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和牛一頭いれば脱引きこもり出来るのか

学生時代に教員から性的関係を求められて人間不信になり、摂食障害(主に過食症)に苦しみ、もちもちに太った引きこもりの私が、黒毛和牛のお陰で人生やり直せた話その4です



引きこもりだった人は何をきっかけに脱引きこもりになるんだろう?
引きこもる原因になった何かがなくなれば抜け出せるのかな。



私が引きこもりになった原因は、自分が嫌いになったから。
人間不信、性嫌悪、摂食障害、就活失敗。色々あったけど、根本は「とことん自分が嫌いになった」が一番しっくり。
良くないことが重なって、雪崩みたいに一気に崩れて、人生で一番自分を大っっっ嫌いになってたかも。

就職出来なかった自分。
人を信じられなくて、特に男の人を敵視するようになった自分。
摂食障害で太った自分
社会的な居場所がなくて、中身もやさぐれて、外見も残念になった自分がとにかく嫌だった。

多分、自分に完璧を求めすぎていたから、完璧からえらく遠いところに行ってしまった自分が許せなかったんだと思う。
現実を受け入れられなかった。
私にそんな思考を植えつけた環境もいけないんだけどね。



でも、牛の飼育で少しずつ変わっていった。
やり直したい思いも強まっていった。
そして、やり直すためにはお金が要った。

知らない土地に引っ越して、何でも良いから仕事にありつく。
生活の質は最低限で良いから、維持する。
身内を頼らないで、自分の力で生き続ける。
そんな未来をイメージしながら、じゃあどのくらいお金が要るのかを考えるようになった。


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引っ越すなら東京近郊が良かった。
地方都市だと(規模にもよるけど)何だかんだで精神的に窮屈な思いをするから。
見ず知らずの他人が何百万人もいて、誰にも興味を持たれなくて、私の転落人生が特段珍しくもないくらいに色んな人生がある。
色んな考えがあって、選択肢もたくさんある。
そういうところに行きたいから東京かな、とシンプルに思った。
仕事だって都会の方がいっぱいあるしね。
安定した職に就くのがベストだけど、バイトの掛け持ちでも構わなかった。
実家を出て新天地で再スタートを切れるなら、正直何だって良かった。
風俗とかは無理だけど、最悪キャバクラとかガールズバーでも良いとまで思っていた。若さってスゴイ・・・。



ちなみに、普通は仕事を見つけてから引っ越すもんだと私を咎める身内が一人いたけど、そうするつもりは毛頭なかった。
オンライン面接なんて当時はなかったし、行き来する度に数万削られるのは痛すぎる。
そもそも私のベースにあるのは「こんな仕事に就きたい」「こんな企業に勤めたい」じゃない。
とにかくうちを出たいだけ。
だから、求人情報を見る時間より物件情報を見る時間の方が圧倒的に長かった。
引きこもりを脱したいだけだったから、順番が違うという身内の言葉は馬の耳に念仏ってやつだった。
引きこもりの志は高くないんだにゃ。



となると、目下必要なのは引っ越しの初期費用だ。
家具家電は、学生一人暮らしの時に使っていたものが実家の倉庫に保管されていたので、再利用で十分。
ただ、地方からはるばる引っ越すわけなので単身レベルの荷物でも10万はかかるっぽかった。
まともな引っ越し業者も一社しかなくて、複数の業者を比較したりなんて出来なかったんだよね。これだから田舎は・・・。
その前に部屋探しの旅費も要るし、良い部屋が見つかったとしても、住み始めてから仕事が決まるまで食いつなぐだけの資金も要る。
当時の私の全財産は10万くらいだったかなぁ。
賃貸契約の締結に至るまでにいくらかかるかなんて全然知らなかったし、取り敢えずプラス30万くらいあれば3ヶ月は無職無収入でも生きられるでしょ、と思っていた。無知ってコワイ・・・。


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私が父に託してもらったオスの仔牛クンは、当時の相場だと大きく逞しく育てば50万越え、小柄で弱々しい感じだと35~6万が良いとこ、だった気がする。
見込みより高く売れたとしても、育てるのにかかった費用としてエサ代の10万が引かれるから全額私のお小遣いになるわけじゃない。
脱引きこもりの思いが強まっても思うがままに動ける環境ではないのが、なんだかもどかしかった。

でも、今はまず、何よりも仔牛クンが元気に健やかに、そして立派に育つことが重要。
どの辺に住むのか、空白期間の目立つ履歴書でも働けるのか、気がかりなことは色々あるけど。
今やるべきこと、今の私でも出来ることは、牛さんたちの飼育を毎日欠かさずすることと、あの仔牛クンを育てること。

牛と接していると、そんな風にふと「今」に立ち返ることが出来て、考え過ぎて気分が落ちることも、不安ばかりが募ることもなかった。
牛たちの、あのぶもーーー・・・って感じは、私のはやる気持ちを静めてくれた。


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とことん自分が嫌いになって引きこもりになった私だけど、気づいたら大っっっ嫌いな自分がいなくなっていた。
いなくなったというか、自分への怒りとか憎しみとか、そういった良くない感情を抱く時間が減っていた。
再スタートのために考え、調べ、具体的な計画を練る時間の方が格段に増えていた。

考え、調べ、計画を練っていくにつれ、和牛一頭じゃ脱引きこもり資金としては心許ないことも分かった。
それが分かった時に「じゃあ家業の手伝いと両立出来るバイトを探さないとなぁ」なんて思うようにまでなっていた。

引きこもりが・・・? バイト探そうかな・・・だって!?
こりゃ大事件だわ!!!
家族の心境はそんな感じだったかも。

でも、当の本人はそれを当たり前のことと思って、早速地元の求人情報を見て時給の低さに呻いたりしてる。
人って変わる時は本当に簡単に変わるんだなぁ。
こうなるまでがすごくすごく長かったけど。

人間不信、性嫌悪、摂食障害、就活失敗。色々あったけど、変えられない過去に苛まれるよりも、これからどうするかを模索する方が有意義で健康的だ。
脱引きこもりまで、あともう少し!

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