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第151回 復興する時の順番は決まっている。まずは「ライフラインの確保」。その次は「市民の感情の設計」だ。しかもこれは、仕事でチームを率いる時も一緒!


震災から半年。能登の復興の遅れには明らかな理由が? 町を歩いた西野亮廣が強く感じたのは「市民の感情を設計する」ことの必要性

今日は【能登半島地震から半年。被災地の今】です。


被災した町は、何もかも2024年1月1日のままでした

2024年の1月1日に起きた能登半島地震で被災された西村広文さんのピアノコンサートが、西村さんの地元・石川県七尾市であったので行ってきました。

オンラインでも3000名近い方が視聴され、会場の『中島地区コミュニティーセンター』には地元の家族連れがたくさん見られて、復興の祈りと和やかな空気に包まれた本当に素敵なコンサートでした。

西村さんのライブは今後も全国各地でありますので、是非、参加してみてください。

さて。
優しい気持ちになったコンサートの帰り道、少し時間ができたので、震災から半年が経った町を歩いたのですが、復興がまるで進んでいませんでした。

「お店が倒壊してサラ地になったまま、新しく何も建っていない」というレベルじゃなくて、「完全に倒壊したお店が、そのまま放ったらかしになっている」というレベルです。

地面に飛び散ったガラスも何もかも2024年1月1日のままでした。

このまま台風が直撃したら、コレらの瓦礫が凶器となって街中を飛び回るわけで、一刻も早く片付けないといけないのですが、それが進んでいない。

ちょうどボランティアの方がいらしたので、色々と聞いてみたのですが、「素人が片付けに入ってはいけない建物(二次被害に巻き込まれる可能性がある建物)」があるそうで、そこは理解できるのですが、それならそれで、行政がとっとと手をつけなきゃ、「いつまで放ったらかしにするつもり?」ということを僕ですら思ったぐらいですから、地元の方は更に思っていることでしょう。

リーダーの仕事は「いけるかも!」と皆に思わせること。そこの設計が一番大事

他にやらなきゃいけないことがある(優先順位がある)のでしょう。

生意気な話ですが、僕も、大きな映画や大きなミュージカルや大きなイベントをやって、何百人かのスタッフを指揮する立場にあって、毎回、時間や予算の制限と戦っています。

本当に毎回悔しい思いをしていますが、時間や予算といったリソースを同時に全てに注ぐことは叶わず、何かを切り捨てて、何かを後回しにしなければいけません。

その時に必要なのは、後回しにしてしまっている部署への謝罪と、「後回しにしている理由」を丁寧に説明すること。

ここを怠ってしまうと、必ず内部から崩壊しちゃいます。

敵にやられるんじゃないんです。
「ウチのボスは、あっちにばかり時間と予算を使って、私のところはどうだっていいと思ってる」という味方にやられるんです。

なので、謝罪は勿論のこと、「説明」がすごく大事なのですが、完全に倒壊した商店に手をつけていない説明が行政から市民にあるようには見えませんでした。

もしかするとどこかであったのかもしれませんが、僕が地元の方から聞いた限りでは、まったく行き届いてはいませんでした。

被災地を歩いてまわって、地元の皆様のお話を聞いてみて思ったのは、まさにこの「メンタル」の部分の設計不足です。

これは以前もお伝えしましたが、リーダーの仕事は「いけるかも!」と皆に思わせることで、そこの設計が一番大事だと僕は思っています。

CHIMNEY TOWNの仕事って、映画とミュージカルと美術館の3つを作るだけでも、20億円以上はかかるのですが、こんなの「いけるかも!」と思わなきゃ、やってられないんです。

「いや、無理だよ」と思っていたら、一歩も歩けない。

感情を論理的に設計できる人間がいない印象を受けました

色々と調べてみると、ようやく公費での解体作業が始まったそうなのですが、とにかく遅い。

この遅さは「俺たちのことを見捨てたんか」という感情に繋がってしまうと思いました。

あと、エンタメ屋から言わせると、感情は空間に左右されるので、「ここに瓦礫が残っていると、これを見る度に気持ちがやられちゃうから、ここの瓦礫はいち早く片付けなきゃいけない」とか、「ここが光っていることが皆の希望になるから、ここの光はいち早く灯さなきゃいけない」とかがあって、そこの感情の設計をする人がいないことが凄く気になりました。

阪神淡路大震災で神戸の街が完全に破壊された時に、神戸のランドマークである「ポートタワー」の光が(震災から1ヶ月たたず)一早く点灯したんです。

あの時は皆、光が戻ったポートワターを見て泣いたし、そこに希望を見て、「絶対に復興してやる。負けるもんか」と思ったんですね。

手をつけなきゃいけない事柄の優先順位に、市民の感情設計がまるで組み込まれていない。
というか、感情を論理的に設計できる人間がいない印象を受けました。

途中、もう見てらんなくなって、「この瓦礫はすぐに片付けてください」「この窓からの光は塞いじゃダメです」みたいな、おせっかい風水オジサンになっていました。

「ここを片付けることが最優先なので、ここに手をつける為のハンコをリーダーから大至急もらってください。予算不足で手が回せないのならクラウドファンディングで集めましょう。僕が手伝います」というニシノコンサルまで。

復興する時の順番は決まっていて、まずは「ライフラインの確保」。
その次は、「市民の感情の設計」です。

これは、仕事でチームを率いる時も一緒。

震災から半年。
被災地の復興はまだまだ進んでいません。

意見を言うだけなら誰でもできるので、引き続き、お手伝いしていこうと思います。

西野亮廣

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