#108 土砂降りのtkts・・・ニューヨーク1人旅  2018年11月9日(金) 9日目・・・5

Times Square駅を地上に上がると、やはり外は土砂降り。この雨の中tktsを探し、チケットを購入しなければならない。慣れている人には特別なんてことはないのだろうが、私には少々難しいミッション。でも、チケットを購入しないことには始まらないので、ミッションに挑むことにした。

「Where is tkts?」
土砂降りのTimes Square駅周辺で、いったい何人の人に何回聞いたことだろう。聞く人聞く人誰も知らないのだ。皆、首をかしげる、首を横に振る。
そんなはずはないのに。でも、誰もめんどくさそうなそぶりではなく、意地悪でもなさそうだったので、きっと私の発音が悪かったのだろう。
あまりに通じないので、
「Where is tkts? Phantom of Opera」
と言いながら、iPhoneで仮面をかぶったPhantomさんの顔を検索して出した画像を見せた。

するとある女性は、私が劇場を探していると思ったようで、〝ああ、なんだぁ〟という表情で、劇場があるであろう方向を指差してくれた。
でもその方向は、Times Squareと真逆だった。
〝違うの! 劇場じゃなくて、チケット売り場(tkts)に行きたいのっ!!〟心の中で叫んだが届くはずもなく、力なく
「Thank you」
といい、Times Squareで途方に暮れた。

雨は弱まることなく、傘の下から狭い視界を必死になってtktsを探す。
〝落ち着いて。時間はまだある。大丈夫。この近くにあることだけは間違いないから〟
そうやって自分で自分を励ます。深呼吸をして、とりあえず、あの赤い階段の下で雨宿りでもしようと歩き出した。
さすがに今日は土砂降りなので、ぼったくりの中国人着ぐるみ隊は、いなかった。

もうすぐ赤階段に辿り着く、そのとき。
tktsの文字が見えた。あった! tktsだ!! 何と、赤階段の真下だった。
観光初日に来たときは、階段に来られたことや、前方のOne Times Squareに舞い上がっていて、真下がどうなっているかなど気にもせず、見もしなかった。まさか、まさか、赤階段の真下にあったとは。とんだ笑い話である。
本当に35年も憧れていたのかと、自分でも疑いたくなるほどの無知っぷりである。

チケット売り場の前には電光掲示板があり、当日の上演演目や劇場名、チケットの値段などが表示されていた。詳しいことは読めなかったので、【The Phantom of the Opera 】の文字が表示されていることだけを確認し、売り場の列に並んだ。

6~7か所の窓口が、日本の宝くじ売り場のように並んでいた。
雨の中、雨カッパを着たスタッフが、濡れながら誘導してくれた。
いつもは大行列らしいのだが、土砂降りのせいか、すんなり並べた。

さあ、いよいよ私の番だ。宿のオーナー・陽子さんから、オーケストラ席が良いと聞いていたので、小さな、まぁるい穴がたくさん開いた透明の窓口に向かって、
「The Phantom of the Opera! One!」
と大きな声で言った。
中のスタッフは、私がThe Phantom of the Operaを希望していることをすぐにわかってくれた。そして何か話してきたが理解できない。でも勘で、きっとどの席が希望かを聞いていると思ったので、陽子さんのアドバイス通り、
「オーケストラ!」
とドヤ顔でいうと、ササッと手配をしてくれ、値段を言ってくれた。
正確な値段は聞き取れなかったが、100$はしないと理解できたので、100$札1枚を出し、お釣りをもらった。

できた!できたよ!! チケットが買えたよ!! 英語レベル幼児以下、初めての海外、しかも世界中からありとあらゆる人が集まるNew York。
そこでチケット売り場を探し、観たい劇を伝え、チケットが買えたのだ。
こんなちっぽけなことだが、私にとっては、かなりのハイレベルミッションクリアで、自信になった。

窓口でチケットを受け取り、傘を差しながら鞄にチケットをしまっていると、雨カッパを着たスタッフが、よかったねという優しい笑顔でこちらを見ていた。
ふぅ~~と一息深呼吸をして窓口から離れた。

当日券、開演2時間ほど前なので、正規の半額くらい(だと思う)。


※  tktsでは当日の空いている席が、格安で買える。そして、1度買ったチ ケットは、その日から7日間、ファーストパスでチケットを買う権利が与えられるので、変更するときには、行列に並ばずスキップして購入できる。

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