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easy poem

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簡単な詩を掲載。自由に。詩誌に投稿はしないだろう詩、のちのち推敲して投稿するかもしれない詩。
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2022年11月の記事一覧

easy poem「トレンチコート」

easy poem「トレンチコート」

一歩
また一歩
足を前に出すたびに
こぼれてゆくもの
が、ある気がして立ち止まる
トレンチコートを着た男が
肩にぶつかって
舌打ちをしながら
追い越していった
「ごめんなさい」
は、通過する急行列車の轟音
に、かき消されて
ななめ45度、頭を下げた

地面には何も落ちていない
不安はどす黒い赤色をしていて
動悸とともに身体中を
一気に支配してゆく
拾うことさえ許されないこぼれもの

謝らなくて

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easy poem「更地」

easy poem「更地」

どうしても更地にしたい人達がいて
チェーンソーの音が
私の為だけの音楽を邪魔するので
イヤフォンのボリュームを上げると
均等に切られて束ねられた木達が
無声映画を観る時の過剰な敏感さで
その姿をあらわにする
伐採の音を聞くべきなのかと思いつつ
作業員の慣れた手つきが
無性に腹立たしくなって
どうやら私は佇んで睨みつけていたらしい

木漏れ日がとても良い塩梅の
好きな林だったけれど
誰かにとってはお

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easy poem「境目」

easy poem「境目」

ひと雨ごとに
季節が進むことは
私だけに与えられた
特別な感覚だと思って
ずっと生きてきた
ある人が時候の挨拶として
「ひと雨ごとに寒さが
増してきますね」
と、メッセージを送ってきて
私は特別ではないと知った
あるいは私とある人にだけ
特別に与えられた特別な感覚
なのかもしれない
あるいはそう思いたいだけ
なのかもしれない

春が好きではないらしいので
ある人は秋が好きなのだ
と、勝手に思って

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easy poem「からっぽ」

easy poem「からっぽ」

身体の中には
臓器がいっぱいつまってる
頭の中には
脳みそいっぱいつまってる
勝手に動いてくれる心臓のおかげで
勝手にまばたきできている

SNSは見たくない
小説は読みたくない
詩集なんて触りたくもない
文章ってなんだっけ
しゃべりたくない
話したくない
考えたくない
言葉ってなんだっけ
書くなんてもうまっぴらだ

身体の中は
ぱんぱんに詰まっているけれど
な~んだかからっぽなのだ
こ・こ・ろ

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