

弟子=ものの見事に、親方が言った通りに進行していくのが面白かったです・・・話を聞いていたので対応もラクでした。笑

私=ま、そういうのも修行だよ。でも面白かっただろ?

+++++++++++++++

その後、弟子たちは何度もそういう経験を積み重ねて行くわけです。それも修行なわけです。本当に良くあるのです。

まあ、私が業界で野良なので、そういう扱いになるのもあるのですが。

そのなかのお一人、世の中で大変尊敬されている先生と対面した時に弟子は感動したそうです。

弟子=親方の話題になった時に、あの先生は、親方の事を貶さないで、あなたは良い師匠についた、私も彼に助けてもらった事が何度もある、とおっしゃるんですよ。スゴイですよね。私に対しても言葉遣いが丁寧だし、礼儀もキチンとされている・・・流石だと思いました。

私=オレがあの人を助けた、という程の事をした事はないと思うけどな(笑)まあ、あの人は一流だからな。自分がそういう態度でいる事で、自分にも相手にも良い流れを作れるという事を良く知っているんだよな。もちろん、オレにも言いたい事はあるんだろうけど・・・言いたい事があったら、オレに直接言うからね、あの人は。

+++++++++++++++

あ、あと、ついでに書くと、

「他所のお弟子さんに、業界の先輩ヅラした態度をとる人」

(そのお弟子さんは、他所のお弟子さんなのであって、自分の弟子ではないのだから年下であっても社会人としての礼儀をキチンとしないのはダサい)

「親方からの仕事はちゃんとするのに、その弟子から預かった仕事は適当にする人」

(仕事は誰から来たものでも同じようにキチンとするのが当然)

は、後進から軽蔑されます。

そういう先輩たちも、自分が若い頃にそうされた時、絶対こんなふうにならないぞ、と思っていたはずなのに、自分が上の立場になると不思議と悪い先輩と同じ事をするようになってしまうのは「業界遺伝子」なのか「人間の遺伝子」なのか「両方」なのか・・・

この「ウチの弟子が体験する事」話題、シリーズ化するかなー


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?