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仕事場で他人の会話に耳をそばだてない人は成長しない

職人仕事で修行に来ている子で、師匠や先輩の話に聞き耳立てていない子は伸びません。

私はいろいろな分野の職人仕事の現場で働いて来ましたが、それを本当に実感しております。

自分が与えられた作業だけに没入しているような子は、部分仕事の職人にはなれる可能性はありますが、全体を取り仕切る番頭や親方のような人にはなれませんし独立したとしても「使いにくい職人」以上にはなれません。

世の中では周りの事が観えなくなるような没入を集中力と呼んでいる傾向がありますが「良い集中」というのは、一つの事にのめり込んで周りが観えなくなることではなく「体全体と感覚が全方向に敏感で、かつその刺激に対応出来ている状態」の事です。(しかも、過敏であってはいけない)

最近は、一流スポーツ選手などが、そのような「良い集中」について語ることが増えていますが・・・

もちろん、一点に集中するべき時もありますから、その時にはとことん深く、あるいは高く行ける所まで行くべきです。

そのような時には「一点に集中しても良い環境を作ってから」あるいは「目的をはハッキリさせてから」行うと良いのですね。

「一点に没入していることは楽しく、実は楽でもある」ので、もの作りが好きな人はそこに逃避し勝ちです。その快楽の危険に巻き込まれるといけないのです。単純に一点に没入する事はキモチイイのです。全方向に感覚と意識を持つのは面倒くさいのです。しかし、それがプロのやるべき事です。

「没入系の集中」は「仕事場の作業がどのように連動して進行しているか」が観えないのでダメなわけです。

見習いたちや経験がまだ足りない弟子にとっては、仕事場の仕事はそれぞれにバラバラに作業をしているように「点」として観えてしまい、また、点の作業を正確に行うだけでも一杯一杯ですが、親方や番頭にとってはその点同士がつながって連動している様子が観えるわけです。というか、連動させているわけです。

見習いや経験の浅い弟子たちも、自分の意思で連動させる事は出来なくても、その流れぐらいは体感していないとならないのは当然です。

昔は、職人仕事はそういう「仕事の大きな流れ」を見て覚えろとか、とりあえず眼の前の作業だけやってろ、という教育方針でしたが、私はそういう風には教えず、最初から全体のことを説明し「今やっている点の仕事は全体のなかでこういう意味がある」ということを説明しながら教えます。

(しかし、これも向き不向きがあって、一つだけに没入したい子には向かないようです・・・)

もちろん、弟子もただ教わっただけではダメで、自分自身でアンテナを張り巡らしいつでも仕事場の流れを感じている必要があります。

なので、

実作業の訓練だけでなく時にそれ以上に師匠や先輩の仕事の話や日常会話、取引先との会話を聞くことは重要です。

そこに職人仕事のヒントが隠されています。だから、〇〇教室ではプロの仕事は伝達出来ないのです。

技術職系は、社員などでも徒弟制的なニュアンスがありますが、そういう職場だと実際に直接的にプロの師匠や先輩から技術を学べるし仕事を観られるのが環境的に良いわけです。全体の流れを観られるわけですね。

それと同じぐらい重要なのは「師匠や先輩の話を聞ける」ということなんですよね。

仕事の話、取引先との会話、趣味の話、雑談。。。

一見、仕事と関係無いかに観えるその中に、仕事のヒントがたくさんある。ヘタをすると実作業よりも宝になるものがあったりする。

定時で、ただ作業を終えて帰るだけでは得られない宝がザクザクある。

ブラックな体質や、パワハラモラハラはいけませんが

【仕事を単なる労働と思っている人は職人には向かない】

のは間違いないですね。

だから、修行に来ている子で、師匠や先輩の話に聞き耳立ててない子は伸びません。


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