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中国ニューリテールの実情


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中国ニューリテールの実情
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みなさま、こんにちは!
IngDan Japanの山田です。

今回は、中国におけるニューリテール、つまり店舗に関連する先進事例についてご紹介したいと思います。皆様は「ニューリテール」という言葉をお聞きになったことはありますか?2016年10月に中国アリババのジャック・マー会長が提唱した10~20年先に訪れるとされる未来のリテールを取り巻くコンセプトであり、ポイントとしては、テクノロジーとデータを活用することによって、より優れた顧客体験をもたらすもの、また、小売事業のビジネスを変革するもの、とされています。普通に日本で生活していて、買い物をしていて、かつてと比べて消費体験が変わったなー、良くなったなーと感じることはありますか?もともと日本では、おもてなしの精神が重要視されており、大量生産の時代が終わり、市場が飽和していく中で、顧客を重視する丁寧な顧客が当然となってから久しいですが、ここ最近、何か大きな変化を感じたことがありますか?また、技術によって買い物の体験が変わったと感じることがありますか?

中国においても、社会の成熟化が進む中で、ただモノを作るだけでは商品が売れなくなりつつあり、顧客体験が重要視されるようになってきました。中国での特徴は、技術の活用そのものが目的とされるのではなく、あくまで目的は顧客体験価値の向上であり、人間のふるまいやオペレーションによって消費体験を向上させるだけではなく、技術を使って価値を高めようとしている点であることです。アリババによれば、「小売は最終的に支払いをする人(消費者)と物(商品)を繋ぐ場所である」と説明されますが、これらによってもたらされる価値をオンライン、オフラインを問わずに最大化させるという価値観がニューリテールの根底部分としてあります。人と商品が出会う場所は、必ずしも店舗である人はなく、それがネット空間ということになればつまりはEコマースということになるわけですが、近年はネットショップが乱立し、中国においては完全にオフライン店舗での集客コストを超えていると言われています。実際の店舗にかかるコストについて、人と商品の出会いを実現する為の費用(場所代)が本質的な価値なのだとすれば、一方的にオンライン化の流れが続くということではなく、リアルとオンラインのそれぞれの価値を理解した上で、最も効率的な仕組みをテクノロジーによって作り上げる、というアイディアが出てくるのは当然のことであり、実際にその流れを支援する仕組みがニューリテールを支える技術、ソリューションということになります。

筆者が初めて中国を訪れた2006年、上海浦東空港内のチェーン系のレストランでの光景が蘇ります。軽食を注文した後にスタッフの方が不機嫌そうに出来上がった食事を運んでいらっしゃいまして、テーブルにたたきつけるように置かれたと同時にスープ類が飛び散る事態となったり、おつりを台上に投げる(叩きつける)ように返されたり、と15年経とうとするのに鮮明な思い出深い記憶があります。しかしながら、今の中国でそういった状況はあまり想像できず、そのような体験はもはやできなくなっているのではないでしょうか。ほんの少し前と比較して、消費体験においても現在は全く異なる社会となっているといっても言い過ぎではないですが、特に近年は技術を活用した変化が目覚ましく、どのような変化が起こっているのでしょうか。具体的な事例をご紹介していきたいと思います。

それでは、今日のメインコンテンツにいってみましょう!


~ 目次 ~
【事例1:ロボットレストラン】
【事例2:スマートロッカー】
【事例3:スマートキャビネット】
【中国におけるニューリテールの特長とは】

~ メインコンテンツ ~
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事例1:ロボットレストラン
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まずは、ロボットレストランの事例をご紹介致します。
詳細は、以下の動画をご覧いただくのがわかりやすいかと思いますが、調理、配膳、顧客案内に至るまでのほぼ全てのプロセスをロボットが担っているレストランです。
https://www.youtube.com/watch?v=pboK6lGeEHs
注文から食事までの流れについて確認してみましょう。

まず。お客さんは自分のテーブルに貼り付けてあるQRコードをスマートフォンで読み取るところから開始します。専用アプリケーションにより、メニューや価格を確認したら、注文料理、人数を選択して注文します。決済はWe Chat Payを使ったお支払い。QRコードはテーブルに紐づいている為、店舗側はどのテーブルのお客さんの注文なのかを把握することができます。
調理ロボットはメニューによって様々です。炒め料理を担当するロボット、揚げ物ロボ、ハンバーガーロボ、アイスクリームロボ等のロボットが各自の持ち場で無言で働きます。料理が出来たら、予め設置された配膳用レールに沿って、配膳ロボットが料理を運搬して各自のテーブルまで運びます。暖かいまま運べるように保温用の蓋もついています。お客さんのテーブルの上まで来たら、吊り下げられた容器がテーブルまで下がり、料理を取ることができます。また、フロアで運搬を担当する配膳ロボも店内を動いています。

店内の物流のみならず、調理自体もロボットにより自動化することにより、効率化を実現しています。また、オーダー、支払いはお客さんが全て自分で行うので、そういったサービスを提供するスタッフも必要ありません。こういった仕組みは、当初、ウィルスの広がった武漢の医療機関従事者向けに開始されました。土鍋飯を作るロボットを提供することで、店舗の効率化、省人化のみならず、医療従事者は、非接触で暖かい食事をすることができるようになりました。

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事例2:スマートロッカー
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次に、スマートロッカーを活用した事例についてご紹介致します。個人的にはタピオカブームが持続しており、たまに購入することがあるのですが、人気のある店舗はいつも大行列となっており、時間が無いときや、最近だと密集を避けて買うのはやめておこう、となることもあります。日本人と比較して並ぶのが好きではない、とされる中国でも美味しくて人気のある店舗であれば、当然ながら大行列となります。待たずにスマートに購入したい、感染リスクを避けたい、この課題を解決する1つの手段としてスマートロッカーが活用されています。

若者に人気のあるHAYTEAというチーズティーを販売する店舗は、スマートロッカーによって大人気かつ行列なし、という一見矛盾する状況を作り出しています。どのような仕組みなのかについては、こちらも以下の動画をご覧いただければわかりやすいかと思いますので、ぜひご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=Jwn1f214WFU&t=3s

注文から購入までの流れは以下の通りです。
We Chatを起動し、ミニプログラム(We Chat内のミニアプリ)から店舗のサイトを開きます。飲みたいメニューを選択し、糖分や温度を選択し、We Chat Payにて支払います。その後、飲み物の調理プロセスがモニタリングできる画面が表示され、注文済み、作成中といった状況が確認でき、同時に出来上がるまでの待ち時間を把握することができます。商品の準備が出来たら、パスワードと同時にスマートフォンに通知が送信されます。店舗に行くと、
パスワードを使って、ロッカーを開けることで、チーズティーをGetすることができるというわけです。店舗のスタッフは飲料を作ることに専念することができ、来店者の対応を行う必要がなくなり、スタッフ数を減らし、コストを削減することができます。また、自分で店舗に取りに行く場合以外に、配送業者に依頼をして自宅やオフィスまで届けてもらう選択をすることもできます。

上記のサービスは、スマートフォンアプリとロッカーを組み合わせたソリューションということになりますが、お客さんは店舗で待つことなく時間を有効活用できますし、店舗側も余計な人件費を払う必要がなくなり、双方にとってメリットのある仕組みとなっています。

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事例3:スマートキャビネット
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最後に、スマートキャビネットの事例です。無人での販売と聞いて、最初に自動販売機を思い浮かべる人も多いでしょう。お客さんにとってみれば、自動販売機であれば、時間を気にしなくてもよいので夜間でも買いに行くことができますし、店側としてスタッフを用意する必要がなく便利です。しかしながら、在庫を定期的にチェックして商品が足りない場合は、物流拠点から商品を運送する、といった運用が必要で欠品を防いで販売機会を最大化するためにはきめ細やかな運用が欠かせません。

そこで活用され始めたのが無人キャビネットです。ユーザーの購買傾向を分析し、商品の入れ替えをコントロールします。顧客解析によって販売向上と同時に、一定以上の商品欠品量となった場合に自動発注を行います。商品は最も近くの配達センターからキャビネットまで配送できる方法を取ることで物流コストの削減も実現しています。商品補充に関する効率を最大化させることで、無人キャビネットから得られる収益を向上させることができています。また、無人キャビネットは自動販売機に比べてコストが安く、また、様々なサイズのキャビネットがあることから、場所の形状に合わせたキャビネットを選び、空間の有効活用に繋がります。キャビネットに入る商品であれば、なんでも販売することができる、故障については画像認識を活用したカメラを用いることができる、といったメリットもあります。

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中国におけるニューリテールの特長とは?
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ご紹介した事例は一部となりますが、その他にも、重力センサー付きのIoT秤、画像認識を活用した遠隔売り場監視システム、動線追跡システム、カメラを用いて目の前の人に対して最適な提案を行うクラウドキャビネット、AI活用した発注予測、カメラ画像/顔認証/顧客数/熱解析/顧客のセグメントを組み合わせた顧客解析、VR/AR活用したスタッフ教育、といった幅広い事例があります。それでは、中国におけるニューリテール事情の特長を整理してみましょう。

まず、目的が顧客体験の向上に置かれている点です。技術の活用が目的ではなく、お客さんや店舗にとっての課題を明確化し、その課題を解決するための手段としてソリューションが考案されています。さらに、ロボットやスマートロッカーといった事例をご紹介しましたが、それらが単独で稼働するということではなく、スマートフォンアプリや、WeChat Payといった決済の仕組み、場合によっては配送業者とも連動することで、一連の店舗体験がデザインされ、全体の体験としてプロセスが繋がるように設計されている点が挙げられます。

1つ1つの技術自体は最新といえるものばかりではありませんが、それらを組み合わせ全体をデザインする取り組みや、実社会にまずはリリースして使ってみて、フィードバックを集めて改善を繰り返しながら、品質、サービス向上を実現していく点等、日本ではなかなか体験することの難しいこともあるのではないでしょうか。

そして、いわゆるEコマースとは異なり、リテールは実際にリアルな店舗があることが最大の特徴であり、強みとなります。ネットとは異なり限られた範囲とはなりますが、店舗が実在することによりその存在をお客さんに認知させることができますし、さらにオンラインの集客を併用することによって、店舗の強みをエンパワーすることができます。

中国メーカーの小米の創業者である雷軍曰く、「オンラインがエンパワーするオフラインの小売、これこそがニューリテールである」とのことですが、オンラインに限らず、テクノロジーを活用することで、オフライン店舗を強化すると言い換えれば、さらに店舗の価値が高まることとなります。やはり、店舗の持つリアル感、体験性はネット店舗では提供できないものです。以下は宣伝となりますが、IngDan Japanと同グループであるYouzan Japanでは、店舗を「越境EC」や「ソーシャルEC」の面で支援する仕組みを提供しております。技術を活用することで、リアルの店舗はもっと売上を伸ばし、生産性向上を実現し、何よりも優れた商品を多くの方に紹介して提供することが可能となります。もしご関心お持ちの方がいらっしゃれば、以下サイトをぜひご覧いただければと存じます。

株式会社Youzan Japan
https://www.youzanjapan.com/

いかがでしょうか。今回は中国のニューリテール事情、特徴についてご紹介いたしました。
次回は、中国におけるオフィスにおける先進技術応用についての事例紹介を予定しています。顔認証の活用や勤怠管理との連動等、オフィスにおける利便性を高めることで、ビジネスの生産性を向上させる取り組みが進んでいます。次回もお楽しみに。

今回の内容についてのご質問、お問合せにつきましては、以下までご連絡ください。
ingdan@infodeliver.com


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編集後記
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
来日する中国人から良く聞く話があります。日本のお店は現金しか使えなくてとても不便だ、という話です。電車の利用やコンビニや大きなスーパー等においては、クレジットカードやSuica、クイックペイやIDといったキャッシュレス決済が普及し、現金が必要なケースは以前と比較するとかなり減りました。しかしながら、遊園地等の施設、自動販売機、イベント会場といったエリアでは、まだまだ現金のみという場所も多いという状況で、日本においては全く財布を持たずに外出するのはまだ勇気が必要ではないかと思います。大きな店舗/個人店舗、都市/地方に関わらず、隅々までキャッシュレス決済が行き渡っている中国と比較すると、中国人の方が言うようにこの面ではまだ差が大きいように感じられます。

キャッシュレスの分野においてもこのような状況ですが、店舗におけるテクノロジー、技術を活用した顧客体験価値、生産性向上といった観点で考えれば、その差はさらに大きいものとなっているのではないでしょうか。

日本の店舗を取り巻く状況は厳しさを増しています。少子高齢化による労働力の減少、働き方改革に伴う生産性向上の実現が求められ、そして、ここに来て新型コロナです。店舗運営における費用の削減と生産性向上、売上の向上、感染リスクの低減、これらの課題を顧客体験の向上を実現しながら解決することができるのであれば、素晴らしいことだと思います。

店舗におけるバックヤード業務の効率化を図りたい、顧客動向の分析によって売上向上に繋げたい、無人化を進めることで労働力不足、感染リスクの課題を解決したい、これらの課題を解決できる手段を継続的に研究・開発したい、こういった思いをお持ちの企業様に向けてIngDan Japanは価値をご提供できる可能性があります。ぜひ、IngDan Japanにお問合せいただき、一緒に何ができるのか、会話させていただければと考えています。

次回は、中国におけるオフィスにおける技術応用についての事例紹介を予定しています。
移動、特に海外への移動が困難な状況だからこそ、IngDan Japanでは、まずは動画やオンラインの手段を使って中国の情報をお届けできればと考えています。ぜひ、役立てることがあればお声がけをいただければと思います。
ではまた次回、お会いいたしましょう。


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