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Nouns DAOの革新性とその裏側①

web3の世界(パジ&かねりん共著)

今回は、Nouns DAO(ナウンズ ダオ)の革新性と、その裏側について詳しく解説します。

※NounsDAOのweb3純度高めの機能や中央から人間を排除するスマートコントラクトの意義などについての説明

NounsDAOとは

毎日1体のNFTが自動発行されてオークションが開催され続ける仕組みの分散型プロジェクトです。
(本記事では、便宜上NounsDAOを「本家Nouns」を呼称することがあります。)

NounsDAOの特徴的な点を挙げると、

①トレジャリーウォレット
②フルオンチェーンNFT
③オンチェーンオークション
④オンチェーン投票

の4つの要素で成り立っています。

さらにこれらの要素をDAO内の投票によってあとからバージョンアップさせる”アップグレーダブルな機構”を備えています。

例えば先日、投票の仕組みがv1からv2へとアップグレードされました。
もともと、v1では次のような仕様になっていました。

・10%以上の賛成票で、反対票が賛成票を上回れなければ、提案金額をトレジャリーウォレットから起案者のウォレットへ移転する。

・提案の金額によらず一律(例えば、金額が10ETHでも500ETHでも一緒のルール)

・ただし、Noundersが拒否権を発動したら否決。

このv1の投票仕様はやや粗い仕様だったため、v2では、次のように変更されました。

・10%以上の賛成票に対して、反対票が入るたびに、必要な賛成票数がアップする。最大15%までアップ。

たしかに、反対票0%と、反対票5%ではその提案内容に対するDAOメンバーの”共感度”は違いがありそうですよね。

だから、DAOの投票により仕組みがアップグレードされたのです。

このように、あとから仕組みを変更することができる「アップグレーダブルな機構」がすごいのです。

オンチェーン投票の種類

「④オンチェーン投票」の起案には大きく2つの種類があります。

1.トレジャリーウォレットへの提案
2.機能をアップグレードする提案


4つの要素を”DAO投票”によってあとから変更できる”アップグレーダブルな機構”は、「2」のほうの提案で実現させるのです。

NounsDAOは、50億円相当というトレジャリー・ウォレットに対するインパクトが強いため、「2」のアップグレーダブルな機構は影の存在になっています。

しかし、この”機構”こそが、DAOの「Code is Law(コードが法である)」を高い純度で体現する組織デザインの重要な鍵なのです。

NounsDAOは、DAOの直訳「自律分散型組織」の名の通り、スマートコントラクトで最初に定めた組織のルールを、DAOメンバーの提案によりあとから変更することが出来ます。

スマートコントラクトに元から組み込まれていた”アップグレーダブルな機構”を用いて、DAO投票によるボトムアップ型で、時代の変化に応じた組織デザインができるようになっているのです。

NounsDAO機能のひとつである、毎日1体ずつオークションによってNFTオーナーが増えていくオンチェーン上の自動販売機のような機能についても、修正が加えられています。

「2」の提案により、実際に次のようなアップグレードがなされました。

・生成されるNounのパーツデザインを増加

・オファーするときの次の上乗せする金額のルールを「5%→2%」へと変更

このような組織にとってのルール変更は、すべてDAOへの提案を通じて行われ、それ以外の手段によっては変更不可能です。

DAO投票で否決されれば、NounsDAOの創業者メンバーでさえも変更できないのです。

ブロックチェーンのスマートコントラクトの機能でガチガチにロックされているので、例外は存在しません。

DAOは中央自動化される

このように、「スマートコントラクトで表現されたシステム」が絶対的な権限を握っている点に注目してください。

これまで人類が生み出してきた組織において、人ではなく「システム」が中央に君臨し、絶対的権限を持っていた組織形態はありませんでした。

株式会社など、既存の組織は中央に人間がいますが、理想的なDAOでは中央にはシステム(スマートコントラクト)があるのです。

このような組織形態は、ブロックチェーンなしで作る事は不可能だったのです。

ブロックチェーンが出現し、スマートコントラクトが出現したことにより、DAOという革新的な組織形態が世に現れたのです。

組織の資源である「ヒト・モノ・カネ」のうち、システムが握る絶対的な権限として、ブロックチェーンと親和性が高いのが「カネ」です。

(メタバースの土地NFTや知財などの権利=「モノ」も一定の親和性はありますが、「カネ」ほどではありません。)

DAOは、組織にとって大切なカネの動きを、スマートコントラクトにより自動化させます。

重要なことなので、もう一度言います。

株式会社等の既存の組織とDAOの違いは、お金を管理する権限を持つ権力者が、人かシステム(スマートコントラクト)かの違いに尽きます。

DAOでは、中央のスマートコントラクトが組織にとっての絶対的なルールであり、否が応でもルールが強制されます。

そのルールの下で、人々が分散的にそれぞれの働きをすることで組織としてワークするのです。

組織の「軍資金」に関する絶対的な権限を、人間では無くシステムが持った場合、どのようなことが起こるでしょうか?

株式会社の光と影

資本主義社会の中でもっともうまく機能している組織は、株式会社でしょう。

株式会社が、私たちの生活を豊かにしてくれていることに異論は無いでしょう。

誤解の無いように言っておきますが、株式会社は古くてダメだから全てDAOにするべきとは思っていません。

組織の目的によって、仕組みを使い分けていくものだと思います。

一定規模の株式会社にとって、毎年の予算配分はその組織が生み出す事業やサービスの行く末を決めるもっとも大事な「意思決定」のひとつです。

どんなにイケてるサービスであっても「資金」がなければ、良質で継続的な提供が行えません。

費用対効果も見極める必要もあります。

これまでの株式会社では、組織にとってもっとも重要な「カネ」の予算配分については、株主と経営者たちといったお金の管理に長けている一部の”偉い人”が決めていました。

予算は、ピラミッドの上から下へ流れていって、役員・部長・課長など各レイヤーごとに決裁権限のもとで、各施策に落とし込まれていきます。

こうした、権限を持つ人が、持たない人の上に存在する構造そのものは、これまでの資本主義社会における株式会社の成功例を見れば、決して否定するものでありません。

しかし、多くの権限を持たない人たちの中では、不透明な密室で決まる「意思決定」で悔しい涙を流してきた人たちは無数に存在します。

人と人との価値の移転を透明化し、なめらかにするブロックチェーンが、こうしたこれまでの組織で涙を流してきた人たちの希望の光をもたらす可能性があります。

DAOとは、中央に自動化されたシステムがあり、その周りに人が集まるという新しい組織形態です。

すなわち、「人の上に人を作らず」といった、ある種の理想を叶える組織形態でもあるのです。

しかし厳密にいえば、DAOのシステムの周りに集まる人や組織(サブDAO)の中で、初期フェーズでは、人の上に人を作り出すことはどうしても起こるでしょう。

しかし、そのサブDAOでさえも「人の上に人を作らず」のサブDAOを成立させることも可能かもしれません。

株式会社における報酬(給与やボーナス)を決めるのは、組織の”偉い人たちです。

当たり前過ぎて、その権限が存在していることさえ忘れている人も多いかもしれません。

DAOにおいては偉い人は存在せず、中央のプログラムが法なので、自分達の報酬さえも、自ら提案が行えるようにも設計できます。

活動に対する報酬はプラグラムによって決められており、そのプログラムの設計次第では、報酬を決める(提案する)権限を所属メンバーに付与することができるからです。

ビットコインのマイニング報酬のように、一定の活動をすることで、ブロックチェーンに刻まれたシステムで絶対的に報酬が自動送金されるような設計も可能です。

その場合、そのDAOのメンバーたちが納得感を持って定めた報酬ルールが「Code is Law」です。

気に入らなければ、別のDAOへ行けばいいだけの話です。

または、フォークすることも選択肢の1つです。

自分たちが自ら報酬の提案を行える場合のDAOでは、個々人が行う組織への貢献活動は、貢献度合いに比べて高く見積もられがちで、組織全体として見たときの費用対効果が見合わないような「みんなの資金の使いみち」がなされることも多いでしょう。

そういう課題にぶつかったら、”機構”で改善していきましょう。

DAO内の投票によってあとから変更可能な”アップグレーダブルな機構”が「Code is Law」の分かりやすい例です。

トレジャリーへの提案に対して、「10%〜15%の賛成で可決」されるのが問題だということになったら、DAOでの提案投票により「やっぱり51%以上の多数決」にルール変更することで、組織デザインを仕切り直せます。

賛成・反対の投票率は大いにこしたことはないものの、51%の投票を集めるのに時間がかかるなら、今度は「投票をしないDAOメンバーには投票力が失われるようなペナルティを設計」するなどの次なる対策も可能です。

スマートコントラクトで表現できる問題解決の「組織デザイン」で解決していくのです。

ここまでは、非常にシンプルな「組織デザイン」の例です。

実際にはもっと複雑なスマートコントラクトを組むことで、その組織に起こる問題に対して”アップグレーダブルな機構”を複合的に組み合わせて柔軟に解決を目指すのです。

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