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父のおつまみ

父は家で晩酌をするのが好きでした。
なので、母はわたしたちの夕飯以外に、父の晩酌用おつまみを用意していました。

シメ鯖、広島菜、さつまあげ、鯵の南蛮漬け。
漬け物、かまぼこ、ぬた、たたみいわし、味醂干し。
小さなお盆に何品かのおつまみとお酒を乗せたものがいつも父の前にはありました。


いま考えると、相当な酒飲みだったのだなぁと思う。このおつまみのラインナップ!
腹の足しにはまったくならない。
でも、どれもこれもお酒がすすむものばかり。
父はこれを日本酒で楽しみ、そのあとウイスキーを飲んでいました。


当時、父のおつまみはなんてつまらないものなんだろう。
と思っていました。
子どもだったわたしはハンバーグやグラタン、鳥の唐揚げやエビフライのほうが圧倒的に魅力的でした。

「ぬたってなに?こんなもの誰が食べるの?」


ぬたって酢味噌和えみたいなもんでしょー。
美味しくないしー。
ほかの家でも出てくるもんなのだろうか?
甚だ疑問でした。


ごめんなさい。
いまは大好きです。
よく行くお魚の美味しい居酒屋でぬたを見つけると無条件に食べてしまう。
そうそう、昔は大嫌いだった味醂干しも今じゃ、お気に入り。
チビチビ食べながら、お酒を飲んでしまう。


大人になったんだね、オレも。はぁぁー。


あのころ、父の晩酌のお供だったものは、気がつけば今のわたしの好きなものばかり。
さつまあげやかまぼこなどの練りもの,キリッと酸っぱめの南蛮漬け。
シメ鯖だって、疲れてないときはちょっとだけ食べます(ときどきあたるのでね)。


あのころはわからなかった大人の味を味わいながら、無口でコミニュケーションが下手だった昭和の父をときどき思い出しているのでした。





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