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考えてしまう人は、考えないということができないから、考えるなりに生きていくしかない。

「ナナメの夕暮れ」 若林正恭 読書感想文

「わかる」なんて、たった3文字で共感を表現してはいけないと思うけど、それでも、「わかる」と思った。
いちいち考えすぎてしまうということも、考えすぎるゆえに他人に気を遣って一人が楽だということも、考えすぎて世の中に疑問や不満があることも。思わず「若林さん!友達になってほしい!!!」と思ったくらい共感できた。

そして冒頭のこの文章。もう「わかる」が詰まりすぎてる。

”第一ボタンを何の疑問も持たずにしめられる人は、きっと何の疑問も持たずに生きていける。だけど、疑問を持ってしまう人は「自分探し」と「社会探し」をしなければ、「生き辛さ」は死ぬまで解消されない。自分は何がすきで、何が嫌いか。自分が何をしたくて、何をしたくないか。「めんどくさい人」と言われても「考え過ぎ」と何度言われても、この国を、この社会を、この自分を、解体して解明しなければ一生自分の心に蓋をしたまま生きることになる。”(本文より引用)


もうこの文章のとおり。本当にその通りすぎる。

自分の性格が嫌だと思ったり、他人になりたいと思ったことがあった。
けど、こんな面倒くさい自分だからこそ、他人が自身に向き合う以上に、私は私に向き合わないといけないのだ。深く考えなくても感覚的に人生を進められるタイプの人がいるが、若林さんや私のように考える人はそうじゃない。
考えるということをやめられないからこそ、自分は何が好きで何が嫌いで、どういう人生を送りたいか、何が気に食わないのか、何に幸せを感じるのかなど、きちんと考えていかないといけない。めんどくさいかもしれなくても、それが私にとっての健やかな人生の第一歩なのだ。

本の中にシャツのボタンのエピソードがある。
学生時代の若林さんは、首が苦しいから制服の第一ボタンをしめたくなかった。それは決して、反抗したくて開けてるわけではないのに、校則違反で先生に怒られるという内容だ。
なぜボタンを苦しい思いまでしてしめないといけないんだ、皆は苦しくないのか?と疑問に思う。大人になった若林さんは「第一ボタンを閉めなきゃいけないこと」を「社会に出てからあらゆる支配者の統治に従う予行練習」だと言う。


私も就職活動でリクルートスーツを着た時、ボタンが苦しくで似たようなことを考えていた。
なんで首が苦しいのにわざわざボタンをしめないといけないんだ。
ルール?マナー?たかがボタンが1つあいてるかどうかでそれらが測れるのだろうか。ボタン全開で肌着が見えてるとかならアウトだろうが、ボタンが全部しまっているか、1つあいてるかで人の何がわかるんだ。
・・・と、こんなふうにいろんな物事をいちいち「その意義はなんなんだ?」「なぜこうしないといけないのか?」など考える。

また、文体も私の言い回しに似ていてとても印象的だった。
人に何かを押し付けられるのが嫌いで、○○って考えおかしくない?って思いながらも、強い口調で「○○は意味不明」とか言わず、「私は○○は嫌だ。でも○○が好きという人もいるだろう。だから皆に○○を押し付けないで」というような言い方、私もするなぁ。

南海キャンディーズの山里さんとの漫才ユニット「たりないふたり」について書かれた次の文章に思わず泣いてしまった。

”たりている世界に飛び立つ訳でもない、「俺たち、たりないよね」と傷を舐め合う訳でもない、だとしたら、傷ついてきた延長線上をたりないまま歩き続けていくしかないということに、思考は辿り着いた。たりなさを持ち寄る集まりは解散する。だが、たりないままそれぞれが歩いていく。ただ、たりないこと、傷を受けてきたことはどうしても肯定したい。「たりなくてよかった」と胸を張って言いたい。そう思った途端、もしも自分がたりていたら得ることができなかったもの、たりないことで得ることができたこの、それらが頭の中にとめどなく溢れ出てきた。”

たりないふたりのことを詳しく知らないけど、それでも泣いてしまった。私も考えすぎな自分が嫌になるときもあるけど、でもそんな自分だからこそ、ちょっとしたことに嬉しく感じたり、感動できると思う。


私は、バラエティのあちこちオードリーを時々見る。この番組は台本なし、事前アンケートなしでラジオのようにリラックスしながら本音を話すという番組だ。
これを見るといつも「若林さん、話の振り方うまいなぁ」と思う。この本を読んでよりいっそうこの能力すごいなと思った。
これだけ考えすぎてしまう人見知りの人が、こんなに対話がうまくなるのか。この本と同じ人に思えないよ。そのくらいすごく考えて試して失敗して成功してを繰り返したんだろなぁと思った。

この本を読んで、より若林さんが好きになったしもっと知りたくなったし、同じように考えすぎるめんどくさい私もそれでいいと、より思えるようになった。おしまい。

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